仕事はどこからやってくるのか(前編)コロナ禍を振り返る
先日、香川県の大学で、デザインを勉強する学生の皆さんに「イラストレーションの役割/イラストレーターの仕事」についての講義をさせていただきました。質疑応答の時間に、学生さんから「(会社員ではない)フリーランスのイラストレーターは、どうやって仕事を獲得していくのでしょうか?」と尋ねられたので、駆け出しの頃、私がどうやって営業をしていたかについてお話しながら、数年前(具体的には2019年頃から)の自分を思い返していました。
仕事を得るためには、簡単に言うとポートフォリオ(作品集)を作って、企業や出版社へ売り込みをする、信用を得て次の仕事へ繋げる、ということの積み重ねですが、実は時代や自身の変化に合わせて、試行錯誤しつづけていたのかもしれません。
思うのは「今、自分が、もし 一からイラストレーターとしてスタートするなら、同じ始め方では結構むずかしいんじゃないか/同じ方法はしないかも」ということです。それくらいここ数年の時代の変化はすごいし、正直自分も追いつけていません。そこで、まずは自分なりに「イラストレーターとしてどういう数年だったか?」を振り返ってみようと思います。
2020年、コロナで世界がまるごと変わってしまった
2019年、30歳になったとき「肩書きを"イラストレーター"一本に絞ろう」と決心しました。(それまではグラフィックデザイナー業が7割、イラスト業3割ぐらいで活動していたのですが、理由は長くなるのでまた別の機会に)
ポートフォリオを作り、2019年の後半からイラストレーターとして再出発を図ります。ところが、いざ売り込みを始めようと思った矢先、2020年に世の中で新型コロナウイルスによるパンデミックが始まりました。ロックダウンが繰り返される世の中で「営業できるのかな?」という焦りと不安に包まれたスタートでした。
地方在住の私へのチャンス
閉塞感がすごかった2020年ですが、一方で不幸中の幸いと言いますか、暗闇の中に一筋の光も見えました。コロナが始まる前は、イラストの仕事は地方在住の私にはまだまだ不利な部分があったのです。地方でのイラストの仕事は限られていて、やはり東京への営業は必須でした。
3.11以降、クラウドソーシングも定着してはいましたが、コロナでリモート業務が世界全体で当たり前になったことで、住んでいる場所、物理的な距離に関係なく繋がれる空気が一気に進んだのです。
Behanceから舞い込んだ、海外の仕事
2020年の秋。ボストンから一通のメールが届きます。それが、 MaruchanのアニメーションCMの仕事です。全米で放映されるインスタントラーメンのテレビ用CMのイラストレーションを描くことになったのです。
このオファーは、偶然の積み重なりのようなところから生まれました。当時の私は「今の自分ではまだ技術が足りない・自信が無いから、と言ってやりたいことを後回しにするのはやめよう」と思い立ち、 Behance(海外向けのポートフォリオサイト)での作品発信を始めていました。コロナ禍でオンライン講義が増え、それまでは東京に行かないと聞けないような内容のイラスト講義を受講できる機会が増えたのが転機です。先輩達の話を聞いて「まだ私には早いかもしれないけど、何年後かの仕事に繋がるかもしれないからまずはやってみよう」と、Behanceを始めたのです。
私のイラストをBehanceで見つけたボストンのアートディレクターさんが「こんな時(コロナ)だし、せっかくだから日本のイラストレーターに頼みたい」とメールをくれました。実写の撮影もできないから、イラストレーターを探していたのです。今思うと、実績もそんなに無いし、アニメーションの仕事もほぼ初めて、という私を何のためらいもなく起用してくださったアートディレクターさんは本当にすごいです。(コンペはありましたが、世の中もそれくらい混乱していたのかもしれません…)
私は英語が喋れない(メールも読めない※)ので、オンラインミーティングの12時間前に慌てて通訳の方をアサインしてもらうなど、かなりバタバタしたスタートでした。最終的にL.A、ボストン、アルゼンチンにいる3つのチームと、すごい時差の中(重なる時間がほとんど無い)でSlackをしながら作業を進める毎日…さすがに日本語が恋しくなって、慣れない作業と「今コロナにかかったらどうしよう」というプレッシャーもあり、一人でMacに向かいながら泣いていたこともあります(笑)
ただ、今でもこの時の経験のおかげで「何とかなるかも」という度胸は少し付いたかもしれません。
※ google翻訳があればそれなりにやりとりできるよ、と聞いていたのですが当時の私には正確な掛け合いはむずかしかったです。

ボストンのアートディレクターさんは、右下のお風呂のイラストが特にお気に入りだそう。
とにかく動いて、飛び込んでいた。そして運。
リモートワークが当たり前になって、誰とでも繋がれるようになった2020年。この頃は、世の中の変化も目まぐるしかったので、実はそのドタバタのおかげで、自分にも仕事が舞い込んできていたようにも感じます。ただ、20代の頃に仕事で苦い経験もたくさんしてきたので、「どんな仕事でもいいから引き受ける」ということはせずに、なるべく良い仕事を引き寄せよう、本当に自分がしたいことは何だろう?と考え続けていました。
尊敬している人はどんな動き方をしているかを観察して、自分でも実践して、チャンスが来たら飛び込んでみる、という時期だったなと思います。
あれから6年経ちましたが、実は今はBehanceはほとんど更新していません。また頑張っても良いかも、と思うときもあるのですが、あの頃程Behanceの影響力が強いかどうかも分かりません。(詐欺メールが頻発した時期もありましたね)
何より、コロナが収束に向かう2023年ごろから、少しずつ自分の活動軸が変化してきたのです。(続く…?)
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