🎭 ZAI劇場:不思議なパン屋さん🥐第3話『片道切符』
🎭 ZAI劇場:
不思議なパン屋さん🥐
第3話『片道切符』
公園のベンチで途方に暮れていた俺は、
ふと、パンの良い香りに気づいた。
こんな所に、パン屋なんてあったか。
そう思いながら、
気づけば足は、その香りの方へ向いていた。
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不思議な店内だった。
時間が、少しだけゆっくり流れている。
まるで、
この空間だけ切り取られたかのような感覚。
棚に並んでいるのは、
見覚えのあるようで、どこか違うパンばかりだった。
その店内に、
店主と思われる男性が一人、立っていた。
柔らかな笑顔。
「いらっしゃいませ」
声は低く、落ち着いていて、
なぜか胸の奥にすっと染み込んできた。
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「申し訳ありません」
店主は、少しだけ困ったように眉を下げた。
「あいにく、
今お渡しできる商品は一つだけなんですよ」
そう言って差し出された札に、
俺は思わず目を凝らした。
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こっぺぱんに挟まれている食材:
「まだ温かい、誰かのポケットに入っていた切符」
販売価格:
1,380円
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……は?
一瞬、理解が追いつかなかった。
思わず顔を上げると、
店主はいたって真面目な表情で、こちらを見ていた。
冗談でも、からかっている様子でもない。
ただ、
「それが今日のパンです」とでも言うような顔だった。
俺は、こっぺぱんと、
その奥に挟まれた“切符”を、
しばらく見つめていた。
切符は透明なフィルムに守られていた。
守られていれば、それで良いというわけでもない。
それでも、この奇妙なこっぺぱんから、
俺は目を離せずにいた。
「この切符、使えるんですか?」
我ながら、変な質問だったと思う。
店主は、
少しも迷う様子を見せずに、
「もちろん」
とだけ答えた。
その一言に、
何もない時間が、ふっと添えられた気がした。
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「……何処へ?」
そう聞いて
額に汗がにじんだのが分かった。
店主は、淡々と札を読み上げる。
「羽田発。
大館能代空港行きです」
その瞬間、
汗が、はっきりと落ちた。
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……飛行機?
大館能代空港?
聞いたこともない空港だった。
頭の中で、
知っている地名を必死に探したが、
何も引っかからない。
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「明日。
1月18日の、08時55分発の便です」
店主は、
俺の動揺など気にも留めず、
静かに続けた。
そして、こちらを見て、
柔らかな笑顔のまま、
「お買い上げになりますか?」
と、問いかけた。
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気がついた時には、
俺は公園のベンチの前に立っていた。
紙袋を、手に持ったまま。
いつからそこに立っていたのか、
よく覚えていない。
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そのまま、ふらふらと帰宅した。
自宅のマンションの玄関を、
そっと開ける。
すると、
リビングの方から、妻の明るい声が飛んできた。
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「どうだった? 就活」
「うまくいきそう?」
駄目だった、とは言えなかった。
たぶん、
妻なりに気遣ってくれていたんだと思う。
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「……明日、本社で面接になったから」
「朝早くから、飛行機で行ってくる」
咄嗟に、口からこぼれた言葉だった。
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「ぜひ、直に会って話がしたいんだってさ」
自分でも驚くほど、
言葉はすらすらと続いた。
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「ほら、チケットももらってきた」
ガサゴソと
紙袋の中から、
チケットを取り出しながらそう言う。
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「それでさ……」
「お土産の、こっぺぱん」
流れるように手渡すと、
妻は一瞬、言葉を失ったように俺を見た。
呆気にとらえた表情のまま、
紙袋と、俺の顔を、交互に見ている。
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結局俺は、
空港には行かなかった。
それでも、
切符は使われた気がした。
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その後、就活はトントン拍子に事が運び、
もうすぐ一年になる。
小さな会社の営業職。
以前の会社より給料は、
ちょっとだけ下がったけど、
楽しく働いている。
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そうそう、
一人息子も生まれて、
まさにあっという間の一年だった。
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俺には、叶えたい夢がある。
家族三人で、
大館能代空港に行くことだ。
その時は、
往復切符を持って。
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おしまい
この作品は公園仲間でもある、
あきたいぬ空港長さんの
自己紹介|はじめてのnoteという記事と
こっぺぱんの「こっぺぱん占い」から派生して出来た作品です☺️
こっぺぱん占いは、まるで物語の登場人物になったような没入感に浸れるのでオススメです🔮
最後に内緒話を一つ。
実はこの作品の続きかもしれません😉
メンバーシップもやってます。
ご興味ある方は是非ご参加下さい😊
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今後の創作の糧にしたいと思います☺️
応援して頂けるととっても嬉しいです😆