松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問 108-196-197【物理・化学・生物、衛生/実務】論点:シスプラチン / 支持医療 / 輸液療法 / 制吐療法 / アクア錯体 / モル電気伝導率
第108回薬剤師国家試験|薬学実践問題 /
問196-197
一般問題(薬学実践問題)
【物理・化学・生物、衛生/実務】
■複合問題|問 108-196-197
Q. 72歳男性。身長173cm、体重63kg。タール便があり、近医にて内視鏡検査を施行したところ、胃噴門部に腫瘤を認め総合病院の消化器外科に紹介となった。精査の結果、胃がんStageⅣ、肝転移及び多発リンパ節転移と診断され、胃がんの一次治療としてS-1*/シスプラチン療法(SP療法)を導入することになった。そこで自宅にてS-1の服用を開始し(Day|1)、Day|8よりシスプラチン注射液を投与するため投与前日(Day|7)に入院となった。
*:テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤
(処方)
Day|1~21|に内服テガフール20mg・ギメラシル・オテラシル配合口腔内崩壊錠1回3錠(1日6錠)1日2回|朝夕食後|21日分|
Day|8|にシスプラチン注射液60mg/m2:120分かけて点滴静注
実務
問 108-196|実務
Q. SP療法の施行に関する記述のうち、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
■選択肢
1. シスプラチン注射液は5%ブドウ糖注射液で希釈する。
2. デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム注射液、アプレピタントカプセルを投与するのはシスプラチン注射液の投与前日(Day|7)である。
3. シスプラチン注射液の投与翌日(Day|9)に、セロトニン5-HT1受容体遮断薬を投与する。
4. シスプラチン注射液の投与前(Day|8)に十分な量の輸液を投与する。
5. 体重からシスプラチン注射液の投与量を算出する。
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物理・化学・生物
問 108-197|物理
Q. SP療法に用いられる薬物及びその代謝物を水溶液としたとき、水溶液のモル電気伝導率が時間の経過とともに増大し、抗がん作用を発現するのはどれか。1つ選べ。
■選択肢
1. シスプラチン
2. テガフール
3. ギメラシル
4. オテラシルカリウム
5. フルオロウラシル
Here:
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こんにちは!薬学生の皆さん。
Mats & BLNtです。
matsunoya_note から、薬剤師国家試験の論点解説をお届けします。
苦手意識がある人も、この機会に、【物理・化学・生物、衛生/実務】 の複合問題を一緒に完全攻略しよう!
今回は、第108回薬剤師国家試験|薬学実践問題 / 問196-197、論点:シスプラチン / 支持医療 / 輸液療法 / 制吐療法 / アクア錯体 / モル電気伝導率を徹底解説します。
薬剤師国家試験対策ノート NOTE ver.
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このコンテンツの制作者|
滝沢 幸穂 Yukiho Takizawa, PhD
https://www.facebook.com/Yukiho.Takizawa
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設問へのアプローチ|
薬学実践問題は原本で解いてみることをおすすめします。
まずは、複合問題や実務の問題の構成に慣れることが必要だからです。
薬学実践問題は薬剤師国家試験2日目の①、②、③ の3部構成です。
今回の論点解説では2日目の①を取り上げています。
厚生労働省|過去の試験問題👇
第109回(令和6年2月17日、2月18日実施)
第108回(令和5年2月18日、2月19日実施)
第107回(令和4年2月19日、2月20日実施)
第106回(令和3年2月20日、2月21日実施)
第108回薬剤師国家試験 問196-197(問108-196-197)では、シスプラチンに関する知識を物理および実務のそれぞれの科目の視点から複合問題として問われました。
複合問題は、各問題に共通の冒頭文とそれぞれの科目別の連問で構成されます。
冒頭文は、問題によっては必要がない情報の場合もあるため、最初に読まずに、連問すべてと選択肢に目を通してから、必要に応じて情報を取得するために読むようにすると、時間のロスが防げます。
1問、2分30秒で解答できればよいので、いつも通り落ち着いて一問ずつ別々に解けば大丈夫です。
出題範囲は、それぞれの科目別の出題範囲に準じています。
連問と言ってもめったに連動した問題は出ないので、平常心で取り組んでください。
💡ワンポイント
複合問題ですが、問108-196-197を解くうえで必要な情報は、黄色い線で示した部分です。
それ以外の情報取得は必要がないです。読んでいると時間のロスに繋がります。

問108-196および問108-197は、シスプラチンに関する記述の正誤を問う問題です。
医療用医薬品添付文書と支持療法ガイドラインの理解が必要です。
冒頭文で必要な情報は、
Day|8|にシスプラチン注射液60mg/m2:点滴静注
です。
🫛豆知識 医療用医薬品添付文書 抜粋
医療用医薬品添付文書等を一読しておくと応用力がつきます。
PMDA 医療用医薬品添付文書等 シスプラチン
製造販売元/日本化薬株式会社
ランダ注10mg/20mL/ランダ注25mg/50mL/ランダ注50mg/100mL
以下抜粋します。
2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)
🫛禁忌:重篤な腎障害のある患者には投与しない。
腎障害を増悪させる。
また、腎からの排泄が遅れ、重篤な副作用が発現する。
2.1 重篤な腎障害のある患者[腎障害を増悪させることがある。また、腎からの排泄が遅れ、重篤な副作用が発現することがある。][9.2.1 参照]
2.2 本剤又は他の白金を含む薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者
2.3 妊婦又は妊娠している可能性のある女性[9.5 参照]
7. 用法・用量に関連する注意
〈シスプラチン通常療法〉
7.1 本剤の投与時には腎毒性を軽減するために下記の処置を行うこと。
🫛腎毒性を軽減するため、投与前、1,000~2,000mLの適当な輸液を4時間以上かけて投与する。
🫛腎毒性を軽減するため、投与終了後、1,000~2,000mLの適当な輸液を4時間以上かけて投与する。
🫛投与量に応じて500~1,000mLの生理食塩液又はブドウ糖-食塩液に混和し、2時間以上かけて点滴静注する。
🫛尿量確保に注意し、必要に応じてマンニトール及びフロセミド等の利尿剤を投与する。
成人の場合
本剤投与前、1,000~2,000mLの適当な輸液を4時間以上かけて投与する。
本剤投与時、投与量に応じて500~1,000mLの生理食塩液又はブドウ糖-食塩液に混和し、2時間以上かけて点滴静注する。なお、点滴時間が長時間に及ぶ場合には遮光して投与すること。
本剤投与終了後、1,000~2,000mLの適当な輸液を4時間以上かけて投与する。
本剤投与中は、尿量確保に注意し、必要に応じてマンニトール及びフロセミド等の利尿剤を投与すること。
8. 重要な基本的注意
〈効能共通〉
8.1 悪心・嘔吐、食欲不振等の消化器症状がほとんど全例に起こるので、患者の状態を十分に観察し、適切な処置を行うこと。
8.2 腎障害、骨髄抑制等の重篤な副作用が起こることがあるので、頻回に臨床検査(腎機能検査、血液検査、肝機能検査等)を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。また、使用が長期間にわたると副作用が強くあらわれ、遷延性に推移することがあるので、投与は慎重に行うこと。なお、フロセミドによる強制利尿を行う場合は腎障害、聴器障害が増強されることがあるので、輸液等による水分補給を十分行うこと。[11.1.1 参照],[11.1.2 参照],[11.1.7 参照],[11.1.12 参照]
8.3 感染症、出血傾向の発現又は増悪に十分注意すること。
8.4 本剤の投与にあたってはG-CSF製剤等の適切な使用に関しても考慮すること。
8.5 投与量の増加に伴い聴器障害の発現頻度が高くなり、特に1日投与量では80mg/m2以上で、総投与量では300mg/m2を超えるとその傾向は顕著となるので十分な観察を行い投与すること。[11.1.4 参照]
8.6 高血糖、糖尿病の悪化があらわれることがあるので、血糖値や尿糖に注意するなど観察を十分に行うこと。[11.1.15 参照]
11. 副作用
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
11.1 重大な副作用
11.1.1 急性腎障害(頻度不明)
急性腎障害等の重篤な腎障害があらわれることがある。BUN、血清クレアチニン、クレアチニン・クリアランス値等に異常が認められた場合は投与を中止し、適切な処置を行うこと。その他、血尿、尿蛋白、乏尿、無尿があらわれることがある。[8.2 参照]
11.1.2 骨髄抑制
汎血球減少(頻度不明)、貧血(30.8%)、白血球減少(40.0%)、好中球減少(頻度不明)、血小板減少(19.5%)等があらわれることがある。[8.2 参照]
14. 適用上の注意
14.1 薬剤調製時の注意
🫛クロールイオン濃度が低い輸液を用いると活性が低下するので必ず生理食塩液と混和する。
🫛アルミニウムと反応して沈殿物を形成し、活性が低下するので、使用にあたってアルミニウムを含む医療用器具を用いない
🫛錯化合物であるので、他の抗悪性腫瘍剤とは混注しない
🫛生理食塩液又はブドウ糖-食塩液に混和後、できるだけ速やかに投与する。
14.1.1 本剤を点滴静注する際、クロールイオン濃度が低い輸液を用いる場合には、活性が低下するので必ず生理食塩液と混和すること。
14.1.2 本剤は、アルミニウムと反応して沈殿物を形成し、活性が低下するので、使用にあたってアルミニウムを含む医療用器具を用いないこと。[14.2.3 参照]
14.1.3 本剤は、錯化合物であるので、他の抗悪性腫瘍剤とは混注しないこと。
14.1.4 本剤は、細胞毒性を有するため、調製時には手袋を着用することが望ましい。皮膚に薬液が付着した場合には、直ちに多量の流水でよく洗い流すこと。
14.1.5 本剤は、生理食塩液又はブドウ糖-食塩液に混和後、できるだけ速やかに投与すること。
14.2 薬剤投与時の注意
🫛光により分解するので直射日光を避け、点滴時間が長時間に及ぶ場合には遮光して投与する。
🫛使用にあたってアルミニウムを含む医療用器具を用いない。
14.2.1 本剤は、光により分解するので直射日光を避けること。また、点滴時間が長時間に及ぶ場合には遮光して投与すること。[20.1 参照]
14.2.2 静脈内投与に際し、薬液が血管外に漏れると、注射部位に硬結・壊死等を起こすことがあるので、薬液が血管外に漏れないように慎重に投与すること。
14.2.3 使用にあたってアルミニウムを含む医療用器具を用いないこと。[14.1.2 参照]
18. 薬効薬理
18.1 作用機序
癌細胞内のDNAと結合し、DNA合成及びそれに引き続く癌細胞の分裂を阻害するものと考えられている20)。
インタビューフォーム F1_ランダ注10mg/20mL/ランダ注25mg/50mL/ランダ注50mg/100mL
一部抜粋します。
Ⅵ.薬効薬理に関する項目
シスプラチンは白金原子を含む錯体の無機化合物の抗悪性腫瘍剤である。
誘導体:カルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、ミリプラチン水和物
(1)
癌細胞内の DNA と結合し、DNA 合成及びそれに引き続く癌細胞の分裂を阻害す るものと考えられている29)。
その結合様式は下図に示す3つの様式が考えられ、そのうちb又はcの如くDNA 鎖の塩基と結合し、架橋を形成するとき細胞致死作用が最も強いと考えられる。
CDDP のDNA 結合様式

(2)
殺細胞作用は濃度依存性及び時間依存性である(in vitro)30)。
培養したエールリッヒ癌細胞に対してCDDP又は他の抗癌剤を2時間及び48時間作用させ、癌細胞増殖を50%阻害する薬剤作用濃度(IC50)を求めた。 結果は次ページの表のとおりで、CDDP の殺細胞作用は濃度依存性であり、かつ、 作用時間の延長によっても増大する。
エールリッヒ癌初代培養細胞に対するCDDP及び各種抗癌剤の増殖阻害活性

type Ⅰa:濃度依存性速効性作用群
type Ⅰb:濃度依存性速効性かつ遅効性作用群
type Ⅱa:制限付時間依存性作用群
type Ⅱb:時間依存性作用群
(日本化薬総合研究所)
(3)
殺細胞作用は細胞周期相に対して非特異的である(in vitro)31)。
同調培養したヒトリンフォーマ細胞(T cell)の各相に対する殺細胞作用を検 討した結果、下図の如く高用量の場合G1期にある細胞は相対的に感受性が高いが、一般的には細胞周期に対して非特異的な殺細胞作用を有するものと考えられる。
2.一般名
(1)和名(命名法) シスプラチン(JAN)
(2)洋名(命名法) Cisplatin(JAN、INN)
(3)ステム(stem) 抗悪性腫瘍剤(白金誘導体):-platin
3.構造式又は示性式
白金原子を中心に塩素原子とアンモニア分子が 平面に対してcis位に配位した錯体である。

出典:
PMDA 医療用医薬品添付文書等 シスプラチン
製造販売元/日本化薬株式会社
ランダ注10mg/20mL/ランダ注25mg/50mL/ランダ注50mg/100mL
インタビューフォーム F1_ランダ注10mg/20mL/ランダ注25mg/50mL/ランダ注50mg/100mL
支持療法としての制吐療法に関しては、下記のガイドラインを一読すると、応用力がつきます。
日本癌治療学会作成『制吐薬適正使用ガイドライン』2023 年10 月改訂 第3 版(金原出版株式会社)制吐療法 | がん診療ガイドライン | 日本癌治療学会
以下抜粋します。
Ⅱ 総論
1概要
がん薬物療法においては,がんに対する適切な治療方針のもとで選択された薬物療法の治療強度を維持しつつ,患者の副作用を極力最小限にしながら,安全に実施することが医療従事者のstate-of-the-art とされている。しかし,抗がん薬投与後の患者の副作用には個人差があり,個々の患者に発現する種々の苦痛症状に対しては個別対応が必要となる。がん薬物療法を提供する医療従事者は各種支持療法に精通する必要があり,十分な支持療法を実施することで患者の日常生活を守り,治療成績の向上を図ることができる1)。
がん薬物療法によって発現する悪心・嘔吐は患者が苦痛とする代表的な副作用であり,制吐療法はがん薬物療法を完遂するうえで極めて重要な支持療法である。がん薬物療法によって生じる悪心・嘔吐を制吐療法により抑制することは,患者QOL を向上させ,治療を適切に維持し,最終的には全生存期間の延長が期待できる。しかし,制吐療法にはがん薬物療法を維持できる益の部分と同時に,有害事象,通院等の患者の生活上の負担,薬剤のコストといった望ましくない害の部分もあることは明らかであり,益の明らかでない制吐療法は行うべきでない。
2悪心と嘔吐
「悪心」は“嘔吐しそうな不快な感じ”と定義され1-3),延髄の嘔吐中枢に向かう求心性迷走神経刺激により発現する。「嘔吐」は“胃内容の強制排出運動”と定義され2-4),胃幽門部は閉ざされたうえで,下部食道括約筋の弛緩,横隔膜や腹筋の収縮により,胃内容が排出される。なお「空嘔吐」は“胃内容は排出されないが,強制的に排出しようとする運動”と定義される2,3)。これら嘔吐中枢への入力刺激としては大脳皮質(頭蓋内圧亢進,腫瘍,血管病変,精神・感情など),化学受容体(代謝物,ホルモン,薬物,毒素など),前庭器(姿勢,回転運動,前庭病変など),末梢(咽頭-消化管・心臓・腹部臓器などの機械受容体,消化管などの化学受容体)がある5)。
悪心・嘔吐が起こるメカニズムを図1 に示す。上部消化管に優位に存在するセロトニン3(5-HT3:5-hydroxytryptamine 3)受容体と第4 脳室最後野の化学受容体引金帯に存在するニューロキニン1(NK1:neurokinin 1)受容体が複合的に刺激され,最終的に延髄の嘔吐中枢が興奮し,遠心的な臓器反応が起こることで悪心・嘔吐が引き起こされると考えられている。化学受容体で作用する神経伝達物質としては,セロトニン,サブスタンスP,ドパミン,ヒスタミン,アセチルコリン-ムスカリンなどが知られており,これらの化学受容体と拮抗する薬剤が制吐薬として用いられている。
図1 抗がん薬による悪心・嘔吐のメカニズム

日本癌治療学会作成『制吐薬適正使用ガイドライン』
2023 年10 月改訂 第3 版(金原出版株式会社)制吐療法 | がん診療ガイドライン | 日本癌治療学会
また,悪心・嘔吐の発現時期や状態により,以下の定義があり5),機序や背景を考慮した制吐療法が行われている。
急性期悪心・嘔吐(acute nausea and vomiting):抗がん薬投与開始後24 時間以内に発現する悪心・嘔吐
遅発期悪心・嘔吐(delayed nausea and vomiting):抗がん薬投与開始後24~120 時間(2~5 日目)程度持続する悪心・嘔吐
突出性悪心・嘔吐(breakthrough nausea and vomiting):制吐薬の予防的投与にもかかわらず発現する悪心・嘔吐
予期性悪心・嘔吐(anticipatory nausea and vomiting):抗がん薬のことを考えるだけで誘発される悪心・嘔吐
*急性期と遅発期を合わせて全期間(抗がん薬投与開始から5 日間程度)とする。
*抗がん薬投与開始120 時間後以降(6 日目以降)も持続する超遅発期悪心・嘔吐(beyond delayed nausea and vomiting)も注目されている。
❶悪心・嘔吐に対するリスク評価
(1)抗がん薬の催吐性リスク
がん薬物療法により誘発される悪心・嘔吐の発現頻度は,使用する抗がん薬の催吐性によって規定される。本ガイドラインでは,海外の制吐療法ガイドラインと同様に,種々の臨床試験で示された催吐性を考慮し,制吐薬の予防的投与がない状態で抗がん薬投与後24時間以内に発現する嘔吐の割合に従って以下の4 つに定義した。
高度催吐性リスク(high emetic risk):90%を超える患者に発現する。
中等度催吐性リスク(moderate emetic risk):30%<~90%の患者に発現する。
軽度催吐性リスク(low emetic risk):10%~30%の患者に発現する。
最小度催吐性リスク(minimal emetic risk):10%未満の患者に発現する。
❸注射抗がん薬の催吐性リスクに応じた制吐療法(→BQ1~5,FQ1 参照)
がん薬物療法で使用する基本的な制吐薬には5-HT3 受容体拮抗薬,NK1 受容体拮抗薬,デキサメタゾン,オランザピンの4 剤があり,これらを催吐性リスクによって使い分ける。催吐性リスクに応じた適切な制吐療法を行っているか,制吐療法実施のための体制が整備されているかは,重要な施設評価のポイントとなり得るので,施設全体で取り組む必要がある。
また,制吐療法以外の支持療法や併存症に対する治療薬を併用している場合も多く,薬物相互作用によるそれぞれの薬効の変化も考慮した薬剤選択や用量調整が必要である。
Ⅲ 急性期・遅発期の悪心・嘔吐予防
1概要
予防的制吐療法に用いられる制吐薬は,急性期に有効な5-HT3 受容体拮抗薬,NK1 受容体拮抗薬,デキサメタゾン,遅発期に有効なNK1 受容体拮抗薬,デキサメタゾンである。また,かつて制吐目的に適応外使用されていた非定型抗精神病薬のオランザピンが,公知申請を経て,2017 年に本邦でのみ,「抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心,嘔吐)」に対して保険適用になり,急性期・遅発期ともに有効な新たな制吐薬として使用可能になった。抗がん薬の催吐性リスクに応じて,これら制吐薬の組み合わせ,投与期間,投与量が決められている(→ダイアグラム参照)。
今版における改訂のポイントは,国内外のランダム化第Ⅱ・Ⅲ相比較試験により,高度および中等度催吐性リスク抗がん薬に対して,オランザピンを含む予防的制吐療法が開発されたこと(→CQ1,4,5 参照),遅発期のデキサメタゾン投与省略のエビデンスが示されたこと(→CQ2,6 参照),中等度催吐性リスク抗がん薬に対するNK1 受容体拮抗薬の予防的投与について新しいエビデンスが示されたこと(→CQ3 参照),である。
前版までに掲載されたエビデンスにこれらの新しいエビデンスを加え,推奨される制吐療法の基本情報を抗がん薬の催吐性リスク別に解説した(→BQ1~5 参照)。
2抗がん薬の催吐性リスクに応じた予防的制吐療法
❶高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防(→ダイアグラム1 参照)
高度催吐性リスク抗がん薬に対する予防的制吐療法は,5-HT3 受容体拮抗薬,NK1 受容体拮抗薬,デキサメタゾンの3 剤併用療法であったが,オランザピンを含む4 剤併用療法が3 剤併用療法よりも有意に急性期と遅発期の悪心・嘔吐を抑制することがランダム化第Ⅲ相比較試験で示され,オランザピンを含む4 剤併用療法が標準的な予防的制吐療法として新たに加わった(→BQ1,CQ1 参照)。ただし,オランザピンは本邦では糖尿病患者には禁忌(海外では慎重投与)であり,臨床試験では75 歳以上の後期高齢者における使用実績がないため,オランザピンの併用については患者ごとに適応を検討する必要がある。
また,AC 療法においてはデキサメタゾンの投与期間を短縮可能(遅発期のCR 割合における3 日間投与に対する1 日目のみ投与の非劣性)というエビデンスが示されたが,AC 療法以外の高度催吐性リスク抗がん薬ではエビデンスがないことに注意する(→CQ2 参照)。
オランザピンを用いない3 剤併用療法を行う場合やデキサメタゾンの投与期間を短縮する場合の5-HT3 受容体拮抗薬の選択は,遅発期悪心・嘔吐に対して第1 世代よりも有効性の高い第2 世代のパロノセトロンを優先する(→BQ2 参照)。
R±CHOP 療法は高度催吐性に相当するレジメンであるが,高用量のプレドニゾロンが抗がん薬として使用されることから,5-HT3 受容体拮抗薬とプレドニゾロンの2 剤をもってR±CHOP 療法に対する制吐療法とされてきた経緯があったため,R±CHOP 療法に対するNK1 受容体拮抗薬投与の妥当性についてCQ7 で解説した。
🫛問 108-196|実務
🫛デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム注射液、アプレピタントカプセルを投与するのはシスプラチン注射液の投与前日(Day|7)である。(選択肢2)[誤り]
🫛シスプラチン注射液の投与翌日(Day|9)に、セロトニン5-HT1受容体遮断薬を投与する。(選択肢3)[誤り]
ダイアグラム
■ダイアグラム1:高度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法

制吐療法 | がん診療ガイドライン | 日本癌治療学会
ダイアグラム
CQ1
高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,3 剤併用療法(5-HT3 受容体拮抗薬+NK1 受容体拮抗薬+デキサメタゾン)へのオランザピンの追加・併用は推奨されるか?
推奨の強さ1(強い)エビデンスの強さB(中)
高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,3 剤併用療法へのオランザピンの追加・併用を強く推奨する。合意率:95.7%(22/23 名)
解説
高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,5-HT3 受容体拮抗薬とNK1 受容体拮抗薬およびデキサメタゾンの3 剤併用療法に加えて,オランザピンを追加・併用することを強く推奨する(→ダイアグラム1 参照)。ただし,本邦では糖尿病患者へのオランザピン投与は禁忌であるため,糖尿病患者においては従来の3 剤併用療法を行う。
なお,オランザピンの用量・投与方法としては,本邦で行われたランダム化比較試験1)の結果から,5 mg を1~4 日目の夕食後に投与することが望ましい。
❶本CQ の背景
高度催吐性リスク抗がん薬に対する予防的制吐療法については,前版一部改訂版(ver.2.2)では,NK1 受容体拮抗薬,5-HT3 受容体拮抗薬およびデキサメタゾンの3 剤併用療法を推奨グレードA として提示しており,オランザピンの追加・併用については,「本邦における推奨用量,使用方法についてはまだ検証段階であるため,適切な患者に慎重に投与することが望まれる」としていた。一方,NCCN ガイドライン2017,ASCO ガイドライン2017 では,オランザピンを含む4 剤併用療法が推奨として追加された。今回,本邦において実施されたランダム化第Ⅲ相比較試験1)が報告され,より適正な制吐療法およびそのオプションの提示が必要と考えられ,本CQ を設定した。
出典:
日本癌治療学会作成『制吐薬適正使用ガイドライン』2023 年10 月改訂 第3 版(金原出版株式会社)制吐療法 | がん診療ガイドライン | 日本癌治療学会
ダイアグラム | がん診療ガイドライン | 日本癌治療学会
まず基本的な知識について復習しておきましょう。
■■Grok 2
🦾🤖注意:
コンテンツの下線部分にはそのキーワードについてGrokへ質問をするためのリンク(※Grokによって任意に埋め込まれた)が含まれています。リンクを押すとGrokに移動します。
日本癌治療学会作成『制吐薬適正使用ガイドライン』2023年10月改訂第3版抜粋部分 まとめ
総論
治療強度と副作用管理:
がん薬物療法では、治療強度を維持しつつ副作用を最小限に抑えることが重要。患者の個別対応が必要で、医療従事者は支持療法に精通すべき。制吐療法の重要性:
悪心・嘔吐はがん薬物療法の主な副作用であり、制吐療法は患者のQOL向上や治療の継続に不可欠。しかし、制吐療法自体にも有害事象やコストの問題がある。
悪心と嘔吐
定義:
悪心: 嘔吐しそうな不快感。
嘔吐: 胃内容の強制排出運動。
空嘔吐: 胃内容の排出はないが、排出しようとする運動。
メカニズム:
悪心・嘔吐は複数の刺激(脳、大脳皮質、化学受容体、前庭器、末梢)の結果、延髄の嘔吐中枢が活性化されることで起こる。主要な神経伝達物質とその受容体(5-HT3受容体、NK1受容体など)に対する薬剤が制吐薬として用いられる。分類:
急性期悪心・嘔吐: 抗がん薬投与後24時間以内。
遅発期悪心・嘔吐: 投与後24〜120時間。
突出性悪心・嘔吐: 制吐薬投与にもかかわらず発現。
予期性悪心・嘔吐: 抗がん薬を考えるだけで誘発。
超遅発期悪心・嘔吐: 投与後6日目以降。
リスク評価と制吐療法
抗がん薬の催吐性リスク:
抗がん薬の種類によって悪心・嘔吐の頻度が異なる。リスクは「高度」「中等度」「軽度」「最小度」に分類。制吐薬の選択:
リスクに応じて5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬、デキサメタゾン、オランザピンを使用。薬物相互作用も考慮が必要。
急性期・遅発期の悪心・嘔吐予防
制吐薬の使用:
急性期には5-HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬、デキサメタゾン。
遅発期にはNK1受容体拮抗薬とデキサメタゾン。
オランザピンは新たに保険適用され、急性期・遅発期に有効。改訂ポイント:
高度・中等度リスクに対するオランザピンの使用。
デキサメタゾンの投与期間短縮のエビデンス。
中等度リスクに対するNK1受容体拮抗薬の予防的投与。
高度催吐性リスクに対する療法:
出典:
ダイアグラム | がん診療ガイドライン | 日本癌治療学会
モル電気伝導率についての基礎的な概説
モル電気伝導率(Molar Conductivity)は、化学や物理学において特に溶液の電解質の伝導性を評価する際に重要な概念です。この値は溶液中のイオンがどれだけ効率的に電気を伝導するかを示す指標であり、以下のような特徴があります:
定義:
モル電気伝導率は、単位濃度(モル毎リットル)あたりの溶液の電気伝導率を意味します。
具体的には、モル電気伝導率Λ(ラムダ)は、溶液の電気伝導率κ(カッパ)、溶液の濃度c(モル毎リットル)、およびファラデー定数Fを用いて以下の式で表されます:λ = κ/c
単位:
モル電気伝導率の単位は通常 S cm²/molです。濃度依存性:
溶液が希釈されると、モル電気伝導率は概ね増加します。これは、イオン間の相互作用が減少し、自由に動いて電流を伝導しやすくなるためです。無限希釈(極めて低濃度)時のモル電気伝導率を限界モル電気伝導率(Λ₀)と言います。温度依存性:
温度が上がると、溶液の粘度が下がり、イオンの移動速度が増すため、モル電気伝導率は増加します。イオンの種類:
異なるイオンは異なるモル電気伝導率を持ちます。これはそのイオンの大きさ、電荷、そして溶媒中での移動度に依存します。
実際の応用
電解質の性質評価:
新しい電解質の開発や、既存の電解質の性能評価に用いられます。化学平衡の研究:
反応速度や平衡定数を調べるための手段として役立ちます。環境科学:
水質監視や汚染物質の検出においても重要な役割を果たします。
参考文献
Atkins, P., & de Paula, J. (2010). "Atkins' Physical Chemistry." Oxford University Press.
この書籍では、モル電気伝導率に関する基礎理論とその応用が詳述されています。
Bard, A. J., & Faulkner, L. R. (2001). "Electrochemical Methods: Fundamentals and Applications." Wiley.
電化学の基本から応用までを網羅し、モル電気伝導率の計算方法や実験手法についても触れています。
シスプラチンがDNAと相互作用するメカニズム
シスプラチンがDNAと相互作用するメカニズム、特に溶液中での動態に関する研究は、シスプラチンの抗がん効果を理解する上で重要です。
以下にその段階を詳しく説明します:
1. 溶液中でのシスプラチンの解離
塩化物イオンの解離:
シスプラチンは、[PtCl₂(NH₃)₂]という化学式を持ち、2つの塩化物イオンと2つのアンモニア分子がプラチナ中心に結合しています。生理的な条件下で、シスプラチンは塩化物イオンを失い、活性化します。このステップは溶液中の塩化物イオンの濃度やpHに依存します。
塩化物イオンが失われると、シスプラチンは[Pt(NH₃)₂(H₂O)₂]²⁺のようなアクア錯体に変わります。
2. DNAへの接近と結合
DNAへの結合:
活性化されたシスプラチンは、DNAの塩基、特にグアニン(G)のN7位置に結合します。この結合は、DNAの二本鎖の間に架橋(クロスリンク)を形成します。シスプラチンのプラチナ中心がDNAの隣接するグアニン塩基、または同じ鎖上の隣接しないグアニン塩基に結合する可能性があります。イントラストランド架橋:
同じDNA鎖内で、隣接するグアニン(GG)やアデニンとグアニン(AG)の間で形成されます。これが最も一般的なシスプラチン-DNA相互作用です。インターストランド架橋:
まれに、DNAの両鎖間で架橋が形成されることもあります。
3. DNAの構造変化
DNAの変形:
これらの架橋はDNAの構造を大きく変形させます。主に、DNAの二重らせんが曲がり、ねじれ、通常の形状から外れることで、DNAの複製、転写、修復といった基本的な機能が阻害されます。
4. 溶液中での動態
動的平衡:
シスプラチンは溶液中で塩化物イオンとの平衡状態にあります。塩化物イオンの濃度が低い環境では、シスプラチンは活性化されやすくなり、DNAと結合しやすくなります。
一方、高い塩化物濃度では、逆にシスプラチンは不活性化され、DNAへの結合が抑制されます。この動的平衡はシスプラチンの体内での分布と効果に影響を与えます。
5. 修飾後の効果
細胞応答:
DNAがシスプラチンによって修飾されると、細胞はこの損傷を認識し、修復を試みますが、成功しない場合、アポトーシス(プログラムされた細胞死)や他の細胞死経路が誘発されます。
参考文献
Reedijk, J. (2003). "New clues for platinum antitumor chemistry: Kinetically controlled metal binding to DNA." Proceedings of the National Academy of Sciences, 100(7), 3611-3616.
この論文はシスプラチンのDNAへの結合メカニズムと、溶液中での動態について詳細に述べています。
論点およびポイント
■■GPT4o
問 108-196|実務
論点| シスプラチン / 支持医療 / 輸液療法 / 制吐薬 / 投与スケジュール
ポイント|
シスプラチンは腎毒性が強いため、投与前(Day 8)に十分な輸液が必要。
シスプラチンの希釈には生理食塩水(0.9% NaCl)を用いる。5%ブドウ糖液は適さない。
高度催吐性抗がん剤であるため、制吐薬としてデキサメタゾン(副腎皮質ステロイド)とアプレピタント(NK1受容体拮抗薬)を投与する。
アプレピタント(NK1受容体拮抗薬)は強い悪心、嘔吐が生じる抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)の投与の場合に限り使用する。
他の制吐剤との併用において、通常、成人及び12歳以上の小児にはアプレピタントとして抗悪性腫瘍剤投与1日目は125mgを、2日目以降は80mgを1日1回、投与期間は3日間を目安として経口投与する。
セロトニン5-HT3受容体拮抗薬(パロノセトロンなど)はシスプラチン投与当日(Day 8)に投与する。
シスプラチンの投与量は体表面積(mg/m²)に基づいて算出する。体重(kg)ではない。

制吐療法 | がん診療ガイドライン | 日本癌治療学会
ダイアグラム
問 108-197|物理
論点| シスプラチン / アクア錯体 / モル電気伝導率 / 加水分解
ポイント|
シスプラチン(cis-diamminedichloroplatinum, CDDP)は水溶液中で加水分解を受ける。
加水分解によりCl⁻がH₂Oに置換され、アクア錯体([Pt(NH₃)₂(H₂O)₂]²⁺)を形成し、電離度が増加する。
このアクア錯体がDNAと共有結合を形成し、抗腫瘍作用を発揮する。
モル電気伝導率は、溶液中のイオンの移動度と濃度に依存し、加水分解が進行すると増加する。
他の選択肢(テガフール、ギメラシル、オテラシルカリウム、フルオロウラシル)は水溶液中で大きな電気伝導率の変化を示さない。
薬剤師国家試験 出題基準
出典: 薬剤師国家試験のページ |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
出題基準 000573951.pdf (mhlw.go.jp)
論点を整理します。
■■GPT4o
総合的な論点
問 108-196(実務)
SP療法(S-1+シスプラチン療法)は、進行胃がんの標準治療の一つであり、特にシスプラチンが持つ高度の腎毒性と高度の悪心・嘔吐リスクを管理することが重要となる。SP療法を適切に施行するためには、以下の論点が考えられる。
シスプラチンの希釈液
シスプラチンは水溶液中で加水分解を受けやすく、特に塩素イオン濃度の低い溶媒中ではその分解が促進されるため、通常は生理食塩水(0.9%NaCl)で希釈する。
5%ブドウ糖液はシスプラチンの加水分解を促す可能性があるため、不適切である。
制吐剤の投与タイミング
シスプラチンは高度催吐性薬剤(HEC: Highly Emetogenic Chemotherapy)に分類されるため、強力な制吐療法が必要。
通常、アプレピタント(NK1受容体拮抗薬)やデキサメタゾン(副腎皮質ステロイド)は投与前日(Day 7)から開始する。
セロトニン5-HT3受容体拮抗薬(グラニセトロンなど)は、シスプラチン投与時(Day 8)または直後に投与されるのが一般的。
投与翌日(Day 9)に開始するのは不適切。
シスプラチンの腎毒性管理
シスプラチンは腎毒性が強いため、投与前に十分な輸液を行い、尿量を確保することが必須。
通常、Day 8に十分な輸液を行うことで、腎障害のリスクを軽減する。
そのため、選択肢4「シスプラチン注射液の投与前(Day 8)に十分な量の輸液を投与する」は適切である。
シスプラチンの投与量算出
シスプラチンは体表面積(m²)に基づいて投与量を決定するため、体重(kg)のみから直接算出するのは不適切。
各選択肢の論点および解法へのアプローチ方法
選択肢 1. シスプラチン注射液は5%ブドウ糖注射液で希釈する。
論点:
シスプラチンの希釈液として適切なのは、生理食塩水(0.9%NaCl)もしくはブドウ糖-食塩液である。
5%ブドウ糖液では、シスプラチンの加水分解が促進され、薬効の低下や副作用リスクの増大につながる。
アプローチ方法:
日本医療薬学会や日本がん治療学会のガイドラインでは、シスプラチンの希釈液として生理食塩水が推奨されている。
したがって、この選択肢は不適切。
選択肢 2. デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム注射液、アプレピタントカプセルを投与するのはシスプラチン注射液の投与前日(Day 7)である。
論点:
シスプラチンは高度催吐性薬剤(HEC)であり、制吐剤の投与が重要。
アプレピタント(NK1受容体拮抗薬)は強い悪心、嘔吐が生じる抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)の投与の場合に限り使用する。
他の制吐剤との併用において、通常、成人及び12歳以上の小児にはアプレピタントとして抗悪性腫瘍剤投与1日目は125mgを、2日目以降は80mgを1日1回、投与期間は3日間を目安として経口投与する。
アプローチ方法:
日本癌治療学会の制吐療法ガイドラインでは、HECに対して「Day 1(投与当日)のみならず、Day 2以降の継続投与」も必要とされる。
投与前日(Day 7)は不適切。
選択肢 3. シスプラチン注射液の投与翌日(Day 9)に、セロトニン5-HT3受容体遮断薬を投与する。
論点:
5-HT3受容体遮断薬(パロノセトロンなど)は、急性嘔吐を防ぐためにシスプラチン投与当日(Day 8)に投与するのが一般的。
投与翌日(Day 9)に投与するのは、制吐効果の観点から遅すぎる。
アプローチ方法:
高度催吐性化学療法(HEC)では、5-HT3受容体拮抗薬をシスプラチン投与の30~60分前に投与することが推奨される。
したがって、この選択肢は不適切。

制吐療法 | がん診療ガイドライン | 日本癌治療学会
ダイアグラム
選択肢 4. シスプラチン注射液の投与前(Day 8)に十分な量の輸液を投与する。
論点:
シスプラチンは腎毒性が強いため、投与前に十分な輸液を行い、尿量を確保することが必須。
シスプラチンの投与前および投与後に十分な水分補給を行うことで、腎障害のリスクを軽減できる。
アプローチ方法:
日本がん治療学会のガイドラインでは、シスプラチン投与前に1~2 Lの生理食塩水を投与し、尿量を確保することが推奨されている。
したがって、この選択肢は適切(正答)。
選択肢 5. 体重からシスプラチン注射液の投与量を算出する。
論点:
シスプラチンの投与量は体表面積(m²)に基づいて算出するのが一般的であり、体重(kg)のみで算出するのは適切ではない。
アプローチ方法:
体表面積(BSA)は、以下のような公式で計算される: BSA(m2)=0.007184×身長(cm)^0.725×体重(kg)^0.425
本症例では、身長173 cm、体重63 kgなので、BSAは約1.75 m²。
シスプラチンは「60 mg/m²」で投与されるため、60 mg/m² × 1.75 m² = 105 mg が目安となる。
体重のみでは投与量が適正に計算できない。
結論:選択肢4が正答
引用文献
日本がん治療学会 編.「制吐療法ガイドライン」, 2020年版.
高度催吐性化学療法(HEC)に対する制吐療法の推奨事項を記載。
NK1受容体拮抗薬(アプレピタント)およびデキサメタゾンの投与タイミングについて言及。
5-HT3受容体拮抗薬の投与タイミングに関する記載。
日本医療薬学会.「がん薬物療法における支持療法」, 2021年版.
シスプラチンの腎毒性リスクと輸液療法の重要性について詳細に説明。
「シスプラチンの投与前(Day 8)に十分な輸液を行うこと」の根拠を提供。
日本癌治療学会.「化学療法における投与設計指針」, 2019年版.
シスプラチンの希釈液についての推奨(0.9%NaClが適切、5%ブドウ糖液は不適切)。
体表面積(BSA)を用いたシスプラチンの投与量計算の標準的な方法を説明。
問 108-197(物理)
本問題では、SP療法に用いられる薬物およびその代謝物の水溶液におけるモル電気伝導率の変化と抗がん作用の発現に着目している。これは、化学療法薬の水溶液中での挙動や作用機序に関する問題であり、特にシスプラチン(cisplatin, CDDP)の化学的性質が鍵となる。
モル電気伝導率とは?
モル電気伝導率(Λ)は、電解質溶液中で1モルのイオンが電気を運ぶ能力を示す指標であり、溶液中での電離や加水分解によって変化する。一般に、電離が進むとモル電気伝導率は増加する。
シスプラチンと電気伝導率の関係
シスプラチン(Pt(NH₃)₂Cl₂)は、水中で低い溶解度を持つが、徐々に加水分解され、イオンを放出する。
加水分解により、Cl⁻(塩化物イオン)が水中に遊離し、導電率が増加する。
この過程が進行すると、シスプラチンの活性種(アクア錯体)となり、抗がん作用を発揮する。
そのため、時間とともにモル電気伝導率が増大する薬剤は、シスプラチンである。
他の選択肢との比較
テガフール、ギメラシル、オテラシルカリウム、フルオロウラシルは、水中での加水分解による電気伝導率の増加が顕著ではない。
特に、フルオロウラシル(5-FU)は水溶性が高く電離しやすいが、時間とともに電気伝導率が増大する現象は見られない。
結論
本問題の正答は、シスプラチン(選択肢1)である。
各選択肢の論点および解法へのアプローチ方法
選択肢 1. シスプラチン
論点:
シスプラチン(cisplatin, CDDP: Pt(NH₃)₂Cl₂)は、水中でゆっくりと加水分解を受け、イオン種を生成する。
初期状態では電気伝導率が低いが、加水分解が進むにつれて塩化物イオン(Cl⁻)などが遊離し、時間とともにモル電気伝導率が増大する。
加水分解により生成されるアクア錯体([Pt(NH₃)₂(H₂O)₂]²⁺)が、細胞内でDNAに結合し抗がん作用を発揮する。
アプローチ方法:
シスプラチンの加水分解メカニズムを考慮する。
Cl⁻の置換反応(加水分解)に伴い電気伝導率が増加することを確認する。
抗がん作用は、このアクア錯体がDNAのグアニン残基と架橋結合することで発現する。
したがって、時間とともに電気伝導率が増大し、抗がん作用を示すのはシスプラチンである。
選択肢 2. テガフール
論点:
テガフール(tegafur)はプロドラッグであり、水溶液中で自発的に加水分解されることはない。
体内でCYP2A6による代謝を受け、活性体であるフルオロウラシル(5-FU)に変換される。
水中での電気伝導率の増大は起こらない。
アプローチ方法:
テガフールの代謝過程(CYP2A6による5-FUへの変換)を考慮する。
水中での電離性を評価し、モル電気伝導率が大きく変化しないことを確認する。
したがって、この選択肢は不適切。
選択肢 3. ギメラシル
論点:
ギメラシル(gimeracil)は、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)阻害薬であり、5-FUの分解を抑制するために配合されている。
水中での電離度は低く、モル電気伝導率が時間とともに増大する現象は見られない。
アプローチ方法:
ギメラシルの作用機序(DPD阻害)を理解し、水溶液中での挙動を評価する。
電気伝導率の変化が期待できないため、この選択肢は不適切。
選択肢 4. オテラシルカリウム
論点:
オテラシルカリウム(oteracil potassium)は、消化管での5-FUの活性を抑制するために配合された薬剤であり、抗がん作用は持たない。
水に溶解するとK⁺とオテラシル(oteracil)に電離するため、初期の電気伝導率は高いが、時間とともに変化する要因がない。
アプローチ方法:
オテラシルカリウムの電解質としての特性を考慮する。
初期からイオンが存在するため電気伝導率は一定であり、時間とともに増加する要因がないため、この選択肢は不適切。
選択肢 5. フルオロウラシル
論点:
フルオロウラシル(5-FU)は、水に溶解するとある程度の電離を示すが、時間とともに電気伝導率が増大する現象は見られない。
5-FUの抗がん作用はRNAやDNA合成の阻害によるものであり、電気伝導率の変化とは無関係。
アプローチ方法:
5-FUの水中での挙動を考慮し、時間依存的な導電率の変化がないことを確認する。
したがって、この選択肢は不適切。
結論:選択肢1(シスプラチン)が正答
引用文献
B. Rosenberg, L. VanCamp, T. Krigas. "Inhibition of Cell Division in Escherichia coli by Electrolysis Products from a Platinum Electrode." Nature, 1965.
シスプラチンの発見と、その抗がん作用のメカニズムについて記載。
シスプラチンの水溶液中での加水分解とイオン生成の過程を解説。
J. Reedijk. "Why does cisplatin reach guanine-N7 with competing S-donor ligands available in the cell?" Chemical Reviews, 1999.
シスプラチンの加水分解による活性種(アクア錯体)の形成とDNA結合機構を説明。
モル電気伝導率の変化がシスプラチンのイオン化過程と関連していることを示唆。
日本薬学会.「シスプラチンの物理化学的性質と抗腫瘍効果」, 医薬品化学, 2018.
シスプラチンの水溶液中での加水分解と導電率の関係を実験データとともに記載。
他の抗がん剤(5-FU、テガフール、ギメラシル、オテラシルカリウム)との比較を掲載。
厚生労働省.「シスプラチン注射液インタビューフォーム」, 2022年改訂版.
シスプラチンの溶解特性、加水分解、点滴時の安定性に関する情報を提供。
以上で、論点整理を終わります。
理解できたでしょうか?
大丈夫です。
完全攻略を目指せ!
はじめましょう。
薬剤師国家試験の薬学実践問題【複合問題】からシスプラチン / 支持医療 / 輸液療法 / 制吐療法 / アクア錯体 / モル電気伝導率を論点とした問題です。
なお、以下の解説は、著者(Yukiho Takizawa, PhD)がプロンプトを作成して、その対話に応答する形で GPT4o & Copilot 、Gemini 2、または Grok 2 が出力した文章であって、著者がすべての出力を校閲しています。
生成AIの製造元がはっきりと宣言しているように、生成AIは、その自然言語能力および取得している情報の現在の限界やプラットフォーム上のインターフェースのレイト制限などに起因して、間違った文章を作成してしまう場合があります。
疑問点に関しては、必要に応じて、ご自身でご確認をするようにしてください。
Here we go.
第108回薬剤師国家試験|薬学実践問題 /
問196-197
一般問題(薬学実践問題)
【物理・化学・生物、衛生/実務】
■複合問題|問 108-196-197
Q. 72歳男性。身長173cm、体重63kg。タール便があり、近医にて内視鏡検査を施行したところ、胃噴門部に腫瘤を認め総合病院の消化器外科に紹介となった。精査の結果、胃がんStageⅣ、肝転移及び多発リンパ節転移と診断され、胃がんの一次治療としてS-1*/シスプラチン療法(SP療法)を導入することになった。そこで自宅にてS-1の服用を開始し(Day|1)、Day|8よりシスプラチン注射液を投与するため投与前日(Day|7)に入院となった。
*:テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤
(処方)
Day|1~21|に内服テガフール20mg・ギメラシル・オテラシル配合口腔内崩壊錠1回3錠(1日6錠)1日2回|朝夕食後|21日分|
Day|8|にシスプラチン注射液60mg/m2:120分かけて点滴静注
実務
問 108-196|実務
Q. SP療法の施行に関する記述のうち、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
■選択肢
1. シスプラチン注射液は5%ブドウ糖注射液で希釈する。
2. デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム注射液、アプレピタントカプセルを投与するのはシスプラチン注射液の投与前日(Day|7)である。
3. シスプラチン注射液の投与翌日(Day|9)に、セロトニン5-HT1受容体遮断薬を投与する。
4. シスプラチン注射液の投与前(Day|8)に十分な量の輸液を投与する。
5. 体重からシスプラチン注射液の投与量を算出する。
Here:
松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問 108-196-197【物理・化学・生物、衛生/実務】論点:シスプラチン / 支持医療 / 輸液療法 / 制吐療法 / アクア錯体 / モル電気伝導率|matsunoya
物理・化学・生物
問 108-197|物理
Q. SP療法に用いられる薬物及びその代謝物を水溶液としたとき、水溶液のモル電気伝導率が時間の経過とともに増大し、抗がん作用を発現するのはどれか。1つ選べ。
■選択肢
1. シスプラチン
2. テガフール
3. ギメラシル
4. オテラシルカリウム
5. フルオロウラシル
Here:
松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問 108-196-197【物理・化学・生物、衛生/実務】論点:シスプラチン / 支持医療 / 輸液療法 / 制吐療法 / アクア錯体 / モル電気伝導率|matsunoya
■■GPT4o
■問 108-196|実務
■論点|
この問題の論点は、シスプラチンの適切な投与管理と支持療法の実施を特定することです。
■解説1|
シスプラチン注射液の投与前(Day|8)に十分な量の輸液を投与する。(選択肢4)[正しい]
シスプラチンは高度腎毒性を有する白金系抗がん剤であり、適切な輸液療法が腎障害の予防に不可欠です。
シスプラチンの腎毒性
シスプラチンは腎臓で排泄され、近位尿細管で蓄積しやすいため、腎障害(急性腎障害:AKI)を引き起こすリスクがあります。
これを防ぐためには、投与前後に十分な輸液を行い、尿量を確保することが重要です。
輸液療法の具体例
投与前(Day 8):十分な量の輸液(生理食塩水や5%ブドウ糖液+電解質)を500~1,000mL投与し、尿量を確保する。
投与後(Day 8以降):尿量が100mL/h以上を維持できるように輸液を継続する。
利尿薬の使用:必要に応じてフロセミド(ループ利尿薬)を投与することで、尿量を確保する。
輸液の目的
シスプラチンの腎排泄を促進し、蓄積を防ぐ
シスプラチンの高濃度滞留を避け、腎毒性を低減する
電解質バランスを維持し、低マグネシウム血症や低カリウム血症を防ぐ
■解説2|
シスプラチン投与時の腎障害対策について、さらに詳細な補足をします。
腎毒性の発生機序
シスプラチンは腎尿細管細胞に取り込まれ、酸化ストレスを引き起こし細胞障害を誘発します。
これにより、尿細管壊死や急性腎障害(AKI)を発症する可能性が高くなります。
輸液療法のエビデンス
生理食塩水を用いた十分な輸液は、シスプラチンの腎障害リスクを有意に低減することが報告されています。
尿量100mL/h以上を確保することが重要とされ、利尿薬の使用は過剰輸液による浮腫や心不全のリスクを考慮しながら実施されます。
輸液量の具体的な推奨
前投与:1,000mL以上(生理食塩水 or 電解質補正液)
投与中・後投与:合計2,000~3,000mLを投与
尿量の管理:24時間尿量が2,500mL以上となるよう調整
■結論|
正解は選択肢4:
シスプラチン注射液の投与前(Day 8)に十分な量の輸液を投与する。シスプラチンの腎毒性は投与量依存的に発現しやすいため、十分な輸液療法が必須である。
投与前後の輸液管理によって、シスプラチンの蓄積を防ぎ、安全な治療を行うことができる。
■補足|
シスプラチン注射液は5%ブドウ糖注射液で希釈する。(選択肢1)[誤り]
シスプラチンは塩化物イオン(Cl⁻)存在下で安定であるため、生理食塩水(0.9% NaCl)またはブドウ糖-食塩液で希釈する。
5%ブドウ糖注射液では不安定となり、加水分解が促進され、抗腫瘍活性が低下する。
デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム注射液、アプレピタントカプセルを投与するのはシスプラチン注射液の投与前日(Day|7)である。(選択肢2)[誤り]
NK1受容体拮抗薬(アプレピタント)とステロイド(デキサメタゾン)は、シスプラチンの高度催吐作用を抑制するために投与される。
通常、アプレピタントはDay 1(投与当日)から3日間使用する。投与前日(Day 7)に投与する必要はない。
シスプラチン注射液の投与翌日(Day|9)に、セロトニン5-HT1受容体遮断薬を投与する。(選択肢3)[誤り]
シスプラチンによる急性嘔吐(投与後24時間以内)を防ぐために、セロトニン5-HT3受容体拮抗薬(パロノセトロンなど)は投与当日(Day 8)に投与する。

制吐療法 | がん診療ガイドライン | 日本癌治療学会
ダイアグラム
体重からシスプラチン注射液の投与量を算出する。(選択肢5)[誤り]
シスプラチンの投与量は体表面積(mg/m²)に基づいて算出する。
本症例の場合、身長173cm・体重63kgから体表面積を求めると、約1.75m²となる。
シスプラチン 60 mg/m² × 1.75m² = 105 mg 投与が適切
体重と身長から体表面積を算出して投与量設定に用いる。
■問 108-197|物理
■論点|
この問題の論点は、シスプラチンの水溶液中での電気伝導率変化と抗がん活性発現機序を特定することです。
■解説1|
水溶液としたとき、水溶液のモル電気伝導率が時間の経過とともに増大し、抗がん作用を発現するのはどれか。
シスプラチン(選択肢1)[正しい]
シスプラチン(cisplatin, cis-diamminedichloroplatinum(II), CDDP)は、抗がん作用を発現する際にモル電気伝導率が時間とともに増加する性質を持ちます。
これは、シスプラチンが水中で加水分解し、電荷を持つイオン種を生成するためです。
1. シスプラチンの加水分解とイオン生成
シスプラチンはCl⁻濃度が低い環境(細胞内・低塩濃度の溶液中)では加水分解を受けやすい。
加水分解によってCl⁻がH₂Oに置換され、電荷を持つアクア錯体([Pt(NH₃)₂(H₂O)₂]²⁺)が生成される。
このアクア錯体は、DNAとの結合活性が高まり、抗がん作用を示す。
反応式(簡略化):
[Pt(NH₃)₂Cl₂] + H₂O → [Pt(NH₃)₂(H₂O)Cl]⁺ + Cl⁻
[Pt(NH₃)₂(H₂O)Cl]⁺ + H₂O → [Pt(NH₃)₂(H₂O)₂]²⁺ + Cl⁻

2. モル電気伝導率の増加
初期状態では、シスプラチンは電気的に中性であり、電解質としての寄与が小さい。
しかし、加水分解が進むと [Pt(NH₃)₂(H₂O)₂]²⁺ や Cl⁻が溶液中に増加し、電気伝導率が上昇する。
時間とともに電解質濃度が増すため、モル電気伝導率が増大する。
3. 抗がん活性発現機序との関係
生成したアクア錯体はDNAのグアニン残基と共有結合を形成し、DNA二重らせん構造を損傷する。
これにより、細胞周期の停止やアポトーシスが誘導され、抗がん作用が発現する。
この過程でイオン化が進むため、電気伝導率が上昇する。
■解説2|
シスプラチンの電気伝導率変化と関連する溶液環境因子について補足します。
1. pHと加水分解速度の関係
低塩濃度・低pH環境では加水分解が進みやすい(細胞内環境に類似)。
生理的条件(pH 7.4, NaCl 0.9%)では比較的安定だが、点滴後に細胞内へ移行すると加水分解が加速する。
2. シスプラチンの水和度と生体適応性
[Pt(NH₃)₂(H₂O)₂]²⁺ は親水性が高く、血液中で拡散しやすい。
しかし、静脈内投与時はCl⁻濃度が高いため、すぐには加水分解せず、腎臓で排泄される。
これが腎毒性の原因となるため、十分な輸液管理が必要となる(問108-196の内容と関連)。
■結論|
正解は選択肢1:「シスプラチン」
シスプラチンは時間とともに加水分解し、電荷を持つアクア錯体を生成するため、モル電気伝導率が増加する。
この変化と抗がん作用の発現は密接に関連している。
■補足|
テガフール(選択肢2)[誤り]
テガフールはフッ化ピリミジン系のプロドラッグであり、代謝によりフルオロウラシル(5-FU)を生成する。
水中での電離が少なく、時間とともに電気伝導率が大きく変化することはない。
ギメラシル(選択肢3)[誤り]
ギメラシルはジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)阻害剤であり、5-FUの代謝を抑制する。
溶液中での加水分解による電気伝導率の変化はほぼない。
オテラシルカリウム(選択肢4)[誤り]
オテラシルカリウムは、5-FUの腸管毒性を抑えるための薬剤。
水溶液中ではカリウム塩として存在し、イオン化するが、時間とともに電気伝導率が大きく変化することはない。
フルオロウラシル(選択肢5)[誤り]
フルオロウラシル(5-FU)は弱酸性の化合物であり、pHによってイオン化度が変わるものの、シスプラチンのように時間とともに電気伝導率が増大する性質はない。
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では、問題を解いてみましょう!
すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第108回薬剤師国家試験|薬学実践問題 /
問196-197
一般問題(薬学実践問題)
【物理・化学・生物、衛生/実務】
■複合問題|問 108-196-197
Q. 72歳男性。身長173cm、体重63kg。タール便があり、近医にて内視鏡検査を施行したところ、胃噴門部に腫瘤を認め総合病院の消化器外科に紹介となった。精査の結果、胃がんStageⅣ、肝転移及び多発リンパ節転移と診断され、胃がんの一次治療としてS-1*/シスプラチン療法(SP療法)を導入することになった。そこで自宅にてS-1の服用を開始し(Day|1)、Day|8よりシスプラチン注射液を投与するため投与前日(Day|7)に入院となった。
*:テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤
(処方)
Day|1~21|に内服テガフール20mg・ギメラシル・オテラシル配合口腔内崩壊錠1回3錠(1日6錠)1日2回|朝夕食後|21日分|
Day|8|にシスプラチン注射液60mg/m2:120分かけて点滴静注
実務
問 108-196|実務
Q. SP療法の施行に関する記述のうち、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
■選択肢
1. シスプラチン注射液は5%ブドウ糖注射液で希釈する。
2. デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム注射液、アプレピタントカプセルを投与するのはシスプラチン注射液の投与前日(Day|7)である。
3. シスプラチン注射液の投与翌日(Day|9)に、セロトニン5-HT1受容体遮断薬を投与する。
4. シスプラチン注射液の投与前(Day|8)に十分な量の輸液を投与する。
5. 体重からシスプラチン注射液の投与量を算出する。
Here:
松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問 108-196-197【物理・化学・生物、衛生/実務】論点:シスプラチン / 支持医療 / 輸液療法 / 制吐療法 / アクア錯体 / モル電気伝導率|matsunoya
物理・化学・生物
問 108-197|物理
Q. SP療法に用いられる薬物及びその代謝物を水溶液としたとき、水溶液のモル電気伝導率が時間の経過とともに増大し、抗がん作用を発現するのはどれか。1つ選べ。
■選択肢
1. シスプラチン
2. テガフール
3. ギメラシル
4. オテラシルカリウム
5. フルオロウラシル
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