【美術展2025#22】火の鳥展@東京シティビュー
会期:2025年3月7日(金)〜5月25日(日)
企画監修:福岡伸一
生物学者が読み解く、手塚治虫の生命哲学とは
『火の鳥』のテーマは「生きること、死ぬことの意味は何か」。
人間にとって最も深遠な問いです。全編にわたって不死鳥”火の鳥”が登場し、生に執着する人間を翻弄しながら物語を動かします。
そこでは、あらゆる生命が常に姿と形を変えながら、連綿と受け継がれていく輪廻転生の生命観、汎神論的な世界観が示されます。
これは、生命が絶えず自らの破壊と創造を繰り返しながら、エントロピー増大の法則に抗い続けている「動的平衡(どうてきへいこう)」であるとする私の生命論とぴたりと重なります。
本展の狙いは、動的平衡の視点から『火の鳥』の意味を読み解くことにあります。
そして。手塚治虫が描くことを約束しながら果せなかった物語の結末を想像してみたいと思います。
今日は六本木ヒルズで展覧会を3つハシゴする。
長い1日になりそうだ。

まずは「火の鳥展」

シティビューの利点を最大限に活かしたエントランス展示。

ここに来るたびに「復活編」のロビタが集団で溶鉱炉に飛び込むシーンが脳内に再生される。
ザッザッザッザッ

床には各編の名シーンがランダムにコラージュされている。
早くも泣ける。



手塚治虫が思い描いた21世紀は訪れたのだろうか。

麻布台ヒルズギャラリーも本日この後行く

遠くに富士山を望む
今回の展覧会はただ原画を並べるだけの漫画展ではない。
生物学者の福岡伸一氏が企画監修を行い、「動的平衡」の視点から手塚治虫が死の直前に描くはずだった最後の一コマを想像するという壮大な試みなのだ。
今回の「火の鳥展」に備えて、先月「火の鳥」全巻一気読み返しをした。
今までの人生で何回「火の鳥」を読んできただろう。
読み返すたびに新しい発見と感動がある。
そこには世界の全てが描いてある。
黎明編で壁を登りきったタケルがヤマト編に再び登場した時は悶絶した。
未来編は3400年代の話かと思っていたらあれよあれよと30億年後の話になっていてビール噴いた。
猿田が…、牧村が…、八百比丘尼が…、伏線が縦横無尽に張り巡らされ、鮮やかに回収されていく。
ページをめくるたびに、斬新なコマ割りにシビれて、圧倒的な描写に魅了される。
手塚治虫の描く絵が、言葉が、その全てが過去と未来を往き交いながら私の中にじわじわと染み込んでくる。
そして太陽編の最後のページを閉じるたびに私は昇天するのだ。
手塚治虫への思いは以前「ブラックジャック展」の記事で熱く語ったが、とにかく小5の春に初めて「火の鳥」を読んだ時から、「火の鳥」は私の人生のバイブルになった。
そして今回「火の鳥」を全巻読み返して、久しぶりにその世界観に浸って以降、身の回りの事象が全て「火の鳥」に思えてしまうのだ。
先日東京都現代美術館に行ったときも坂本龍一展で「火の鳥」を感じた。
今展の企画監修者である福岡氏は坂本龍一と長年親交があったそうだが、それも影響していのだろうか。
私の中で坂本龍一の世界観が、時空を越えて過去と未来を自由自在に行き来する「火の鳥」の世界観と完全にシンクロしていた。

都現美コレクション展示室最後の部屋にも「火の鳥」がいた。

ワタリウム美術館での雨宮庸介展にもやはり「火の鳥」がいた。
まさにVとRがぐるぐると回りだし、「リアル」と「リアリティ」が並走しはじめる。
「動的平衡」と「宇宙生命」
「溶けてるほう」と「溶けてないほう」
「生」と「死」
気がつくと、ここにもそこにも「火の鳥」がいる。
原画は言うまでもなく素晴らしかった。
描いて、描いて、修正を繰り返して、描いて、ホワイトを入れまくって、切って貼って、描いて、描いて、直して、そして描いて、…とにかく細部までとことんこだわりまくっている。
400ページの作品のために1000ページの原稿を描き、600ページをボツにしたという伝説のエピソードは伊達ではない。
印刷物では伝わらない生原稿のみが持つ圧倒的パワーは今でも全く色褪せることなく私の心に刺さった。
素晴らしかった。
作品についてはここで多くを語る必要はないだろう。
ぜひ多くの人に会場に足を運んでもらいたい。
そしてもし「火の鳥」をまだ読んだことがない人がいたらぜひ一度手に取ってほしい。
繰り返す。
そこに世界の全てが描いてある。

さて、福岡伸一氏が思い描いた「火の鳥」最後の一コマはどのようなものだったのだろうか。
それは、ぜひ会場で「火の鳥 休憩」の原画とともに確認していただきたい。

あなたは永遠の命が欲しいですか?

『永遠の命はいらないが、孫の顔が見れるくらいまでは生きて、そしてぽっくり死にたい。』(なんか、普通だな)
ペタッ

「鳳凰編」に登場する鬼瓦。

もう少し大きければ買っていた。
今回の公式ブック。
ネット先行予約で福岡氏サイン入りをゲット。

会場には幻の「大地編」の構想原稿も展示されていた。
眼下に国立新美術館を臨む。

なんなら新美術館も「火の鳥」に見える。


現在、六本木ヒルズ森タワーでは「火の鳥展」と時を同じくして「古代エジプト展」と「マシン・ラブ展」が行われている。
「過去」と「未来」
まさに「火の鳥」的世界観。
しかも「火の鳥」を軸にして「過去」から「未来」へ繋いでいくという会期設定にシビれる。

森タワーそのものを「火の鳥」に見立てた壮大なメッセージとしてしかと受け取った。
3展の会期がちょうど重なるのは1ヶ月間ほどだが、この期間を作り出すための調整はさぞ大変だったことだろう。
一鑑賞者として心を込めて堪能させていただく。
3展全て見ることで新たに見えてくる世界もあるはず。
いざ「古代エジプト展」へ。

こんな気分で。

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