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【美術展2025#79】藤本壮介の建築 原初・未来・森@森美術館

会期:2025年7月2日(水)~11月9日(日)

藤本壮介(1971年、北海道生まれ)は東京とパリ、深圳に設計事務所を構え、個人住宅から大学、商業施設、ホテル、複合施設まで、世界各地でさまざまなプロジェクトを展開しています。2000年の《青森県立美術館設計競技案》で注目を集めたのち、《武蔵野美術大学美術館・図書館》(2010年、東京)、《サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン2013》(ロンドン)、近年では集合住宅《ラルブル・ブラン(白い樹)》(2019年、フランス、モンペリエ)や音楽複合施設《ハンガリー音楽の家》(2021年、ブダペスト)などのプロジェクトを次々と完成させ、高い評価を得てきました。現在開催中の2025年大阪・関西万博では会場デザインプロデューサーを務めるなど、いま、最も注目される日本の建築家の一人です。

本展は、藤本にとって初の大規模個展です。活動初期から世界各地で現在進行中のプロジェクトまで8セクション構成で網羅的に紹介し、約30年にわたる歩みや建築的特徴、思想を概観します。展示には、模型や設計図面、竣工写真に加え、インスタレーションや空間を体験できる大型模型、モックアップ(試作モデル)なども含まれ、建築に携わる人だけでなく、だれもが藤本建築のエッセンスを体感できる、現代美術館ならではの展覧会です。さらに、藤本による未来の都市像の提案を通し、建築の存在意義や可能性についての考察も試みます。

環境への配慮、人と人との変わりゆく関係性、分断されたコミュニティをつなぐ機能、テクノロジーの発展に影響される生活など、今日、建築や都市には従来以上の役割を担うことが求められています。そのような時代に、建築は私たちの暮らしをどう変えうるのか。藤本の実践をとおして、みなさんとともに考えます。

森美術館


昭和の高度経済成長のアイコンとして東京タワーや新幹線とともに今でもコスられ続ける「大阪万博(EXPO'70)」では丹下健三が会場総合設計を行なった。

それから55年。
今年2025年に大阪で開催されている「大阪・関西万博(EXPO 2025)」の会場デザインプロデューサーに就いたのが藤本壮介だ。
万博と会期をほぼ同じくして現在、東京・森美術館で藤本氏の大規模個展が開催されている。

残念ながら万博は日程調整がつかず行けそうにないが、せめて森美術館は行かねば、ということで足を運んだ。


入場してすぐ、タイトル通り前菜のように置かれる作品。

《プロローグ》2025
未来の都市、あるいは空中の森

左から、原初のアイデア、未来のかけら、森…といったところだろうか?
だとすると右の2つは?
右から、原初の自然、未来の…なんだ?そして、森…?
う〜んしっくりこないな。
セクションの数は8つなのでそれとは関係なさそうだし。

まあ行ってみよう。


・思考の森

会場を進むとものすごい数の模型が縦横無尽に展示されている。
「思考の森」のタイトル通り、藤本氏のアイデアの源泉に迷い込んだような錯覚にとらわれる。

キャプションでは藤本建築の特徴の3つの系譜として、

①閉じているはずの円環が外部に開かれていることを表す「ひらかれかこわれ」
②空間の用途や性質が曖昧で多義的である「未分化」
③多数の部分が一つの建築を構成する「たくさんのたくさん」

というキーワードを挙げている。
やっぱり5じゃないのね

まだ形になっていないもの、ほぼ完成形のもの。
実現したもの、実現しなかったもの。
様々なものが混在しており、まさに森。

この日は朝イチ開館一番乗りで誰もいない状態を束の間堪能できたが、すぐに混み合ってきた。
模型は普通に手の当たる距離に展示してあるので、混雑時に誰かがうっかりぶつかって倒してしまわないか心配ではある。

直島パヴィリオンやユニクロパークなど、行ったことがある建物はやはり感情移入しやすい。


・軌跡の森 年表

建築史家倉方俊輔氏監修による藤本壮介年表。
個人史と日本や世界の建築史、さらには一般の出来事を並べているので時代背景や移り変わりがわかりやすい。
個人史は実質大学卒業後の1994年から始まるので、私も高校生くらいからリアルタイムに見てきた世の中の動向が脳裏に浮かぶ。
早30余年、いろいろあったな。

そして未来へ


・あわいの図書館

藤本氏の建築や世界観から着想を得て、幅允孝はば よしたか氏によって選書された40冊の本が「森 自然と都市」「混沌と秩序」「大地の記憶」「重なり合う声」「未完の風景」という5つのテーマに基づいて並ぶ。
やっと5が出てきたけれどもこれは幅氏が設定したテーマだから《プロローグ》の5とは関係ないか

Wikipediaによると幅氏の職業は「選書家、ブックディレクター…」他となっている。
選書家という職業名を初めて聞いた(幅氏は選書家のみを名乗っているわけではないが)。
だがそれこそ「芸術家、アーティスト、作家…等」なんて生計が成り立つかどうかはさておき、自分でそれを名乗る覚悟があるかどうかという部分が大切な気もする。
それでは私も明日から「鑑賞家、noter」と名乗ることにしようか、なんて思ってみる(noteに人生を捧げる覚悟は無いが)。

窓の外の街並みが室内に続いているようにも見える


40冊の中に「火の鳥」発見。

春にはここ六本木ヒルズで「火の鳥展」が行われていた↓


・開かれた円環

「大阪・関西万博」の《大屋根リング》の一部1/5サイズの縮小模型が展示されている。
元のサイズが全長約2km、外径が600mを超える世界最大級の木造建築とのことなので、1/5サイズといえどもなかなかの迫力がある。

試行錯誤


こちらはさらにコンパクトな模型。

こういうのを見ると実際現地に行きたくなる。
やはりその場に身を置いてみる実体験がないとなかなかスケール感の実感が湧かない。
スマホをぽちぽちするだけでなんでも情報が得られる世の中だからこそ、その場の音や空気や匂いを実際に感じることの重要性が今まで以上に増しているように思う。
やはり無理やり予定を作って行ってみようか。


・たくさんの ひとつの 森

「たくさんの/ひとつの響き」という理念を基にした、2031年竣工予定の音楽ホール兼震災メモリアル《仙台市(仮称)国際センター駅北地区複合施設》の1/15模型。

フランク・ゲーリーを彷彿とさせるデザイン。
構造家泣かせの意匠だが何本も柱が通っているようだからまあなんとでもなるか。
施工やメンテナンスは大変そうだが。

近代では建築家の仕事にスポットが当たりやすくなってくるが、構造家の重要性こそ以前に増して大きくなってくる。
名車にとってデザインと動力機構のどちらも疎かにできないのと同様に、名建築も意匠と構造の両立がしっかりしていなければ成り立たない。
ただ、車の場合はエンジンがポンコツでもとりあえず走ることはできるかもしれないが、建築物は構造がしっかりしていなければ崩壊してしまう。
そう思うと建築家より構造家の仕事の方が実は重要なのかもしれない。
なんて、以前構造家の展覧会に行った時に思ったのだ。


ばらばらであり ひとつであり


その他、大量のドローイングも並ぶ。


・未来の森 原初の森—共鳴都市2025

東京湾上で大小の球体が縦横斜めに高さ500mでつながり、その中で5万人が暮らす未来都市。
球体はあくまでイメージの象徴とのことだが、住宅、学校、オフィスなど都市生活に必要な機能をすべて備えているコロニーの集合体のようなものか。

とはいえ私はやっぱり台地に足を付けて生活したいな。


奇しくも丹下健三も過去に東京湾上の都市計画を提案していた。

黒川紀章や磯崎新なども参加したこの計画は、東京湾を横断するようにかかるはしご状の構造物を都市軸として、人口1000万人の線形都市を作るという構想だ。
当時であっても東京湾上に都市をつくるという発想そのものは特別な計画ではなかったようだが、Wikipediaによると「インパクトのある模型写真もあいまって、同構想は建築界のみならず一般社会においてもセンセーショナルに受け止められた」そうだ。
『AKIRA』に登場する東京湾を埋め立てた海上都市は「東京計画1960」に影響を受けたとする考察もあるが、フィクションのみならず現実でも東京湾アクアラインなど後世の都市計画へつながっていく。

果たして藤本氏の《共鳴都市2025》は未来の森のための原初の種となるだろうか。
そして、後世で令和の時代を振り返ったときに、《大屋根リング》は時代のアイコンとなるほどに人々の心に焼き付いているだろうか。


片岡館長は今展開催にあたり、

「建築の専門家ではない幅広い入場者に向けて通常は図面や模型、写真、あるいは多くのテキストで説明されるケースも多いかと思う。身体的な体験が展覧会の中で実現して、建築家の具体的な仕事はもちろん、そこに通底している思想なりコンセプトがわかりやすく伝わるような建築展ができないかと考え、海外の美術関係者にも評価が高い藤本さんにお声がけした」

BUNGA NET

とのことだが、そのリクエストどおり、本展は模型や図面、写真といった資料だけが並ぶ建築展ではなく、インスタレーションや映像などを取り入れた、都市の未来を描くスケールの大きな体験型の展覧会だった。


ところで、ランドマークになるような建築物や、モニュメント、パヴィリオンなどならデザインの自由度は高く(もちろん構造的な制約はあるだろうが)、それこそ建築家の本領発揮といったところだが、一般住宅となると実際はなんだかんだ言って日々の暮らしやすさが一番重要になるだろう。
そう考えると藤本氏の設計した一般住宅は、私にとってはコンセプトが先行しているように感じ、住みやすいとは思えないようなものも多々あった。
(今までCasa BRUTUSなどで見てきてその度に思っていた)

それを押してでもそこに住むには、藤本氏のコンセプトに賛同し、「藤本氏設計の住宅」という「アート作品」を棲家とする覚悟が必要なのだろう。
その覚悟を決めることができた人にとっては至高の場になるに違いない。
だが、私は小市民なのでなかなかその覚悟はつかず住みこなせそうにない…(それ以前に予算が追いつかない)。

さて、結局《プロローグ》の5という数は何を意味していたのだろう?
どこかで見落としたかな?
森美術館は年パス持っているからタイミングが合えばもう一度行って探してみよう。



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