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共生の黎明 #98 第20章 第1節:確かな変化 連続小説

朝の光が、H市の駅前広場にやわらかく降り注いでいた。
通勤通学の人々が足早に行き交うなか、その合間に、柔らかく交差するまなざしや微笑みが、街に新しいリズムを与えていた。

ベンチに座っていたスーツ姿の男性が、ゆっくりと立ち上がる。
松葉杖をついて歩いてきた学生に気づき、自然な所作で席を譲る。

学生は一瞬ためらいながらも、安堵の表情を浮かべて腰を下ろす。

「ありがとうございます」

小さな声に応じるように、ふたりは端末をそっとかざす。
数秒後、「ユラ」の光がそれぞれの画面に優しく灯った。

カフェテラスの一角では、若い女性がひとり、コーヒーを手にほっと息をつく。
隣に腰掛けた高齢の女性と、自然に目が合い、軽く会釈を交わす。

「朝の光が気持ちいいですね」
「ほんとうに。ここのコーヒー、香りが好きなんです」

言葉少なに交わされる、たわいのない会話。
そこには、利害を超えた、心地よい間(あわい)が生まれていた。

役所の一角、窓際のデスクに座る職員が、ふと顔を上げて庁舎前の通りを眺めた。
モニターや数字では掴めない何か。
あいさつの声、さりげない気づかい、すれ違う人々の表情のやわらかさ。
そのすべてが、確かに「変わってきている」と告げていた。

静かな朝に、確かな流れが芽吹いている。

誰かが言うまでもなく、H市というまちは、少しずつ、確かに変わりはじめていた。


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