【番外編】そう、やつはZARD使い
社会人になっても、たまに仲間と集まってテニスを楽しんでいる。
俺たちはもうアラサー。現役からはだいぶ離れたけど、ラケットを握れば、少しだけ昔の感覚が戻ってくる。
内容はだいたい試合形式。
軽く乱打して体を慣らしたら、すぐゲームスタート。
あるあるだと思うけど、
サーブやリターンの練習って、意外とやらないよね。
テニスでは、ゲームの始まりはサーブから。
そして、1ポイントごとにサーバーは2本まで打てるルールになっている。
練習ゼロのサーブは、もはや“ぶっつけ本番”以外の何ものでもない。
この状況を前提にすると、自然とこうなる。
「まあ、最初のサーブは入らないだろ」
「体もまだ温まってないし、ちょっと様子見だろ」
みんな、どこかでそんな風に油断している。
でも――
その油断を見透かしているかのように、奴は牙をむく。
ズバァァァァァン!!!!!
完・璧・な・サーブ。
触れる間もなく、ポイントを奪われる。
あまりに予想外すぎて、変な声が出る。
「ふぁっ!?」みたいなやつ。
この年になってあんなに情けない声が出ることは、めったにない。
この現象を起こせるやつを、俺たちはこう呼んでいる。
ZARD使い。
そう、ZARDの名曲「負けないで」。
冒頭の歌詞がこう始まる。
“ふとした瞬間に~”
これはまさに、“ふとした瞬間に”起きる現象だ。
狙っても再現できない。
だからこそ、信じがたいタイミングでぶち込まれる。
こちらが油断していたその一瞬に、
魂のこもった爆サーブをねじ込まれる。
あの言葉通り、“ふとした瞬間に”すべてが起こる。
ZARD使いには、自覚がない。
あれは狙ってやっているわけじゃない。
自然に、無意識に、発動している。
そして、ZARDを意識してしまうとその現象は起こらない。
“狙ったZARD”には力が宿らないのだ。
ただ、ごくまれに――何の前触れもなく覚醒する。
きっとこれは、ブランクテニス界の七不思議のひとつ。
今日もどこかのテニスコートで、
誰かが“ふとした瞬間に”、伝説を刻んでいる。
あなたの周りにも、ZARD使いはいますか?
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── まっしゅ
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