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仕事はどこからやってくるのか(後編)コロナ後の世界で動き回る

前回(仕事はどこからやってくるのか:コロナ禍を振り返る)の続きです。

オンラインで効率よく、たくさんの仕事をこなせてきたけれど

 コロナ禍から本格的に始まったイラストレーター業。スタートは大変だったものの、リモートワークが当たり前になったおかげで、オンラインで効率よくたくさんのお仕事を受注できるようになりました。SNSでクリエイターを探しているクライアント様も多かったと思います。電話や対面で話すのがあまり得意ではなかった私にとってはかなり救われました。

 一方で、「とにかく今は仕事をがんばりたい」という思いがよくない方向にはたらくことも増えました。「ご依頼はなるべく断りたくない」という思いから、とにかく工夫してスケジュールがいっぱいになるまで詰め込んでいたのです。余裕がなくなって家族や友人の誘いを断ることもありました。「仕事は楽しいし、やりたいことができている。けど、このままでいいんだろうか」と少し思いはじめたのです。

そろそろ外に出たい

 2023年。友人でグラフィックデザイナーのmyomyo designからLINEが届きます。「Tokyo Art Book Fairに出たいから、一緒に何か作らない?」と。
私は当時アートブックのこともそんなに詳しく知らなかったのですが、ロックダウンも緩和しつつあるし、楽しそう、と思ってすぐに「いいよ」と返事をしました。そして結成されたのが、瀬戸内うまれのクリエイティブユニット「つつ、」です。

的野翔太(フォトグラファー/広島)
myomyo design(グラフィックデザイナー/岡山)
髙橋マサエ(イラストレーター/香川)

つつ、
くらしつつ、つくりつつ、あそびつつ、集いつつ、つくることを通じて、人に出会い、町に出会い、新しい価値観を探して津々浦々を訪ねる瀬戸内うまれのクリエイティブユニット。

https://tsutsu.myportfolio.com/

 このあと、結局2023年のTokyo Art Book Fairには落選してしまうのですが、落選した反動なのか(笑)、とにかく出展できそうなアートブックやZINEのイベントを見つけては申し込んで、色々なところに行きました。世の中的にも、ZINEイベントや文学フリマに出展する人が増えてきた時期です。

 福岡、岡山、香川、大阪…色んな都市に行きました。クライアントワークと並行しながら、2024年は5つのイベントに出展して「さすがに出過ぎだから1年に1回だけにしよう」となったのに、2025年は大阪に2度出展しています。それくらい、ステイホームで抑えられたものがあったのかもしれません。

岡山県笠岡市「うみの市」にて(2024年4月)
「休日、好日」瀬戸内・香川の日常風景を描いたイラストブック。2023年制作。
一番始めに制作したZINEです。

「年に何回もイベントに出てるけど、そんなに儲かるの?」

 と聞かれたことがあります。実際は、イベントごとに売上は本当に色々で、遠方のイベントに出れば宿泊費もかかるわけで、金銭面だけで見ると大きな利益にならないときもあります。
 本当は、イベントに出展するのをやめて、その分仕事を何件か受注した方が金額的には圧倒的にプラスです。ではなぜイベントに出るのでしょうか。人によって理由は様々だと思いますが、私は「人に会う口実を作っているのかもしれないな」と最近思っています。

 コロナ禍で、オンライン上で繋がった方がいらっしゃいます。イラストのオンライン講義をいっしょに受講した方、仕事関係の方、作品を気に入ってSNSでフォローしてくださっている方、個人的にzoomで雑談した方。大変な時期をオンラインで共有していた人たちと、イベント会場で「やっとお会いできましたね」となることも多くて、2023年以降の外での世界は、自分にとっては「頑張った時期の答え合わせ」みたいな時間だと感じています。

「宇野港編集室の2年目」1DAY ZINE MARKET(2026年3月 岡山)

効率が悪いことをする意味

 「つつ、」でイベント出展をするときは、3人で在店することが多いです。メンバーに子どもが産まれたら、交代でおんぶしながら販売ブースに立っているときもありました。

 3人で動くと交通費もかかるし大変なのですが、出展すると「本人たちがそこにいる」ということの大きさを感じるのです。ZINEイベントなら、お客さんに作家本人が直接解説した方がより伝わるし、わざわざ会いに来てくださる方、メンバー3人で何か楽しそうにしている空気感をいっしょに面白がってくださる方がいるのを感じることがあるのです。そして、直接会って話した縁は途切れにくかったり、そこから少しずつ、新しいイベントや展示に呼んでもらえたり、先の仕事に広がることを、2023年からゆっくりと時間をかけて感じています。オンラインではむずかしい「人柄を理解してもらえる」ことが、自分に合った仕事を呼び寄せてくれているようにも思います。多分、効率や目の前の収入を追求して、机にずっと座っていたら気づけなかったことです。

大量の情報を浴びた反動

 「Instagramのアルゴリズムが変わりました」とか「○割の人が知らない情報」「あなたが損してること」という大量のアテンション。
 あるいはフォロワー何万人とか、こういうスキルを持っています、○○歴何年、みたいなこと。情報を追うことと技術の向上はもちろん大事で「自分も磨かなければ」と日々思うのですが、そういった軸ばかりで生きていくのは大変だな、と年々強く思います。大量の情報を浴びていると、正解が自分の外側にあるような気持ちになって疲れてしまったのかもしれません。

従来のクライアントワークとは異なった軸

 2023年以降、イベントに出展したり、文章教室に通ったり、スケッチ会を始めたり。従来のクライアントワークとは異なった軸を増やしています。そこでは、先に書いた効率や数字的な評価とは違った時間が流れています。すぐにお金にはならないかもしれません。でも、楽しい場では「何が大切で、どうしたら楽しくなるか」を知っている人に会えるときがあります。
それが、机にずっと座り、外に出るのをやめていた自分の気持ちをかき混ぜてくれるのです。

主催している大人のスケッチさろん「えとてとら」:瀬戸内海の見える屋上で(2026年3月)

仕事はどこからやってくるのか

 これは、自分で動いてみないと分からないなと思いました。
 「こうしたらいい」みたいな高打率の方法もあると思うのですが、勉強会で聞いた話を実践するかしないかも自分次第です。そして何より、一人一人違う人間なので、同じ正解なんて存在しません。いざやってみたら「お金にはなったけど(自分にとっては)楽しくなかった」ということもあります。

 だから、体を動かして考える。今はそんな時期だと思っています。生成AIのこともあって、イラスト業界も変わりそう(というか変わっている)…という深刻さを日々ひしひしと感じるのですが、今年はとくに、たくさんの人と会って、色んな場所に行っているのでそこから感じることが多いです。ここでしかできないこと、離れていても、この人としたいこと。一人ではできないことがたくさんあるので、縁を大切にして、人との会話を重ねながら、これからの仕事を作っていきたい、と思っている現時点です。(すごくふんわりしていますが、noteでは書かない、直接お会いする人にだけ話すこともありますし、長くなるのでこの辺にします。)
また気ままに、色々書くかもしれません。最後まで読んでくださりありがとうございました。

追記:
仕事柄、作画のために相変わらず在宅での仕事が多いですが、オンライン/オフライン問わず打ち合わせ中に雑談してくださったり、現地に呼んで制作の現場を共有してくださるディレクターさんやお取引先の方、本当にありがとうございます。(つい盛り上がって話を長引かせてしまうこともあり…本当にすみません汗)

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