共生の黎明 #97 章間⑤:静かな伝達 連続小説
県庁の地域戦略課。
その男性職員のもとに、一通のメールが届いた。
送信者は、H市の女性職員。
件名には、「ご報告とお礼」とあった。
本文には、先日H市が「まちの環連携圏」への正式参加を発表したこと、その喜びを同僚たちと分かち合えたこと。
そして、自身がまだ手探りでこの構想を考えていた頃、「アヤ/ユラアプリ」の話を丁寧に聞いてもらえたことへの感謝が、静かな言葉で綴られていた。
彼は、メールを読みながら、かつてA市から始まったこの小さな循環の輪が、いまや県内の約三割の自治体を包み込むほどに広がったことを思い返す。
庁舎の窓の外、春の風が青銅色の屋根を撫でてゆく。
この流れは、もしかするとこの県を、そしてこの国のかたちを変えていくのかもしれない。
彼は静かに画面を閉じ、ゆっくりと椅子にもたれた。
外の光が、執務室の古い壁をやわらかく照らしていた。
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