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#133:【日本株】もし東芝が不正をしなければ、今ごろ日本一の会社だった。

キオクシアが、トヨタを抜いた。

その一報を目にしたとき、私はしばらく画面から目が離せなかった。日本一の時価総額。その会社の前身は、かつて東芝が「2兆円で売り飛ばした」子会社だった。

あなたは、東芝の歴史を知っていますか? 知っている方も、改めて振り返ってほしい。これは単なる「過去の話」ではない。

今の日本株を考えるうえで、絶対に知っておくべき歴史だと私は思っている。特に、私たちのような就職氷河期世代にとって、東芝の栄枯盛衰は他人事では語れない。

あの時代に社会へ出た私たちは、日本の「強さ」「脆さ」を同時に目撃してきた。

「技術の東芝」──日の丸半導体の黄金期

1980年代、世界の半導体地図に燦然と輝く名前があった。東芝だ。

NANDフラッシュメモリーを生み出し、スマートフォンもPCも、東芝なしでは語れない時代があった。

「技術の東芝」という言葉は、単なるキャッチコピーではなかった。それは紛れもない事実だった。世界中の電子機器メーカーが、東芝の技術を欲しがった。日本の半導体が、世界を動かしていた。

あの頃の日本企業は、文字どおり世界の最前線にいた。半導体という産業の核心を、日本が握っていた。誰もが、この黄金期が永遠に続くと信じていたかもしれない。

あなたも、そんな時代の空気を覚えていませんか? 就職氷河期を生き抜いた私たちの世代は、バブル崩壊を横目に見ながらも、日本の「技術力」だけは信じていた気がする。東芝はその象徴だった。

転落の始まり──サムスン、そして不正

だが1990年以降、景色が変わる。韓国のサムスン、台湾のTSMCが猛然と追い上げ、気づけば東芝の背中は見えなくなっていた。

価格競争、設備投資の遅れ、そして組織の硬直化。勝ち続けることの難しさを、東芝は身をもって証明することになる。

あなたの会社でも、似たようなことが起きていませんか? 「昔は強かった」という言葉が、組織の中に漂い始めたとき、すでに何かが終わりかけているのかもしれない。

そして2015年。傷口に塩を塗るように、利益を大きく見せる不正会計が発覚した。長年にわたる組織ぐるみの粉飾。

信頼という名の柱が、音を立てて崩れた。

さらに2017年には、子会社のウェスチングハウスが倒産した。原子力発電事業の失敗が、東芝を債務超過へと突き落とした。一度傾いた巨艦は、誰にも止められなかった。

74年間つづいた上場の歴史が、静かにピリオドを打った。一つの時代が終わった瞬間だった。あれほど長く続いた上場企業が、こうして幕を引く。それ自体が、一つの悲劇だった。

2兆円で手放した「宝」

追い詰められた東芝は、東芝メモリを2兆円で売却した。巨額の赤字を埋めるために、中核事業を手放すしかなかった。

苦渋の決断だったはずだ。売る側も、買う側も、その会社が10年後に日本一になるとは、想像もしていなかっただろう。未来の価値を、誰も正確には読めない。それが投資の本質でもある。

その会社が今、キオクシアだ。トヨタを抜いて、日本一の時価総額の会社になった。

この事実を、どう受け止めればいいのだろう。当時の東芝の株主の方は、今、どんな思いでいるだろう。言葉が見つからない。胸の中に、何とも言えない重さが残る。

さらに追い打ちをかけるように、倒産したウェスチングハウスも、今や別の顔を持つ。

生成AIが引き起こす電力不足の救世主として脚光を浴び、アメリカ政府と12兆円の契約を結んでいる。かつての「負の遺産」が、時代の変化によって「最重要資産」に変わった。皮肉としか言いようがない。

半導体と原子力発電所。もし東芝が不正会計をしていなければ、この2つを抱えたまま、どこへ向かっていたのだろう。

100兆円どころか、それ以上の価値を持っていたかもしれない。考えるほど、胃のあたりが重くなる。東芝という会社の「もしも」は、日本経済全体の「もしも」でもある。

タラレバでも、考えずにはいられない

「タラレバを言っても仕方ない」──そうわかっている。

それでも、考えてしまう。キオクシアとウェスチングハウスを同時に持ち続けていたなら、東芝は100兆円企業になっていたかもしれない。

日本の企業史において、あれほど痛ましい「もしも」があっただろうか。一つの不正が、これほど巨大な可能性を消し去った。

日本企業は、ついていない。そう思わずにはいられない歴史がある。でも本当に「ついていない」だけだったのか。組織の中にいた人間は、何かを感じていなかったのか。私には、そう言い切れない部分もある。

構造的な問題が、あの不正の根底にあったのかもしれない。「勝ち続けること」へのプレッシャーが、組織を内側から腐らせていったのかもしれない。これは、東芝だけの話ではないはずだ。

それでも、相場は動いている

今の日本株は、AIや半導体企業が相場を引っ張っている。日経平均は7万円をクリアした。明るいニュースのように聞こえる。

だが、上がっていない銘柄が多い、と感じているのは私だけではないと思う。一部のセクターだけが評価される相場は、脆い。指数だけを見て「日本株は好調だ」と言えるほど、単純な話ではない。

日本全体の株価が底上げされないかぎり、日本経済の本当の復活は難しいと私は思っている。あなたも、同じ違和感を持っていませんか? 

東芝の時代に感じた「日本はまだいける」という感覚を、もう一度取り戻せるのか。それが私の、正直な問いだ。

AIブームが去った後、株価の暴落だけは避けてほしいと、切に願う。かつての「日の丸半導体ブーム」が去った後のように、繰り返しだけはごめんだ。東芝の歴史は、そのことを静かに教えてくれている。

目先の数字だけを追い続けた先に、何が待っているか。歴史が、すでに答えを出してしまっている。

かつての日の丸半導体のように、日本企業が世界で圧巻される時代が、また来てほしい。私は今日も、その日を信じながら、相場の勉強をつづけている。

あなたは、日本株の未来を、どう見ていますか?

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