共生の黎明 #30 第11章 第6節:見えない贈り物 連続小説
そんなある日、ある会場でのことだった。
集まりの最後に、ひとりの若い母親が手を挙げた。
「……実は、今日来るかどうか迷っていました。
でも、来て良かったです。
“与える”って、怖いことだと思ってた。
失ってしまう気がして……
でも、今日ここで聞いた“アヤ/ユラ”の話は、
あたたかくて、懐かしい感覚がしたんです。」
彼女はふと、膝に座る小さな男の子を見下ろした。
「この子がもう少し大きくなる頃、“ありがとう”がこんなふうに届く社会になってたら、どんなに素敵だろうって、そう思えました。」
その場にいた誰もが、彼女の言葉にうなずいた。
そして、君がそっと彼女に手渡した、
一枚の紙に記された言葉。
それは、かつて君と私が書いた“灯火の章句”の一節だった。
《あなたのやさしさが、
めぐり、誰かの力になる。
見えない贈りものが、
見える希望へと形を変える。
それを信じた、あなた自身の心こそ、
この社会に灯る、はじめの光。》
それは、新しい制度の説明ではなく、
ひとつの詩であり、祈りだった。
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