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🎭 ZAI劇場:不思議なパン屋さん🥐第1話『未完成』



🎭 ZAI劇場:
不思議なパン屋さん🥐
第1話『未完成』





ここは、不思議な不思議なパン屋さん。

棚に並んでいる商品は、
すべて こっぺぱん。

ただし、中に挟まっているのは
少しだけ変わった食材ばかり。

それが果物なのか、
時間なのか、
記憶なのかは、
食べてみるまで分からない。

この店には、決まった開店時間がない。
朝に開いていることもあれば、
夕方にそっと灯りがつく日もある。

気づくと開いていて、
気づくと閉まっている。

扉が開く条件はひとつだけ。

ちょうど今、
こっぺぱんが必要な人がいること。



どうやら今日のお客さんが、
もう扉の前に立っているようです。



🚪🚪


ライブの帰り道だったはずだ。


まだ耳の奥で、
低くうねるベースの余韻が鳴っている。
アンプを通した振動じゃない。
身体に残った、あの揺れ。


さっきまで――
確かにそこにいた。


スポットライト。
汗。
拍手。
知らない誰かの声が、こだまする。


あんなに熱の中心にいたのに。


なのに今、
街はやけに静かで、
自分の足音だけがやたらと大きい。


そして、
気づいたら立ち止まっていた。


シャッターが半分だけ開いた、
看板もくすんだ、
営業してるのかしてないのか分からない
寂れたパン屋の前。


ガラス越しに見えるのは、
丁寧に並んだ
素朴なこっぺぱん。


——おかしいな。


今日は満たされてたはずだ。
歓声も、称賛も、ちゃんと受け取った。
それなのに、


胸の奥の、
音が鳴らない場所だけが、
ぽっかり空いている。


「……なんでだろ」


呟いた声は、
夜に吸い込まれて消えた。


そのとき、
カラン、と
小さな音がした。


ドアが、
ほんの少しだけ開いている。


自然と足が店の中に吸い込まれる。


「いらっしゃい」


店主と思われる男性が、
ニコニコしながら奥に立っていた。


「営業中ですか?」


思わず聞いてしまった。


店主は


「ええ」


とだけ答えると
細い目を更に細めた。


ふと、マンゴーの甘い香りに視線が動く。


甘い香りとは裏腹に
発酵途中のマンゴー
1,480円
の文字に焦点があう。


その値札を見た瞬間、
なぜか、胸の奥が少しだけざわついた。


——発酵途中。


完成していない。
なのに、堂々と棚に並んでいる。


「……途中、なんですか?」


自分でも驚くほど、
素直な声が出た。


店主は、
パンを並べる手を止めもせず、
相変わらず優しい笑みを浮かべたまま答える。


「ええ。
 でも、今がいちばん香る時なんですよ」


香りだけが、
一歩先を歩いているみたいな——
そんな言い方だった。


もう一度、値札を見る。


発酵途中のマンゴー
1,480円


安くはない。
完成品なら…

でも。

胸の奥で心臓の鼓動が早まる。


ずっと早いままだ。


「これ……」


指が、
気づけばそのパンを指していた。


「食べる人、
 選びますよ」

言葉の鋭さとは裏腹に店主は心地よい声で
言った。

ゴクリと喉が鳴る。


「どんな人なら、合うんですか?」


店主は一呼吸置いてから
柔らかい口調で答えた。

「未完成な人」


そう言われて呼吸が一瞬止まる。


——胸の奥を、
指でなぞられたみたいだった。


「……ください」


言った瞬間、
理由はもうどうでもよくなっていた。


店主は、
何も言わずにそれを丁寧に包む。


手渡された紙袋は、
金額を納得させる重さがあった。


手元から
マンゴーの香りが漏れている。


店を出ると
カサカサと
夜風に紙袋が鳴った


目の前の公園のベンチに腰を下ろし、
パンを口にした。

マンゴーは思いの外、固かった。
思わず、顔が渋くなる。


頭から冷たいシャワーを
浴びたような感覚。


一瞬で、
時間が裏返る。

部活帰りに嗅いだ夏の風の匂いだ…


気づけば、
中学生の自分に戻っていて、
やり残したことを探している。


校舎でもなく、
教室でもなく、
ただ「まだ触れていない何か」を
必死に見回している。


――見つけた。


そう思った、
その瞬間。


意識は、すっと戻り、
そこには
夜の公園のベンチと、
手の中のパンだけがあった。


街灯は静かで、
ブランコは揺れていない。


胸の奥は、
相変わらず途中のまま。



それでも、



さっきより
少しだけ、息がしやすくなっていた。




おしまい







この物語はブッカーFUNKYさんの『 落差 』
という作品と

僕の「こっぺぱん占い」という、
それぞれ別の記事から派生して生まれました。

こっぺぱん占いオススメです。
是非やってみて下さい😊
きっとあなたも
物語の一員になれるかも知れません🥐



✨続報✨

そして‼️
この物語に新展開がありました😊

ブッカーFUNKYさんから返ってきた
“パン屋の記憶”を紐解いたアンサーです。
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