共生の黎明 #28 第11章 第4節:小さな輪、繋がる想い 連続小説
会が終わったあとも、誰ひとり急いで立ち去ろうとはしなかった。
数人ずつの小さな輪が自然と生まれ、それぞれの言葉が交わされた。
「本当はずっと思ってたんだ。“ありがとう”や“ごめんね”を形にできたらって。」
「通貨って、なんで“減らす”ことが前提なんでしょうね。
“増やし合う”方向があってもいいじゃないかって、今日初めて思いました。」
その様子を、君と私は少し離れた場所から見つめていた。
机に残された資料の一部は、丁寧に折られ、胸ポケットや鞄の中へと収められていた。
「……ねえ、ソウ。思ったより、伝わってるんじゃないかな?」
「レイ。たぶん、“通貨”という言葉の奥にあるものを、誰もが、どこかでずっと探していたのかもしれない。」
君のその言葉に、私は深く頷いた。
ただの制度ではない。
それは、“生き方”に触れるものだった。
それからしばらくして、参加者のひとりが、会場の入口に貼られた掲示を指差した。
「“アヤ/ユラ、説明と共生のしくみを考える会”……。次回、またあるんでしょうか?」
問いかけに、受付を手伝っていた青年が少し照れながら答えた。
「ええ、きっとあります。次は“誰か”がまた、開くと思うんです。」
そのとき、誰もがうなずいた。
中心がなくても、広がっていくもの。
それが「アヤ/ユラ」のはじまりだった。
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