見出し画像

銀行が会社を格付けする仕組みを17年半勤務した元銀行員が内側から解説!

政府系金融機関で17年半、そのうち14年を融資の現場で過ごしました。申込から融資条件が出るまでの流れを、中にいる人間として見てきました。

融資を申し込んだとき、銀行の中で何が起きているのか。「審査がある」のは知っていても、その間に銀行が会社をどう分析し、どうランク付けしているかまで知っている方は多くないでしょう。

ここでは、そのプロセスをできる限り分かりやすくお伝えします。「どう見られ・どうランク付けされるか」の流れを知っておくと、融資前の準備と話の持っていき方が変わるはずです。


融資審査で銀行は「会社をランク付け」している

債務者区分

融資審査の場で、銀行は会社を分析して「格付け」します。

"問題なし〜要注意〜倒産懸念"のような区分に分ける作業で、この格付けが「貸せるかどうか・金額・金利・担保が必要かどうか」に直結します。専門用語では債務者区分といい、5段階に分類されます。

  1. 正常先

  2. 要注意先(要管理先)

  3. 破綻懸念先

  4. 実質破綻先

  5. 破綻先

順に、信用力が下がっていき、会社を順番に分析してランク付けする流れです。申し込んだ瞬間から、分析は始まっています。

流れをざっくり示すと、こんな順番です。

融資審査の流れ

このあとの章で、ひとつずつ見ていきましょう。


まず「数字」で会社を分析する

最初のステップは、決算書などの書類を使って、数字で会社の状態を確認することです。

銀行員として現場で見てきた実感では、最初の段階でチェックする部分があり、だいたいの印象が決まります。

「大丈夫そう」「ちょっと気になる」という感覚を、具体的に見ていくと次の2点が軸になります。

返せるだけの利益が出ているか

銀行が最初に気にするのは「毎年、どれくらい返せる力があるか」という点です。

融資の返済は事業で生み出した利益から出ます。

  • 稼ぎが続いているか

  • 黒字が安定しているか

ここを確認し、債務超過(資産より負債が多い状態)の会社は、この段階で「要注意」という印象でした。あくまで最初の印象です。

実際に審査を進めると、数字の中身を掘り下げていきます。

  • 営業外収益の雑収入(補助金・不動産収入など本業以外の収入)の内訳

  • 固定化している債権(回収が止まったまま残っている売掛金など)

決算に記載されている数字の「質」を確かめる作業です。

借入の規模と手元資金のバランス

収支だけでなく、「いまどれくらい借りているか」と「手元にどれくらい余力があるか」の資産バランスも確認します。

借入が業況に対して多い場合、「返済資金をきちんと確保できているか」「他の銀行はどう付き合っているか」が気になってきます。

現預金が少ないと、売掛金の回収が遅れたときや想定外の支出があったとき、資金がなくなるリスクがあります。こうした状況では「他の銀行がすでに引いている(貸そうとしていない)可能性」も頭をよぎります。

逆に、実質無借金(現預金で借入を全部返しても資産が残る状態)の会社は、安心感が大きいです。正直なところ、どう貸すかを考えていました。


次に「数字に出ない部分」を見る

数字の確認が終わったら、書類だけでは見えない2つの部分に目を向けます。

  • 事業の中身(事業性)

  • 経営者の語り方

ここが審査で格付けを左右するポイントのひとつです。

事業そのものの強みと成長性を確認する

銀行が見ているのは決算書の数字だけではありません。「その事業自体に勝ち目があるか」という視点——事業性(事業そのものの良し悪し)も格付けの判断材料に入ります。

具体的には、

  • 自社の強み・弱み

  • 業界のなかでどんな立ち位置

  • 業界自体が成長しているか

財務が苦しい会社でも、市場が伸びていてライバルより優れた部分があれば、前向きな評価になりやすい傾向があります。逆に、財務が安定していても事業の先行きに不透明感があると、審査が慎重になりかねません。

経営者が自分の言葉で語れるか

決算書には出ない「経営者自身」の適性が格付けの判断に影響します。主なチェックは主体性や事業への理解度です。

できる経営者は電話で質問した際に、すぐ回答してくれます。さらに聞いていないことまで+αで返してくれると、「ちゃんと把握しているな」と感じました。

逆に「経理担当に聞いてみます」と言って、あとで「〜だって言っている」といった又聞きの回答が返ってくると、印象が変わってきます。

「経営者が自社の数字や状況を自分のこととして語れるか」——書類の外にある、重要な評価軸です。


分析の結果が「格付け」になり、融資条件に影響する

数字と数字に出ない部分を合わせて、銀行社内でランク付け(格付け)が決まります。このランクが融資条件に直結します。

✅格付けが高い(財務が安定・計画に根拠がある)
→融資が通りやすくなる傾向があります。
✅格付けが低い(赤字・債務超過など財務が弱い)場合
→担保・保証を求められたり、融資金額が絞られたりするケース
✅格付けは固定ではない
→決算の内容が変わると見直されます。

大切なのは、ランクが低い=門前払いではない、という点です。赤字・債務超過が大きくても、「収支計画の実現可能性に納得感があるか」「改善計画の進捗がいいか」で、ランクだけではない評価になることがあります。

審査が慎重なのは、貸し出したお金が「返ってくるか」を問われるからです。詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
元銀行員が銀行の仕組みを解説!融資担当者は“貸したい”が本音


【元銀行員の視点】審査が前に進む会社の共通点


審査が前に進む会社の共通点

格付けが決まり、融資条件が出るまでの流れをお伝えしてきました。最後に、現場で見てきた視点から、審査が前に進む会社に共通していた4つのポイントをお伝えします。

数字の根拠を示せる

「売上はなぜ増えているのか」「なぜその費用がかかっているのか」を、決算書の数字に沿って説明できる会社は、審査の場での印象が違います。

銀行は数字だけでなく、その背景にある事実を確かめています。「この数字はこういう理由です」と根拠まで返せる経営者は、担当者に「きちんと経営を把握している」という安心感を与えます。

経営者がすぐ答えられる(+αまで返してくれる)

電話で問い合わせたときに、手元に資料がなくてもすぐに回答できる。さらに、聞いていない周辺情報まで自分から補足してくれる——こういった経営者に接すると、審査の進みが体感として違いました。

「経理に聞いてみます」では止まらず、「先月の試算表では○○の動きがあって、その背景は……」まで返せる経営者は、数字を自分のものとして管理しているという証です。

自分で手を打っている(改善計画の進捗がある)

課題を把握しているだけでなく、すでに動いている——これが審査を前に進める大きな要素です。

赤字や債務超過があっても、「こういう問題があったので、この対策を○月から始めていて、今月の試算表ではここまで改善しています」と言える会社は、審査担当者が前のめりになります。

計画だけでなく、進捗の実績を示せることが重要です。

定期的に試算表を出している

毎月の試算表を作成して銀行に提出している会社は、それだけで信頼感が違います。決算書は1年に1度ですが、試算表は月次で会社の状態を把握していることを示す書類です。

定期的に出している会社は「自社の現状をリアルタイムで掴んでいる」という評価につながり、銀行も「何かあれば早めに相談してくれるだろう」という安心感を持てます。

こういったポイントを押さえていると、銀行が「主体的に経営している案件だ」と前のめりになる——私の実感です。


まとめ

融資審査では、最初に会社を分析します。「数字で見る → 数字に出ない部分を見る → 格付けに集約 → 融資条件に影響する」という流れです。

ランクが低くても、事業性の評価や経営者の資質、計画の根拠・進捗で評価が変わります。大切なのは、銀行に「この経営者は把握している・動いている」と感じてもらえる状態を日頃から作ることです。

銀行が何を見ているか、少しイメージできましたか?中の人間にしか語れない話、これからも届けていけたらと思っています。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

いいなと思ったら応援しよう!