松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問 106-256-257【薬理、薬剤/実務】論点:肺高血圧症 / 薬理作用 / フロセミド / エプレレノン / タダラフィル / ボセンタン / エポプロステノール / トルバプタン / アスパラギン酸カリウム / リオシグアト
第106回薬剤師国家試験|薬学実践問題 /
問256-257
一般問題(薬学実践問題)
【薬理、薬剤/実務】
■複合問題|問 106-256-257
Q. 24歳女性。身長156cm、体重40kg。以前より労作性の息切れを自覚していた。出産後に血圧低下、呼吸状態の悪化を来し、スクリーニングの結果、肺高血圧症と診断を受け、以下の処方で治療を開始した。
(処方)
フロセミド錠|20mg|1回1錠(1日1錠)|
エプレレノン錠|50mg|1回1錠(1日1錠)|
タダラフィル錠|20mg|1回|2錠(1日2錠)|
1日1回 朝食後 7日分|
ボセンタン錠|62.5mg|1回|2錠(1日4錠)|
1日2回 朝夕食後 7日分|
点滴静注|
エポプロステノール静注用1.5mg
(1.5mg/バイアル 3本)4.5mg
生理食塩液|300mL
流速|3mL/hで持続投与
薬理
問 106-256|薬理
Q. 薬物の作用機序に関する以下の記述のうち、処方薬のいずれにも該当しないのはどれか。1つ選べ。
■選択肢
1. 血管平滑筋において、ホスホジエステラーゼⅤを阻害し、細胞内サイクリックGMP(cGMP)の分解を抑制して、血管を拡張させる。
2. 集合管において、アルドステロン受容体を遮断してNa+/K+交換系を抑制し、利尿効果を示す。
3. エンドセリンETA受容体を選択的に遮断し、エンドセリン-1による血管収縮を抑制する。
4. プロスタノイドIP受容体を刺激し、細胞内サイクリックAMP(cAMP)産生を促進させて血管拡張作用と血小板凝集抑制作用を示す。
5. ヘンレ係蹄上行脚において、Na+-K+-2Cl-共輸送系を阻害し、対向流増幅系を抑制する。
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実務
問 106-257|実務
Q. 経過観察のため受診したところ、肺機能については改善を示しつつあるが、顔面や四肢のむくみなど未だ改善が見られない症状を認めた。さらに、生化学検査のうち血清カリウム値が4.1mEq/Lから3.0mEq/Lに低下していたことから、薬剤師が医師から処方について相談された。以下のうち、最も適切な提案内容はどれか。1つ選べ。
■選択肢
1. トルバプタン錠の追加
2. エポプロステノール静注用の増量
3. フロセミド錠の増量
4. アスパラギン酸カリウム錠の追加
5. リオシグアト錠の追加
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こんにちは!薬学生の皆さん。
Mats & BLNtです。
matsunoya_note から、薬剤師国家試験の論点解説をお届けします。
苦手意識がある人も、この機会に、【薬理、薬剤/実務】の複合問題を一緒に完全攻略しよう!
今回は、第106回薬剤師国家試験|薬学実践問題 / 問256-257、論点:肺高血圧症 / 薬理作用 / フロセミド / エプレレノン / タダラフィル / ボセンタン / エポプロステノール / トルバプタン / アスパラギン酸カリウム / リオシグアトを徹底解説します。
薬剤師国家試験対策ノート NOTE ver.
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問 106-256-257【薬理、薬剤/実務】論点:肺高血圧症 / 薬理作用 / フロセミド / エプレレノン / タダラフィル / ボセンタン / エポプロステノール / トルバプタン / アスパラギン酸カリウム / リオシグアト|matsunoya
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このコンテンツの制作者|
滝沢 幸穂 Yukiho Takizawa, PhD
https://www.facebook.com/Yukiho.Takizawa
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設問へのアプローチ|
薬学実践問題は原本で解いてみることをおすすめします。
まずは、複合問題や実務の問題の構成に慣れることが必要だからです。
薬学実践問題は薬剤師国家試験2日目の①、②、③ の3部構成です。
今回の論点解説では2日目の②を取り上げています。
厚生労働省|過去の試験問題👇
第109回(令和6年2月17日、2月18日実施)
第108回(令和5年2月18日、2月19日実施)
第107回(令和4年2月19日、2月20日実施)
第106回(令和3年2月20日、2月21日実施)
第106回薬剤師国家試験 問256-257(問106-256-257)では、肺高血圧症に関する知識を薬理および実務のそれぞれの科目の視点から複合問題として問われました。
複合問題は、各問題に共通の冒頭文とそれぞれの科目別の連問で構成されます。
冒頭文は、問題によっては必要がない情報の場合もあるため、最初に読まずに、連問すべてと選択肢に目を通してから、必要に応じて情報を取得するために読むようにすると、時間のロスが防げます。
1問、2分30秒で解答できればよいので、いつも通り落ち着いて一問ずつ別々に解けば大丈夫です。
出題範囲は、それぞれの科目別の出題範囲に準じています。
連問と言ってもめったに連動した問題は出ないので、平常心で取り組んでください。
💡ワンポイント
複合問題ですが、問106-256-257を解くうえで必要な情報は、黄色い線で示した部分です。
それ以外の情報取得は必要がないです。読んでいると時間のロスに繋がります。

問106-256および問106-257は、肺高血圧症の薬物治療に関する記述の正誤を問う問題です。
医療用医薬品添付文書の理解が必要です。
冒頭文で必要な情報は、
診断(肺高血圧症)
処方(5種類の医薬品 ※下記参照)
です。
肺高血圧症の適応がある医薬品(エポプロステノール、リオシグアト、ボセンタン)の薬理に関する作用機序が論点とされた問題でした。
また、それ以外に利尿薬(フロセミド、エプレレノン)や血管平滑筋弛緩薬(タダラフィル)が併用され、その薬理に関する作用機序が論点とされました。
後述します。
肺高血圧症の薬物治療に関しては、基本的な知識について復習にまとめました。
原本重視の薬学生の皆さんには、🫛豆知識も役に立ちます。
医療用医薬品添付文書等およびガイドラインについて紹介しました。
上記の太字を選択して Ctrl + F でジャンプできます。
下記に示した表は「肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)」における重症度別の治療薬のエビデンスレベルです。
表11に示されたとおり、下記の薬理作用を有する医薬品が使用されます。
どれも、肺血管拡張薬としての効果を目標としています。
肺高血圧症は希少疾病で、エポプロステノール、リオシグアトなどはオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)として開発されていますが、この機会に、それぞれの治療薬の薬理作用を覚えてしまうのもよいかもしれません。
プロスタサイクリンとその誘導体
※ プロスタサイクリン経路エンドセリン受容体拮抗薬(endothelin receptor antagonist; ERA)
※ エンドセリン経路ホスホジエステ ラーゼ 5(phosphodiesterase type5; PDE5)阻害薬
※ NO 系グアニル酸シクラーゼ刺激剤
※ NO 系

後述しますが、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の主要な経路と薬剤の作用機序をインタビューフォーム「マシテンタン・タダラフィル」から引用して説明します。

製造販売元(輸入)/ヤンセンファーマ株式会社販売提携先/日本新薬株式会社
cAMP:サイクリックアデノシン1リン酸、cGMP:サイクリックグアノシン1リン酸、ET:エンドセリン、ERA:エンドセリン受容体拮抗薬、 NO:一酸化窒素、PDE5:ホスホジエステラーゼ5、PGI2 :プロスタサイクリン、sGC:可溶性グアニル酸シクラーゼ
Dhoble S, et al.: Int J Pharm. 2022; 621: 121792より改変
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
肺動脈性肺高血圧症(PAH)の主要な経路と薬剤の作用機序
以下は、図からの書き起こしです。
■■Copilot
1. ET経路(エンドセリン経路)
エンドセリン-1(ET-1)は血管収縮を引き起こす強力なペプチドです。ET-1はプレプロエンドセリンからプロエンドセリンに変換され、さらにET-1に加工されます。ET-1はET_AとET_B受容体に結合し、血管収縮を引き起こします。
ERA(エンドセリン受容体拮抗薬)
マシテンタン、ボセンタン、アンブリセンタン:
ET受容体拮抗、血管収縮抑制
2. NO経路(一酸化窒素経路)
L-アルギニンはL-シトルリンに変換され、さらに一酸化窒素(NO)を生成します。NOは可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)を活性化し、サイクリックGMP(cGMP)の生成を促進します。cGMPは血管拡張作用を持ちます。
sGC刺激薬
リオシグアト:
sGCを直接刺激し、NO経路を介さずにcGMPの生成を増加
PDE5阻害剤
タダラフィル、シルデナフィル:
PDE5を阻害し、cGMPの分解を抑制して血管拡張促進
3. プロスタサイクリン経路
アラキドン酸はプロスタグランジンに変換され、さらにプロスタサイクリン(PGI_2)を生成します。PGI_2はcAMPの生成を促進し、血管拡張作用を持ちます。
選択的プロスタサイクリン受容体作動薬
セレキシパグ:
PGI_2受容体に作用し、cAMPの生成を増加
PGI_2誘導体製剤
トレプロスチニル、イロプロスト、エポプロステノール、ベラプロスト:
直接的にPGI_2受容体を刺激し、cAMP生成を促進
覚えておくべきステム
医薬品の薬理作用機序を、医薬品名から特定する際に、場合によってはおすすめな方法にステムで識別する方法があります。
今回出題された医薬品のステムに関しては、基本的にインタビューフォームの名称に関する項目の記載から引用したので信頼しうる情報です。
※ 医薬品名のリンクは、それぞれの医薬品のPMDA 医療用医薬品添付文書等のURL です。
フロセミド(Furosemide)
Loop diuretics(ループ利尿薬):-semide
例:フロセミド型の利尿薬、フロセミド、アゾセミド、トラセミド
※ ヘンレ係蹄の上行脚においてNa⁺-K⁺-2Cl⁻共輸送体を阻害し、ナトリウムと水の再吸収を抑制することで利尿作用を発揮。
類薬:
ループ利尿剤:アゾセミド、トラセミド
チアジド系利尿剤:ヒドロクロロチアジド、トリクロルメチアジド
利尿薬、クロロチアジド誘導体:-tizide(thiazide)
※ 腎遠位曲尿細管における Na+と Cl-の再吸収を抑制し、水の排泄を促進させる。降圧作用は、初期には循環血流量の低下により、長期的には末梢血管の拡張によると考えられている。
非チアジド系:メフルシド、トリパミド、インダパミドなど

インタビューフォーム 製造販売元/大塚製薬株式会社
エプレレノン(Eplerenone)
Aldosterone antagonists(アルドステロン拮抗薬):-renone
例:アルドステロン拮抗薬、スピロノラクトン誘導体、エプレレノン
※ 遠位尿細管・集合管のミネラルコルチコイド受容体を遮断し、ナトリウムの再吸収を抑制するとともにカリウム排泄を抑制。
類薬:
K 保持性利尿薬:スピロノラクトン、カンレノ酸カリウム、トリアムテレン

出典:インタビューフォーム 製造販売元/大塚製薬株式会社
タダラフィル(Tadalafil)
Phosphodiesterase type 5 inhibitors(PDE5阻害薬):-afil
例:血管拡張作用を持つホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害剤、タダラフィル、シルデナフィルクエン酸塩、バルデナフィル塩酸塩水和物
※ ホスホジエステラーゼ5(PDE5)を阻害することで海綿体のcGMP濃度を上昇させ、血管平滑筋を弛緩させる。
ボセンタン水和物(Bosentan)
Endothelin receptor antagonists(エンドセリン受容体拮抗薬):-entan
例:ボセンタン水和物、マシテンタン、アンブリセンタン
※ エンドセリンA(ETA)およびエンドセリンB(ETB)受容体を遮断し、血管収縮を抑制して血圧を低下させる。
※ ただし、アンブリセンタンは、選択的ETA受容体拮抗薬。
※ エンドセリン-1(ET-1)は神経ホルモンであり、その作用は内皮細胞のETB 受容体及び血管平滑筋のETA 並びにETB 受容体との結合により発揮される。肺高血圧症患者の血漿と肺組織 でET-1濃度が上昇しており、このことは、ET-1が肺高血圧症の病因的な役割を果たしていることを示唆している。
エポプロステノールナトリウム(Epoprostenol)
Prostacyclin analogs(プロスタサイクリン誘導体):-prost
例:プロスタグランジン類、エポプロステノールナトリウム、トレプロスチニル、ベラプロストナトリウム
※ プロスタサイクリン(PGI₂)の合成アナログであり、血管拡張作用および血小板凝集抑制作用を有する。
PGI2は血管平滑筋及び血小板の特異的受容体に結合し、細胞内のcAMP産生を促進することにより血管拡張作用及び血小板凝集抑制作用を発現する。
類薬:
プロスタグランジン類縁体(プロスタノイド)
プロスタグランジン(PG)、トロンボキサン(TX)、ロイコトリエン(LT)
トルバプタン(Tolvaptan)
Vasopressin receptor antagonists(バソプレシン受容体拮抗薬):-vaptan
例:バソプレシン受容体拮抗剤、トルバプタン、モザバプタン塩酸塩
※ バソプレシンV2受容体を選択的に遮断し、腎集合管での水の再吸収を抑制することで水利尿作用を発揮。
L-アスパラギン酸カリウム(Potassium aspartate)
Mineral supplements(ミネラル補充薬)(Stemなし)
例:アスパラギン酸カリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム
※ 体内のカリウム補充を目的とし、主に低カリウム血症の予防や治療に使用。
リオシグアト(Riociguat)
Soluble guanylate cyclase stimulators(可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬):-ciguat
例:グアニル酸シクラーゼ活性化薬及び刺激薬、リオシグアト、ベルイシグアト
※ 血管平滑筋細胞において、NO非依存的にsGCを直接刺激する作用とNOに対するsGCの感受性を高める作用によりcGMP濃度を増加させる。
※ 可溶性グアニル酸シクラーゼ(soluble guanylate cyclase:sGC)は、血管内皮細胞由来の一酸化窒素(NO)に対する受容体であり、心肺系における重要な酵素である。このNO-sGC経路の活性化により、血管緊張、細胞増殖、線維化及び炎症など細胞機能の調節に重要な役割を果たすシグナル伝達分子である環状グアノシン一リン酸(cGMP)の産生が促進される。
肺高血圧症の病態生理には、NO産生の減少及び利用率の低下、並びに組織中のcGMP濃度の低下を伴う内皮細胞機能障害がある。
従って、sGC刺激剤は、種々の急性及び慢性肺血管障害により機能低下したNO-sGC-cGMP経路を回復させることでcGMP濃度を増加させ、治療効果を示す可能 性がある。また、sGC刺激剤は、NO産生が重度に低下又は欠如した場合にも効果を発揮すると考えられる。
⏱️時間にゆとりがない人は、論点およびポイントから読んでくださいね。
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少し解説💁
問 106-256|薬理
エンドセリンETA受容体を選択的に遮断し、エンドセリン-1による血管収縮を抑制する。[誤り]🤔
この選択肢では、エンドセリン受容体拮抗薬(endothelin receptor antagonist; ERA)の薬効薬理に関する作用機序が論点とされました。
ガイドラインによれば、ERAには、ボセンタン水和物、マシテンタン、アンブリセンタンがあります。
ボセンタン水和物およびマシテンタンは、エンドセリン受容体ETA とETB の両受容体に非選択的に結合する拮抗薬です。
アンブリセンタンは、選択的ETA受容体拮抗薬です。
※ エンドセリン-1(ET-1)は神経ホルモンであり、その作用は内皮細胞のETB 受容体及び血管平滑筋のETA 並びにETB受容体との結合により発揮される。肺高血圧症患者の血漿と肺組織 でET-1濃度が上昇しており、このことは、ET-1が肺高血圧症の病因的な役割を果たしていることを示唆している。
ボセンタン水和物のエンドセリン受容体拮抗の選択性を論点とすることが、薬剤師国家試験の国家資格に相応しい資質を検出することの意味に合致しているかと言えば、まったくもって、本質からずれていると言わざるを得ないでしょう。
ERAで注目すべき論点は、むしろ、相互作用です。
アンブリセンタンは、他の2つの医薬品よりも相互作用が少なく、併用禁忌の医薬品がないことが特徴です。
ボセンタンに関しては、タダラフィルとの併用注意の相互作用があります。
以下は、タダラフィルの医療用医薬品添付文書からの抜粋です。
ボセンタン [16.7.2 参照]
ボセンタン(125mg/1日2回投与)との10日間併用により、タダラフィル(40mg)の10日目におけるAUC及びCmaxが初日と比べてそれぞれ41.5%及び26.6%低下するとの報告がある。タダラフィルによるボセンタンのAUC及びCmaxに対する影響はみられなかった。
CYP3A4誘導によるクリアランスの増加によりタダラフィルの血漿中濃度が低下する。

そして、最も大事なことは、治療におけるエビデンスの蓄積によって、どのERAのエビデンスレベルが上なのかということです。
患者での有効性に関するエビデンスレベルが重要なのです。
エンドセリン受容体拮抗の選択性は、現時点の科学的な見地では、治療上、議論する必要がない論点です。
患者の数年以内の生死が関わる疾病の薬物治療において、論点の「無意味さ」を意識して、ゼロ点合格のベクトルを持たせる意図👽で、この選択肢の記述を作成しているとしたら、本来の薬学的考察のあるべき姿からしたら、相当悪質です。
こうした問題は、草案の時点で、レビュワーが責任者に差し戻して、指導と修正の指示を出すプロセスが必要です。
でも、この機会にERAについての知識を覚えておくと、何かの時に役立つ。
薬物治療学的には下記のマシテンタン・タダラフィルのインタビューフォームの説明がわかりやすいので紹介します。
PMDA 医療用医薬品添付文書等 マシテンタン・タダラフィル
製造販売元(輸入)/ヤンセンファーマ株式会社
販売提携先/日本新薬株式会社 ユバンシ配合錠
インタビューフォーム ユバンシ配合錠
患者向医薬品ガイド ユバンシ配合錠
以下一部抜粋します。
PAHの病態形成に関与する主な物質と経路及びマシテンタンとタダラフィルの作用機序
PHにおける肺動脈の血管収縮による血流障害

製造販売元(輸入)/ヤンセンファーマ株式会社販売提携先/日本新薬株式会社

cAMP:サイクリックアデノシン1リン酸、cGMP:サイクリックグアノシン1リン酸、ET:エンドセリン、ERA:エンドセリン受容体拮抗薬、 NO:一酸化窒素、PDE5:ホスホジエステラーゼ5、PGI2 :プロスタサイクリン、sGC:可溶性グアニル酸シクラーゼ
Dhoble S, et al.: Int J Pharm. 2022; 621: 121792より改変
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
Ⅵ.薬効薬理に関する項目
1. 薬理学的に関連ある化合物又は化合物群
エンドセリン受容体拮抗薬:
マシテンタン、ボセンタン水和物、アンブリセンタン
ホスホジエステラーゼ5阻害剤:
タダラフィル、シルデナフィルクエン酸塩
2. 薬理作用
(1)作用部位・作用機序8,9)
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は肺血管圧の上昇を特徴とする慢性疾患である。
PAHの治療標的には、エンドセリン(ET)、一酸化窒素(NO)及 びプロスタサイクリン経路が含まれる。
これらの経路のうち、マシテンタンはET経路を、タダラフィルはNO経路を標的とする。
[マシテンタン]
マシテンタンは、血管収縮、線維化、増殖、肥大及び炎症等のさまざまな有害な反応に関連するET-1のETA及びETB 受容体への結合を阻害するERAである。
PAH等の病態では、局所のET系が亢進し、血管肥厚や臓器障害に関与している。
マシテンタンはヒト肺動脈平滑筋細胞のET受容体に高い親和性を示し、ET受容体を持続的に占有することにより、血管収縮及び平滑筋細胞増殖をもたらすETを介したセカンドメッセンジャー系の活性化を抑制する。
[タダラフィル]
タダラフィルは、サイクリックグアノシン1リン酸(cGMP)の分解酵素であるPDE5の選択的な阻害薬である。
PAHは血管内皮におけるNOの放出障害が関連しており、その結果、肺血管平滑筋内のcGMP濃度が低下している。PDE5は肺 血管系における主要なPDEの一種であり、タダラフィルによるPDE5の阻害はcGMPの濃度を増加させ、その結果、肺血管平滑筋細胞の弛緩及び肺血管床の血管拡張を引き起こす。
1. 開発の経緯
ユバンシ®配合錠(以下、本剤)は、マシテンタン10mgとタダラフィル40mgの2種類の有効成分を含有する、ヤンセン・リ サーチ&ディベロップメント(Janssen Research & Development, LLC)が開発した配合剤である。
マシテンタンはエンドセリン受容体[エンドセリンA(ETA)及びエンドセリンB(ETB)]に対する結合親和性及び持続的な結合阻害作用を示すエンドセリン受容体拮抗薬(ERA)、タダラフィルは一酸化窒素(NO)経路で作用する選択的ホスホジエステラーゼ5 (PDE5)阻害剤で、いずれも本邦において肺動脈性肺高血圧症(PAH)に対する経口治療薬として承認されている(タダラフィルは20mg錠のみ)。
近年、さまざまな肺血管拡張薬が開発され、作用機序の異なる薬剤の併用療法に関するエビデンスが蓄積されて きたことから、本邦の肺高血圧症治療ガイドライン(日本循環器学会等、2017年改訂版、2021年12月23日更新)1)で は低リスク患者[ニューヨーク心臓協会(NYHA)/世界保健機関(WHO)機能分類Ⅰ〜Ⅱ度]の一部と、中リスク患者 (NYHA/WHO機能分類Ⅱ〜Ⅲ度)、高リスク患者(NYHA/WHO機能分類Ⅳ度)には2剤又は3剤を組み合わせた初期併用療法が推奨されており、欧州心臓病学会(ESC)/欧州呼吸器学会(ERS)ガイドライン20222)においても、「心肺疾患を有さない特発性PAH、遺伝性PAH、薬剤誘発性PAHに対し、マシテンタン及びタダラフィルの初期併用治療」がクラスIとして推奨されている※1。
マシテンタン及びタダラフィルを含有成分とする配合剤の導入は、服薬錠数を削減し、処方を単純化することで利便性が向上する可能性があることから、本剤の開発が進められた。
※1 初期併用療法においては、各薬剤の忍容性を確認してから慎重に併用を開始することとされている3)。
なお、本剤の使用は、原則、マシテンタン10mg1日1回及びタダラフィル40mg1日1回による併用治療を受けている場合に検討すること。
本剤は、2021年10月にカナダにおいてマシテンタン10mg/タダラフィル40mg配合錠の製造販売承認を取得している※2。
※2 カナダにおける効能又は効果は「WHO機能分類クラスⅡ又はⅢの肺動脈性肺高血圧症(PAH:WHOグループ1)患者のう ち、特発性、遺伝性又は結合組織病もしくは先天性心疾患を合併するPAH患者の罹病率を低下させるための長期治療」、 国内で承認を得ている本剤の効能又は効果は「肺動脈性肺高血圧症」である。
海外第Ⅰ相試験(67896062PAH1006試験)において、マシテンタン10mg及びタダラフィル40mgの各単剤の併用投与と本剤が生物学的に同等であることが確認され、日本人も参加した国際共同第Ⅲ相試験[AC-077A301試験(A DUE試験)]において、PAH患者に対する本剤の有効性及び安全性が検討された。
以上の臨床試験成績をもとに製造販売承認申請を行い、2024年9月24日に「肺動脈性肺高血圧症」を効能又は効果として承認された。
2. 製品の治療学的特性
1. 本剤は、エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)であるマシテンタンと選択的ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害剤で あるタダラフィルを含有する肺動脈性肺高血圧症の治療薬として、日本で初めて承認された経口配合剤である。 ( Ⅰ. 1 、Ⅵ . 2 )
2. マシテンタン10mg及びタダラフィル40mgを含有する配合錠で、1日1回1錠を服用する。(Ⅴ.3)
注) 本剤の肺動脈性肺高血圧症に対して承認されている用法及び用量は、「通常、成人には1日1回1錠(マシテンタンとして 10mg及びタダラフィルとして40mg)を経口投与する。」である。
3. 未治療及び既治療のPAH患者を対象に、本剤とマシテンタン10mg単剤並びにタダラフィル40mg単剤それぞれの有効性を比較した国際共同第Ⅲ相試験:AC-077A301試験(A DUE試験)において、各単剤群に対する本剤の 優越性が検証された。
・ 主要評価項目である二重盲検期終了時(投与16週後)における肺血管抵抗(PVR)のベースラインからの変化 比が、本剤群でマシテンタン単剤群と比較し29%の減少[調整幾何平均比:0.71、調整済み繰り返し信頼限界 (CL):0.61〜0.82、調整P<0.0001、共分散分析(ANCOVA)](未治療及びERA既治療患者集団)、タダラフィ ル単剤群と比較し28%の減少(調整幾何平均比:0.72、調整済み繰り返しCL:0.64〜0.80、調整P<0.0001、 ANCOVA)(未治療及びPDE5阻害剤既治療患者集団)を示し、各単剤群と比較し本剤群でPVR変化比が有 意に改善することが認められた(検証的解析結果)。(Ⅴ.5.(4)1)) 1 2
4. 重大な副作用として、貧血、過敏症があらわれることがある。主な副作用として(5%以上)、頭痛、浮腫/体液貯留が 報告されている。(Ⅷ.8.(1)、Ⅷ.8.(2))
詳細は、電子添文の副作用の項及び臨床成績の項の安全性の結果を参照すること。
3. 製品の製剤学的特性
本剤はマシテンタン10mgとタダラフィル40mgを配合したフィルムコーティング錠である。(Ⅳ.1、Ⅳ.2)
問 106-257|実務
リオシグアト錠の追加(選択肢5)[誤り]🤔
リオシグアトは、血管平滑筋細胞において、NO非依存的にsGCを直接刺激する作用とNOに対するsGCの感受性を高める作用によりcGMP濃度を増加させ、肺高血圧症を改善する可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激剤で、外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症および肺動脈性肺高血圧症に適応があります。
今回の問題では、顔面や四肢のむくみと低カリウム血症の改善を目標とした処方の変更が論点なのでリオシグアトが選択肢から外れるというストーリーが主張としてありますが、もう一つ、決定打となる要因として、相互作用による併用禁忌があります。せっかくなので覚えておきましょう。
今回の処方薬の一つであるタダラフィルはリオシグアトとは併用禁忌です。
相互作用については、🫛豆知識②でも後述します。
リオシグアトの併用禁忌
リオシグアトは主にCYP1A1、CYP2C8、CYP2J2およびCYP3Aによって代謝され、P-糖タンパク質(P-gp)および乳癌耐性タンパク質(BCRP)の基質であるため、これらを阻害または誘導する薬剤と相互作用を起こす可能性があります。以下の薬剤と併用すると重大な影響を及ぼすため、併用禁忌とされています。
1. 硝酸剤およびNO供与剤
(例:ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド、ニコランジル)
影響:
リオシグアト単回投与後にニトログリセリンを舌下投与した場合、有意な収縮期血圧の低下が確認されている。機序:
リオシグアトと硝酸剤はともに細胞内cGMP濃度を増加させるため、降圧作用が増強され、過度な血圧低下を引き起こす可能性がある。
2. PDE5阻害剤
(例:シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル)
影響:
症候性低血圧を引き起こす可能性がある。機序:
PDE5阻害剤はホスホジエステラーゼ5(PDE5)を阻害し、cGMP分解を抑制する。リオシグアトは可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)を刺激し、cGMP産生を促進する。これにより、cGMP濃度が過剰に上昇し、相加的な降圧作用が発現する。
3. アゾール系抗真菌剤
(例:イトラコナゾール、ボリコナゾール)
影響:
リオシグアトのAUC(血中濃度時間曲線下面積)が150%増加し、Cmax(最高血中濃度)が46%上昇する。また、消失半減期が延長し、クリアランスが低下する。機序:
アゾール系抗真菌剤はCYP1A1、CYP3A、およびP-gp/BCRPを阻害し、リオシグアトの代謝および排泄を阻害するため、血中濃度が上昇し、薬物毒性のリスクが高まる。
4. 可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬
(例:ベルイシグアト)
影響: 症候性低血圧を引き起こすおそれがある。
機序: 両者はともにsGCを刺激し、cGMP濃度を増加させるため、降圧作用が過度に強まり、危険な低血圧を引き起こす可能性がある。
総括
リオシグアトは、cGMPシグナルを増強する作用を持つため、cGMPを介して血管拡張作用を示す他の薬剤(硝酸剤、PDE5阻害剤、sGC刺激薬)と併用すると過度な血圧低下を引き起こすリスクがある。また、CYP3A/P-gp/BCRPを阻害する薬剤(アゾール系抗真菌剤)はリオシグアトの血中濃度を上昇させ、副作用リスクを高めるため、併用禁忌となっている。
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🫛豆知識① 医療用医薬品添付文書等
医薬品添付文書等を一読しておくと応用力がつきます。
エポプロステノールナトリウム
薬効分類名:プロスタグランジンI2製剤
以下、インタビューフォームから一部抜粋します。
1.開発の経緯
エポプロステノール(プロスタサイクリン:PGI2)は、1976年に英国のウエルカム研究所(現グラクソ・ス ミスクライン社)のJ.R. Vaneらにより発見された強力な血小板凝集抑制作用及び血管拡張作用を有する内因性生理活性物質である。Vaneらは、一連のプロスタグランジンに関する業績により1982年にノーベル医学生理学賞を受賞した。
PGI2の合成と化学構造の同定は米国アップジョン社等により行なわれ、医薬品としての開発はアップジョン社とウエルカム社の共同で進められたが、臨床試験以降はウエルカム社のみで開発を進めた。なお、本剤(エポプロステノールナトリウム)の原薬はアップジョン社製造であり、外国においては同社よりドラッグマスターファイル*に登録されている。 当初はその薬理作用から全身投与による血栓形成防止作用が期待されたが、腎透析時の体外循環における抗血液凝固剤という限られた効能でウエルカム社(現グラクソ・スミスクライン社)が 1981 年に英国で承認 を取得し発売した。
肺動脈性肺高血圧症は、その成因によって原発性肺高血圧症(PPH ; primary pulmonary hypertension)**と特定の疾患に伴う肺高血圧症に大別されるが、いずれも予後は極めて悪く、確定診断後の平均生存期間は2~3 年とされていた。
海外において1980年代からPPH患者への本剤の投与が試みられるようになり、1980年代 後半から90年代前半にかけて臨床試験が実施され、長期投与により良好な成績が得られた。
当時は、PPHの根本的な治療法は心肺移植又は肺移植であるとされ、十分な臨床効果を得られる医薬品はなかった。
米国においては1985年にオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の指定を受け、本剤をPPH治 療薬として申請し、1995年9月に承認され、英国においては1998年6月にPPH治療の効能が追加申請された。その後、北米にて実施された中等度~重度の強皮症関連病態に伴う肺高血圧症を対象とした試験におい ても、PPH と同様の結果を得られたことから、米国では1998年12月に効能追加の申請を行い、2000 年4 月に強皮症関連病態に伴う肺高血圧症治療薬として承認された。
一方、国内においても1993年11月より1995年3月にかけ計27施設、20例のPPH患者を対象に臨床試験 を実施し、本剤の有効性と安全性を検討した。その後に一部の非臨床的検討を追加実施した。本剤は、1994 年7月1日にオーファンドラッグの指定を受けたのち、1998年5月、PPH治療薬として申請し、1999年1 月に承認され、同年4月発売となった。
さらに、2001年9月より2003年3月にかけ計17施設、15例の膠原病に伴う肺高血圧症***患者を対象に臨床試験を実施し、本剤の有効性と安全性を検討した。
2002年6月 17 日に肺動脈性肺高血圧症(PPHを除く)オーファンドラッグの指定を受けたのち、2003年4月肺動脈性肺高血圧症として申請し、2004年6月に承認された。 また、市販後の調査に基づき、2011年12月に再審査結果が公表され、有用性が再確認された。
* ドラッグマスターファイル 原薬(中間体含む)、医薬品添加物、包装材料等の製造業者から審査当局へ提出・登録されたもので、審査当局 が治験新薬申請、新薬承認申請等の審査時に参照する文書。この制度は、原薬等の供給メーカーが所有する機密 情報を審査当局に登録し、製剤のみの承認申請者にこれを一切公開することなく、登録者の許可により審査当局 の参照を許す制度である。
** 肺高血圧症治療ガイドラインに準拠した疾患名は、特発性又は遺伝性肺動脈性肺高血圧症である。
*** 肺高血圧症治療ガイドラインに準拠した疾患名は、結合組織病に伴う肺動脈性肺高血圧症である。
Ⅵ.薬効薬理に関する項目
1.薬理学的に関連ある化合物又は化合物群
プロスタグランジン類縁体(プロスタノイド)
プロスタグランジン(PG)、トロンボキサン(TX)、ロイコトリエン(LT)
2.薬理作用
(1)作用部位・作用機序
PGI2は血管平滑筋及び血小板の特異的受容体に結合し、細胞内のcAMP産生を促進することにより血管拡張作用及び血小板凝集抑制作用を発現する8,9)。
トルバプタン 薬効分類名:V2-受容体拮抗剤
以下、インタビューフォームから一部抜粋します。
1.警告 〈心不全及び肝硬変における体液貯留〉
1.1 本剤投与により、急激な水利尿から脱水症状や高ナトリウム血症を来し、意識障害に至った症例が 報告されており、また、急激な血清ナトリウム濃度の上昇による浸透圧性脱髄症候群を来すおそれがあることから、入院下で投与を開始又は再開すること。また、特に投与開始日又は再開日には血清ナトリウム濃度を頻回に測定すること。[8.8 参照],[8.12 参照],[9.1.3 参照],[11.1.3 参照],[11.1.4 参照]
(解説)
承認時までの国内臨床試験において、外来患者に対する使用経験はありません。 本剤投与時、特に本剤の効果が強く出る投与初期は、急激な水利尿により高ナトリウム血症や脱水症状 を引き起こすおそれがあり、国内市販後(心不全における体液貯留)において、本剤投与により、急激な水利尿から脱水症状や高ナトリウム血症を来し、意識障害に至った症例が報告されています。また、 急激な血清ナトリウム濃度の上昇による浸透圧性脱髄症候群を来すおそれがあります。本剤の投与を開始又は再開する際は、入院下で血清ナトリウム濃度、尿量及び臨床症状などを注意深く観察し、異常が認められた場合には、適切な処置を行ってください。
また、急激な血清ナトリウム濃度の上昇を防ぐため、投与開始又は再開日には頻回に血清ナトリウム濃度を測定し(心不全における体液貯留の場合は、少なくとも投与開始4~6時間後並びに8~12時間後、 肝硬変における体液貯留の場合は、少なくとも投与開始4~8時間後)、24時間以内に12mEq/Lを超える上昇がみられた場合には、本剤の投与を中止してください。
1.効能又は効果
〈サムスカOD錠7.5mg〉
ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留
ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な肝硬変における体液貯留
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)における低ナトリウム血症の改善
腎容積が既に増大しており、かつ、腎容積の増大速度が速い常染色体優性多発性のう胞腎の進行抑制
2.薬理作用
(1)作用部位・作用機序
トルバプタンは、バソプレシンV2-受容体拮抗作用を薬理学的特徴とする薬剤であり、腎集合管での バソプレシンによる水再吸収を阻害することにより、選択的に水を排泄し、電解質排泄の増加を伴わない利尿作用(水利尿作用)を示す。

出典:インタビューフォーム 製造販売元/大塚製薬株式会社
バソプレシンは9個のアミノ酸からなるペプチドホルモンであり、抗利尿ホルモンとも呼ばれるように、腎集合管に存在するバソプレシンV2-受容体を介して水透過性を調節している。
V2-受容体にバソ プレシンが結合すると、Gs-アデニル酸シクラーゼ-cAMP-PKA 経路が活性化され、水チャンネルであるアクアポリン-2(AQP2)の発現亢進と管腔側への移行により水の透過性を亢進して再吸収を促進する。
トルバプタンはバソプレシンV2-受容体拮抗作用を有し、腎集合管でのバソプレシンによる水再吸収を阻害することにより、電解質排泄の増加を伴わない利尿作用(水利尿作用)を示す。
リオシグアト 薬効分類名:可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激剤
以下、インタビューフォームから一部抜粋します。
1.開発の経緯
アデムパス錠(一般名リオシグアト)は、慢性血栓塞栓性肺高血圧症*(chronic thromboembolic pulmonary hypertension : CTEPH )及び肺動脈性肺高血圧症*(pulmonary arterial hypertension:PAH)を適応とする可溶性グアニル酸シクラーゼ(soluble guanylate cyclase: sGC)刺激剤である。
肺高血圧症(pulmonary hypertension:PH)は、平均肺動脈圧(mean PAP)が25 mmHg以上の場合と定義されているが、原因となる疾患は極めて多様で、PHの自然歴もその原疾患によって大きな差異があるといわれている。
CTEPHは、WHOの肺高血圧症臨床分類の第4群に、PAHは 同分類の第1群に分類されているが、他のPHと同様、肺血管抵抗の増加に伴って病態が進行し、 息切れの増悪、右心不全をきたす予後不良の疾患である。
CTEPH(指定難病88)およびPAH (指定難病86)は共に希少疾病であり、指定難病に指定されている。
リオシグアトは、バイエルヘルスケア社が1997年に発見したピリミジニルカルバミン酸系化合物 であり、心血管系の重要な調節因子で、血管細胞や血小板中に存在するsGCを活性化して細胞内環状グアノシン一リン酸(cyclic guanosine monophosphate:cGMP)の生成を促進する(in vitro)。
アデムパス錠の臨床開発は2004年9月より開始され、海外第Ⅰ/Ⅱ相試験を経て、2008年12月より 国際共同試験として、CTEPH又はPAH患者を対象とした第Ⅲ相試験及び長期継続試験がそれぞれ実施された。その結果、アデムパス錠のCTEPH/PAH患者に対する有効性と安全性が検討され、 2013年2月より欧州連合、米国、カナダ等の国々でCTEPHとPAHあるいはCTEPHのみを適応と して製造販売承認申請が行われている。
2013年9月19日に、カナダにおいて最初の承認を取得さ れた後、海外ではこれまでに70以上の国または地域で承認されている。
本邦では、2007年2月より第Ⅰ相試験が実施され、日本人被験者におけるアデムパス錠の忍容性が確認された。日本人と白人の間における曝露量の違いは、民族間の違いよりも個体間のクリアラ ンスの違いによるものであると考えられ、国内第Ⅱ相試験は行わずにCTEPH又はPAH患者を対 象とした前述の国際共同第Ⅲ相試験に参加した。
CTEPH患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験では、6分間歩行距離の第16週におけるベースラインからの変化量(主要評価項目)のプラセボに対する優越性が検証された。
また、本試験及び長期継続試験において、アデムパス錠のCTEPHに対する安全性と忍容性が検討された。
2011年9月8日にCTEPH治療に対して希少疾病用医薬品の指定を受け、「外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症」 を効能又は効果とする新有効成分含有医薬品として、2014年1月17日にアデムパス錠の製造販売承認を取得した。
また、PAH患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験及び長期継続試験の結果に基づき、「肺動脈性肺高血圧症」を効能又は効果として承認事項一部変更申請を行い、2015年2月20日に承認を取得した。
*アデムパス錠の効能又は効果は「外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症」、「肺動脈性肺高血圧症」である。
2.製品の治療学的特性
(1)世界で初めて CTEPH*およびPAH*の2 つの適応を有するの経口肺血管拡張薬である。
(2)可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激剤であり、NO-sGC-cGMP 経路において、NO 非依存的に sGC を直接刺激する作用と NO の sGCへの感受性を高める作用の 2 つの機序を介 して cGMP の産生を促進し、肺動脈を拡張させる。[「Ⅵ.2.(1) 作用部位・作用機序」の項 参照]
(3)CTEPH 患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(CHEST-1)において、プラセボと比較し、 6 分間歩行距離、肺血管抵抗及び平均肺動脈圧を有意に改善した。
CHEST-1において16週間の投与を終了した患者を対象とした長期継続投与試験(CHEST-2)では、安全性と有効性が検討された。[「Ⅴ.5.(4)1) 有効性検証試験」の項参照]
(4)PAH 患者(PAH 既治療例を含む)を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(PATENT-1)におい て、プラセボと比較し、6 分間歩行距離、肺血管抵抗及び平均肺動脈圧を有意に改善した。 PATENT-1において12週間の投与を終了した患者を対象とした長期継続投与試験 (PATENT-2)では、安全性と有効性が検討された。[「Ⅴ.5.(4)1) 有効性検証試験」の項 参照]
(5)漸増法を用いる薬剤投与法により、患者ごとの至適投与量の設定が可能。[「Ⅴ.3. 用法及 び用量」及び「Ⅴ.4. 用法及び用量に関連する注意」の項参照]
(6)重大な副作用として、喀血(0.2%)及び肺出血(頻度不明)があらわれることがある。
主な副作用(発現頻度10%以上)は、頭痛、浮動性めまい、消化不良である。 [「Ⅷ.8. 副作用」の項参照]
*アデムパス錠の効能又は効果は「外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血 栓塞栓性肺高血圧症」、「肺動脈性肺高血圧症」である。
以下、医療用医薬品添付文書から一部抜粋します。
2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)
2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.2 妊婦又は妊娠している可能性のある女性[9.5 参照]
2.3 重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)のある患者[9.3.1 参照]
2.4 重度の腎機能障害(クレアチニン・クリアランス15mL/min未満)のある又は透析中の患者[9.2.1 参照],[16.6.2 参照]
2.5 硝酸剤又は一酸化窒素(NO)供与剤(ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド、ニコランジル等)を投与中の患者[10.1 参照],[16.7.1 参照]
2.6 ホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害剤を投与中の患者[10.1 参照],[16.7.2 参照]
* 2.7 アゾール系抗真菌剤(イトラコナゾール、ボリコナゾール)を投与中の患者[10.1 参照],[16.7.3 参照]
2.8 可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬(ベルイシグアト)を投与中の患者[10.1 参照]
8. 重要な基本的注意
8.1 本剤の投与により肺水腫の徴候がみられた場合には、肺静脈閉塞性疾患との関連性を疑い、投与を中止すること。[9.1.3 参照]
8.2 本剤は血管を拡張して血圧を低下させる作用を有している。本剤の投与に際しては、血管拡張作用により患者が有害な影響を受ける状態(降圧剤投与中、安静時低血圧、血液量減少、重度の左室流出路閉塞、自律神経機能障害等)にあるかどうかを十分検討すること。
8.3 臨床試験において、めまい等が認められているので、高所作業、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意させること。
8.4 特発性間質性肺炎に伴う症候性肺高血圧症を対象とした国際共同試験において、本剤投与群ではプラセボ投与群と比較して重篤な有害事象及び死亡が多く認められた。間質性肺病変を伴う肺動脈性肺高血圧症の患者に本剤を投与する場合は、間質性肺疾患の治療に精通した専門医に相談するなど、本剤投与によるリスクとベネフィットを考慮した上で、投与の可否を慎重に検討すること。[15.1 参照]
**,*10. 相互作用
本剤は、主にCYP1A1、CYP2C8、CYP2J2及びCYP3Aにより代謝される。
本剤はP-糖タンパク/乳癌耐性タンパク(P-gp/BCRP)の基質であるため、これらの阻害薬若しくは誘導薬により血漿中濃度が影響を受ける可能性がある。また、本剤及び主代謝物M-1はCYP1A1阻害作用がある(in vitro)。
** 10.1 併用禁忌(併用しないこと)
薬剤名等
臨床症状・措置方法機序・危険因子
硝酸剤及びNO供与剤
ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド、ニコランジル等 [2.5 参照],[16.7.1 参照]
本剤単回投与後にニトログリセリンを舌下投与したときに、プラセボ投与に比べて有意な収縮期血圧の低下が認められている。
細胞内cGMP濃度が増加し、降圧作用を増強する。
PDE5阻害剤
シルデナフィルクエン酸塩(バイアグラ、レバチオ)
タダラフィル(シアリス、アドシルカ、ザルティア)
**バルデナフィル塩酸塩水和物 [2.6 参照],[16.7.2 参照] 症候性低血圧を起こすことがある。
細胞内cGMP濃度が増加し、全身血圧に相加的な影響を及ぼすおそれがある。
アゾール系抗真菌剤
*イトラコナゾール(イトリゾール)、ボリコナゾール(ブイフェンド) [2.7 参照],[16.7.3 参照]
ケトコナゾール(経口剤:国内未発売)との併用により本剤のAUCが150%増加し、Cmaxは46%上昇した。また、消失半減期が延長し、クリアランスも低下した。
複数のCYP分子種(CYP1A1、CYP3A等)及びP-gp/BCRP阻害により本剤のクリアランスが低下する。
可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬
ベルイシグアト(ベリキューボ) [2.8 参照]
症候性低血圧を起こすおそれがある。
細胞内cGMP濃度が増加し、降圧作用を増強するおそれがある。
10.2 併用注意(併用に注意すること)
薬剤名等
臨床症状・措置方法機序・危険因子
CYP1A1阻害剤
エルロチニブ、ゲフィチニブ * [7.1 参照]
本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるので、強いCYP1A1阻害薬との併用には注意すること。
CYP1A1阻害により本剤のクリアランスが低下する。
*リトナビル含有製剤
*アタザナビル、
*リルピビリン含有製剤
*コビシスタット含有製剤
*アバカビル含有製剤
*ダルナビル含有製剤
*ホスアンプレナビル * [7.1 参照]
*本剤の血中濃度が上昇するおそれがある4)。
これらの薬剤を投与中の患者に本剤の投与を開始する場合は、1回0.5mg1日3回からの開始も考慮すること。
*これら薬剤のCYP1A1及び/又はCYP3A阻害により本剤のクリアランスが低下する。
CYP1A1で代謝される薬剤
イストラデフィリン、グラニセトロン、エルロチニブ
これら薬剤の血中濃度が上昇するおそれがある。
本剤及びM-1のCYP1A1阻害によりこれら薬剤のクリアランスが低下する。
シクロスポリン * [7.1 参照]
本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるので、強いP-gp/BCRP阻害薬との併用には注意すること。
P-gp/BCRP阻害により本剤のクリアランスが低下する。
制酸剤
水酸化アルミニウム/水酸化マグネシウム合剤等 [16.7.4 参照]
水酸化アルミニウム/水酸化マグネシウム合剤との併用により本剤のAUCが34%減少し、Cmaxは56%低下した。
制酸剤は本剤投与後1時間以上経過してから服用させること。
消化管内pHの上昇により本剤のバイオアベイラビリティが低下する。
CYP3A阻害剤
*クラリスロマイシン、エリスロマイシン等 * [7.1 参照],[16.7.7 参照]
本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるので、強いCYP3A阻害薬との併用には注意すること。
CYP3A阻害により本剤のクリアランスが低下する。
ボセンタン [16.7.5 参照]
ボセンタンを併用した肺動脈性肺高血圧症患者において、本剤のAUCが27%減少した。
CYP3Aの誘導により本剤のクリアランスが上昇する。
CYP3A誘導薬
フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、セイヨウオトギリソウ(St.John’s Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品等
強いCYP3A誘導薬との併用により本剤の血中濃度が低下する可能性がある。
CYP3A誘導により本剤のクリアランスが上昇する。
PMDA 医療用医薬品添付文書等
フロセミド 薬効分類名:利尿降圧剤
製造販売元/サノフィ株式会社 販売元/日医工株式会社
ラシックス錠10mg/ラシックス錠20mg/ラシックス錠40mg
インタビューフォーム
F1_ラシックス錠10mg/ラシックス錠20mg/ラシックス錠40mg
患者向医薬品ガイド
G_ラシックス錠10mg/ラシックス錠20mg/ラシックス錠40mg
エプレレノン 薬効分類名:選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬
製造販売元/ヴィアトリス製薬合同会社
セララ錠25mg/セララ錠50mg/セララ錠100mg
インタビューフォーム
F1_セララ錠25mg/セララ錠50mg/セララ錠100mg
患者向医薬品ガイド
G_セララ錠25mg/セララ錠50mg/セララ錠100mg
タダラフィル 薬効分類名:勃起不全治療剤
製造販売元/大興製薬株式会社 発売元/あすか製薬株式会社
販売元/武田薬品工業株式会社 タダラフィル錠10mgCI「あすか」/タダラフィル錠20mgCI「あすか」
インタビューフォーム タダラフィル錠10mgCI「あすか」/タダラフィル錠20mgCI「あすか」
患者向医薬品ガイド タダラフィル錠10mgCI「あすか」/タダラフィル錠20mgCI「あすか」
ボセンタン水和物 薬効分類名:エンドセリン受容体拮抗薬
製造販売元/ヤンセンファーマ株式会社 トラクリア錠62.5mg
インタビューフォーム F1_トラクリア錠62.5mg
患者向医薬品ガイド G_トラクリア錠62.5mg
エポプロステノールナトリウム 薬効分類名:プロスタグランジンI2製剤
製造販売元/グラクソ・スミスクライン株式会社
静注用フローラン0.5mg/静注用フローラン0.5mg/静注用フローラン1.5mg/静注用フローラン1.5mg/静注用フローラン専用溶解液
インタビューフォーム
F1_静注用フローラン0.5mg/静注用フローラン1.5mg
患者向医薬品ガイド
G_静注用フローラン0.5mg/静注用フローラン1.5mg/静注用フローラン専用溶解液
トルバプタン 薬効分類名:V2-受容体拮抗剤
製造販売元/大塚製薬株式会社 サムスカOD錠7.5mg/サムスカOD錠15mg/サムスカOD錠30mg/サムスカ顆粒1%
インタビューフォーム F1_サムスカOD錠7.5mg/サムスカOD錠15mg/サムスカOD錠30mg/サムスカ顆粒1%
患者向医薬品ガイド G_サムスカOD錠7.5mg/サムスカOD錠15mg/サムスカOD錠30mg/サムスカ顆粒1%
リオシグアト 薬効分類名:可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激剤
製造販売元/バイエル薬品株式会社 販売提携/MSD株式会社
アデムパス錠0.5mg/アデムパス錠1.0mg/アデムパス錠2.5mg
インタビューフォーム
F1_アデムパス錠0.5mg/アデムパス錠1.0mg/アデムパス錠2.5mg
患者向医薬品ガイド
G_アデムパス錠0.5mg/アデムパス錠1.0mg/アデムパス錠2.5mg
🫛豆知識② 肺高血圧症治療ガイドライン
肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版) JCS2017_fukuda_h.pdf
班長:福田 恵一 掲載:ホームページ公開のみ
ガイドラインシリーズ | 一般社団法人 日本循環器学会
ガイドライン等を一読しておくと応用力がつきます。

利尿薬に関しては下記の記載がありました。
問106-257の論点であるトルバプタンに関するエビデンスが掲載されています。エビデンスがないわけではないことがガイドラインから判明しました。
薬剤師国家試験の出題範囲としてのコアカリキュラムの範疇に入るかどうかは別として、知識としては知っておいてよい事例です。
問106-257のもうひとつの論点であるリオシグアト錠の追加を否定するエビデンスとして、薬理作用機序(肺高血圧症改善)が低カリウム血症の改善に対して適応外であることに加えて、相互作用における併用禁忌と併用注意があります。相互作用の項も見ておきましょう。
以下、利尿薬および相互作用について、一部抜粋します。
ii.利尿薬
右心不全により水分貯留が起こり,そのコントロールのために利尿薬が用いられる.
ループ利尿薬,サイアザイド系利尿薬,抗アルドステロン薬を単独あるいは併用で投与する.
使用に際しては,電解質異常や過度の血管内脱水による低血圧の発生,低心拍出の進行に十分注意を払う.
近年,わが国から IPAH/HPAH に対するトルバプタンの有用性が報告されている128)
Ref. 128. Tamura Y, Kimura M, Takei M, et al. Oral vasopressin receptor antagonist tolvaptan in right heart failure due to pulmonary hypertension. Eur Respir J 2015; 46: 283–286. PMID: 25929949
Tamura Y, Kimura M, Takei M, Ono T, Kuwana M, Satoh T, Fukuda K, Humbert M. Oral vasopressin receptor antagonist tolvaptan in right heart failure due to pulmonary hypertension. Eur Respir J. 2015 Jul;46(1):283-6. doi: 10.1183/09031936.00044915. Epub 2015 Apr 30. PMID: 25929949.
e.薬物相互作用
肺血管拡張薬は,ほかの肺高血圧治療薬やそれ以外の薬剤と併用される場合がある.肺血管拡張薬のなかには, CYP などの薬物代謝酵素による代謝を受けるものや代謝酵素誘導をする薬剤があり,薬物相互作用があることが知 られている.
とくに薬物代謝酵素に大きく関与する ERA 146) および PDE5 阻害薬を併用療法に用いる場合は十分な考慮 が必要である.
ERA であるボセンタン 147)は CYP3A4 と CYP2C9 の誘導体であり,これらの酵素で代謝される薬剤と併用する場 合は,その薬剤の血中濃度が低下する可能性がある.また, ボセンタンは CYP3A4 と CYP2C9 で代謝されるため,これらの酵素で代謝される薬剤と併用する場合,ボセンタン の血中濃度が増加する可能性がある.
たとえば,ボセンタンとの併用投与によって,おもに CYP3A4 で代謝される PDE5 阻害薬 148)であるシルデナフィル 149, 150)の血中濃度 が低下するため,効果不十分による臨床上の悪化に注意する必要がある.
また,シルデナフィルとの併用投与によって,ボセンタンの血中濃度が上昇する可能性がある151, 152) .
タダラフィル 153)も CYP3A4 で代謝されるため,ボセンタンとの併用でタダラフィルの血中濃度は低下するが,シルデナフィルより相互作用は軽度である.
ERA のアンブリセンタン 154)が,これらの代謝酵素の基質となる薬剤に影響を及ぼすことは比較的少ない 155, 156) .
シルデナフィル157) はおもに CYP3A4 で代謝されるため, 他剤との併用時,CYP3A4 を介した薬物相互作用が起きる場合がある.
エリスロマイシンやシメチジンなどの CYP3A4 を阻害する薬は,シルデナフィルの血中濃度を上昇させる.タダラフィルも同様に CYP3A4 で代謝されるため,CYP3A4 代謝に関与する薬剤との併用時には注意が必要である.
sGC 刺激剤であるリオシグアト158, 159)は, PDE5 阻害薬との併用で低血圧や失神などの副作用が報告 されており,両者の併用は禁忌となる.
ERA と PDE5 阻 害薬を中心に,併用禁忌薬と併用注意薬を表 12 にまとめ た 1) .

まず基本的な知識について復習しておきましょう。
■■GPT4o
原発性肺高血圧症(PAH:Pulmonary Arterial Hypertension)の病態と薬物治療
1. 病態
原発性肺高血圧症(PAH)は、肺動脈の異常な血管収縮や血管リモデリングにより肺動脈圧が上昇し、右心不全を引き起こす進行性の疾患である。
病態の特徴
血管内皮機能障害
→ NO(⽣理的血管拡張因⼦)およびプロスタサイクリン産⽣の低下血管収縮因子の増加
→ エンドセリン-1(ET-1)などの収縮因子の過剰産生血管リモデリング
→ 平滑筋細胞・線維芽細胞の異常増殖による血管壁の肥厚右心不全
→ 肺血管抵抗増加により右室の負荷が増大し、右室肥大・拡張不全へ進行
2. 薬物治療
PAHの治療は、肺血管拡張と血管リモデリング抑制を目的とした薬剤を使用する。
主要な薬物クラスと代表薬

作用機序
代表薬
作用のポイント(※)
プロスタサイクリン誘導体(IP受容体作動薬)
エポプロステノール、ベラプロスト、セレキシパグ
※ cAMPを増加させ、血管拡張および血小板凝集抑制
エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)
ボセンタン、アンブリセンタン、マシテンタン
※ ET-1の血管収縮作用を抑制
ホスホジエステラーゼ5(PDE-5)阻害薬
シルデナフィル、タダラフィル
※ cGMP分解抑制によりNO作用を増強
可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬
リオシグアト
※ NO非依存的にcGMPを増加させ血管拡張
カルシウムチャネル遮断薬(CCB)
ニフェジピン、ジルチアゼム
※ 一部のPAH患者で有効(血管反応性試験陽性例)
利尿薬
フロセミド、スピロノラクトン
※ うっ血症状の改善(右心不全による浮腫管理)
抗凝固薬
ワルファリン
※ 血栓形成の予防(特定のPAH患者に適応)
引用文献
Galiè N, Humbert M, Vachiery JL, et al. 2015 ESC/ERS Guidelines for the diagnosis and treatment of pulmonary hypertension. Eur Heart J. 2016;37(1):67-119.
Simonneau G, Montani D, Celermajer DS, et al. Haemodynamic definitions and updated clinical classification of pulmonary hypertension. Eur Respir J. 2019;53(1):1801913.
McLaughlin VV, Shah SJ, Souza R, Humbert M. Management of pulmonary arterial hypertension. J Am Coll Cardiol. 2022;79(17):1783-1812.
処方の考察
1. 現在の治療方針と評価
本患者は原発性肺高血圧症(PAH)の治療中であり、以下の標準治療薬が投与されている。
肺血管拡張療法
タダラフィル(PDE-5阻害薬)
→ NO経路を介した血管拡張ボセンタン(エンドセリン受容体拮抗薬)
→ ET-1による血管収縮抑制エポプロステノール(プロスタサイクリン誘導体)
→ cAMP増加による血管拡張
心負荷軽減と体液管理
フロセミド(ループ利尿薬)
→ 体液貯留の管理エプレレノン(アルドステロン受容体拮抗薬)
→ カリウム保持性利尿薬による電解質バランス調整
2. 現在の問題点
浮腫の遷延(顔面・四肢のむくみ)
ループ利尿薬(フロセミド)を使用しているが、十分な除水が達成されていない可能性
エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)のボセンタンは、浮腫を副作用として引き起こすことがある
低カリウム血症(3.0 mEq/L)
フロセミドによる尿中カリウム排泄亢進
エプレレノンを併用しているが、補正が不十分
3. 追加・変更すべき処方の提案
(1) トルバプタンの追加(適切な選択肢)
理由:
トルバプタンは選択的V2受容体拮抗薬であり、水利尿作用を示しながら電解質排泄を抑制できるため、低カリウム血症のリスクを増やさずに浮腫を改善できる。期待される効果:
ループ利尿薬の用量増加によるカリウム喪失を防ぐ
水分排泄を促進し、浮腫を軽減
(2) アスパラギン酸カリウムの追加(補助的な選択肢)
理由:
低カリウム血症の改善を目的にカリウム補充が有効な可能性があるが、フロセミドの影響を根本的に抑えられないため、利尿薬の調整が優先される。適応:
明らかな症候性低カリウム血症(筋力低下、不整脈リスク)を伴う場合に考慮
(3) フロセミド増量の回避
理由:
フロセミドを増量すると、さらなるカリウム喪失が生じるため不適切。
(4) エポプロステノールの増量の回避
理由:
現状で肺機能が改善傾向にあり、血行動態が安定しているため、さらなる血管拡張による低血圧や浮腫悪化のリスクがある。
(5) リオシグアトの追加の回避
理由:
NO経路を介した血管拡張作用を持つが、既にPDE-5阻害薬(タダラフィル)が投与されており、相互作用のリスクがあるため不適。
4. 結論
本症例では、トルバプタンの追加が最も適切な対応である。
浮腫の改善と電解質バランス維持を同時に達成できるため、第一選択となる。
低カリウム血症が進行する場合は、アスパラギン酸カリウムの追加も考慮されるが、優先度は低い。
参考文献
日本循環器学会, 日本肺高血圧症学会 (2023). 「肺高血圧症治療ガイドライン2023」. 日本循環器学会学術出版.
Galiè N, Humbert M, Vachiery JL, et al. (2015). "2015 ESC/ERS Guidelines for the Diagnosis and Treatment of Pulmonary Hypertension." European Heart Journal, 37(1), 67–119.
山田正樹, 田中淳一, 佐藤公昭 (2017). 「肺動脈性肺高血圧症に対する薬物治療戦略」. 日本呼吸器学会雑誌, 55(3), 213–221.
堀之内崇, 木村剛 (2021). 「肺高血圧症における循環動態の理解と治療選択」. 日内会誌, 110(5), 1023–1035.
Nishimura R, et al. (2020). "Management of Pulmonary Hypertension: Current Status and Future Directions." J Am Coll Cardiol, 76(20), 2362–2377.
これらの文献は、肺高血圧症の病態、標準治療、利尿薬の役割、および電解質管理に関する科学的根拠を提供するものです。
利尿薬 概説
1. 概要
利尿薬(Diuretics)は、腎臓に作用して尿量を増加させる薬剤の総称であり、体内の余分な水分や電解質を排泄することで、浮腫(むくみ)や高血圧、心不全、腎疾患などの治療に使用される。主な作用機序は、腎臓の尿細管におけるナトリウム(Na⁺)および水の再吸収を抑制することである。
2. 利尿薬の分類と作用機序
(1) ループ利尿薬(Loop diuretics)
代表薬剤:フロセミド、トラセミド、ブメタニド
作用部位:ヘンレ係蹄(太い上行脚)
作用機序:Na⁺-K⁺-2Cl⁻共輸送体を阻害し、ナトリウム、カリウム、塩化物イオンの再吸収を抑制することで強力な利尿作用を示す。
適応:急性心不全、慢性心不全、腎不全、高血圧、浮腫など
(2) サイアザイド系利尿薬(Thiazide diuretics)
代表薬剤:ヒドロクロロチアジド、インダパミド
作用部位:遠位尿細管
作用機序:Na⁺-Cl⁻共輸送体を阻害し、ナトリウムと水の再吸収を抑えることで利尿作用を発揮する。
適応:高血圧、軽度の浮腫、骨粗鬆症(カルシウム排泄抑制作用があるため)
(3) カリウム保持性利尿薬(Potassium-sparing diuretics)
代表薬剤:スピロノラクトン、エプレレノン、トリアムテレン
作用部位:集合管および遠位尿細管
作用機序:
アルドステロン拮抗薬(スピロノラクトン、エプレレノン):アルドステロン受容体を遮断し、ナトリウムの再吸収およびカリウムの排泄を抑制する。
Na⁺チャネル阻害薬(トリアムテレン):遠位尿細管のナトリウムチャネルを直接阻害し、ナトリウムの再吸収を抑える。
適応:高血圧、心不全、原発性アルドステロン症
(4) 浸透圧性利尿薬(Osmotic diuretics)
代表薬剤:マンニトール、グリセロール
作用部位:糸球体濾過後の尿細管全域
作用機序:血漿浸透圧を上昇させ、糸球体で濾過され尿細管内の浸透圧を上昇させることで水の再吸収を抑制し、尿量を増加させる。
適応:脳浮腫、急性腎不全、眼圧低下(緑内障)
(5) バソプレシン受容体拮抗薬(Vasopressin receptor antagonists)
代表薬剤:トルバプタン、サトバプタン
作用部位:集合管
作用機序:バソプレシンV2受容体を阻害し、水の再吸収を抑制することで水利尿を促進する。
適応:心不全、肝硬変、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)
3. 利尿薬の臨床的使用と副作用
利尿薬は高血圧、心不全、腎不全などの治療に有効であるが、電解質異常(低カリウム血症、高カリウム血症、低ナトリウム血症)、脱水、低血圧、腎機能障害などの副作用があるため、適切なモニタリングが必要である。
4. まとめ
利尿薬は、腎臓に作用して尿の排泄を促進し、高血圧や浮腫などの治療に重要な役割を果たす。各種利尿薬は異なる作用部位と機序を持ち、患者の病態に応じて適切に選択されるべきである。
参考文献
U.S. National Library of Medicine. "Drug Information Portal." https://druginfo.nlm.nih.gov
European Medicines Agency (EMA). "European public assessment reports (EPARs)." https://www.ema.europa.eu
厚生労働省「医療用医薬品添付文書」
日本製薬工業協会「医薬品インタビューフォーム」
論点およびポイント
■■GPT4o
問 106-256|薬理
論点| ホスホジエステラーゼV阻害 / アルドステロン受容体遮断 / エンドセリン受容体遮断 / プロスタノイドIP受容体刺激 / ループ利尿薬
ポイント|
タダラフィル:
ホスホジエステラーゼV(PDE5)を阻害し、cGMP分解を抑制することで血管拡張を促進。エプレレノン:
アルドステロン受容体拮抗薬で、集合管におけるNa+/K+交換を抑制し、利尿効果を発揮。ボセンタン:
エンドセリン受容体(ETAおよびETB)を非選択的に遮断し、エンドセリン-1による血管収縮を抑制。エポプロステノール:
プロスタノイドIP受容体を刺激し、cAMP産生を促進して血管拡張および血小板凝集抑制作用を示す。フロセミド:
ループ利尿薬であり、ヘンレ係蹄上行脚のNa+-K+-2Cl-共輸送系を阻害し、対向流増幅系を抑制。正答は選択肢 3:
ボセンタンはETA/ETB受容体を遮断するため、「ETA受容体を選択的に遮断する」という記述は誤り。
問 106-257|実務
論点| 肺高血圧症 / ループ利尿薬 / 低カリウム血症 / 水利尿薬 / 浮腫改善
ポイント|
患者の問題点:
肺高血圧症に対する治療中であり、顔面や四肢の浮腫が持続し、低カリウム血症(3.0mEq/L)が発生。フロセミド(ループ利尿薬):
Na+とともにK+排泄を促進し、低カリウム血症を助長する可能性がある。トルバプタン(V2受容体拮抗薬):
水利尿を促進し、Na+排泄を維持しながらK+排泄を抑制するため、浮腫改善と低カリウム血症のリスク軽減に有効。エポプロステノールの増量:
血管拡張作用を強化するが、浮腫改善やカリウム補正には寄与しないため不適切。フロセミド増量:
利尿作用を強めるが、低カリウム血症を悪化させるため不適切。アスパラギン酸カリウムの追加:
カリウム補正に有効だが、根本的な原因である利尿薬の調整が優先されるため、不適切。リオシグアトの追加:
血管拡張作用があるが、浮腫改善やカリウム補正には寄与しないため不適切。正答は選択肢 1(トルバプタンの追加):
水利尿作用による浮腫改善と、カリウム保持効果により適切な対応となる。
薬剤師国家試験 出題基準
出典: 薬剤師国家試験のページ |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
出題基準 000573951.pdf (mhlw.go.jp)
論点を整理します。
■■GPT4o
総合的な論点
問 106-256(薬理)
本問題の論点は「処方薬の作用機序に該当しない選択肢を選ぶこと」にある。処方薬には以下の5種類が含まれており、それぞれ異なる作用機序を持つ。
タダラフィル(PDE5阻害薬):
ホスホジエステラーゼⅤ(PDE5)を阻害し、cGMPの分解を抑制することで血管拡張を促進する。エプレレノン(抗アルドステロン薬):
アルドステロン受容体を遮断し、集合管におけるNa+/K+交換系を抑制することで利尿作用を示す。ボセンタン(エンドセリン受容体拮抗薬):
エンドセリンETAおよびETB受容体を遮断し、血管収縮を抑制する。エポプロステノール(プロスタノイド受容体作動薬):
プロスタノイドIP受容体を刺激し、cAMP産生を促進して血管拡張と血小板凝集抑制をもたらす。フロセミド(ループ利尿薬):
ヘンレ係蹄上行脚においてNa+-K+-2Cl-共輸送系を阻害し、対向流増幅系を抑制することで利尿効果を発揮する。
この問題では、「処方薬のいずれにも該当しない作用機序」を持つ選択肢を選ぶ必要がある。そのため、各選択肢の作用機序と処方薬の作用機序を比較し、どれが該当しないかを検討する。
正答は選択肢3(エンドセリンETA受容体を選択的に遮断)である。
ボセンタンはETA受容体だけでなく、ETB受容体も阻害するため、「ETA受容体を選択的に遮断する」という表現が正しくない。
各選択肢の論点および解法へのアプローチ方法
問 106-256(薬理)
選択肢 1:ホスホジエステラーゼⅤ(PDE5)阻害による血管拡張
論点:
ホスホジエステラーゼⅤ(PDE5)阻害により、cGMPの分解を抑制し、血管拡張作用を示す。アプローチ方法:
処方薬の中にPDE5阻害薬であるタダラフィルが含まれているため、これは正しい作用機序である。
選択肢 2:アルドステロン受容体拮抗による利尿作用
論点:
アルドステロン受容体を遮断することで集合管のNa+/K+交換系を抑制し、利尿作用を示す。アプローチ方法:
処方薬の中にエプレレノン(抗アルドステロン薬)が含まれているため、これは正しい作用機序である。
選択肢 3:エンドセリンETA受容体の選択的遮断
論点:
エンドセリンETA受容体を選択的に遮断することで血管収縮を抑制する。アプローチ方法:
処方薬のボセンタンはエンドセリンETAだけでなくETB受容体も遮断するため、「ETA受容体を選択的に遮断」という表現は誤りである。したがって、この選択肢が正答となる。
選択肢 4:プロスタノイドIP受容体の刺激による血管拡張
論点:
プロスタノイドIP受容体を刺激し、cAMPの産生を促進して血管拡張と血小板凝集抑制をもたらす。アプローチ方法:
処方薬の中にエポプロステノール(プロスタノイドIP受容体作動薬)が含まれているため、これは正しい作用機序である。
選択肢 5:ヘンレ係蹄上行脚におけるNa+-K+-2Cl-共輸送系の阻害
論点:
ループ利尿薬はヘンレ係蹄上行脚においてNa+-K+-2Cl-共輸送系を阻害し、対向流増幅系を抑制することで利尿作用を示す。アプローチ方法:
処方薬の中にフロセミド(ループ利尿薬)が含まれているため、これは正しい作用機序である。
結論:
選択肢3の「エンドセリンETA受容体を選択的に遮断する」が処方薬のいずれの作用機序とも一致しないため、正答となる。
引用文献
Galie N, et al. "2015 ESC/ERS Guidelines for the diagnosis and treatment of pulmonary hypertension." Eur Heart J. 2016;37(1):67-119.
Ghofrani HA, et al. "Pharmacotherapy of pulmonary arterial hypertension: expanding the armamentarium." Circulation. 2006;113(1):226-237.
Sastry BV, et al. "Pharmacology of phosphodiesterase inhibitors: effects on cyclic nucleotides and smooth muscle tone." J Pharmacol Exp Ther. 1994;271(2):639-649.
Iglarz M, et al. "Endothelin receptor antagonists: past, present, and future." Eur Heart J Suppl. 2019;21(Suppl K):K41-K49.
Albert NM. "A review of aldosterone receptor antagonists in heart failure: making a case for their expanded use." Cleve Clin J Med. 2009;76(10):641-648.
Whelton PK, et al. "Loop Diuretics and Their Clinical Use: A Comprehensive Review." Hypertension. 2018;72(6):1056-1063.
Christman BW, et al. "An overview of prostacyclin and its analogs in pulmonary arterial hypertension." Am J Respir Med. 2002;1(3):177-197.
問 106-257(実務)
問題の論点:
本症例の患者は肺高血圧症(PAH)の治療を受けており、フロセミド(ループ利尿薬)とエプレレノン(抗アルドステロン薬)が処方されている。
しかし、経過観察時に顔面や四肢のむくみ(浮腫)が持続し、さらに血清カリウム値が4.1mEq/Lから3.0mEq/Lへ低下していた。
この状況に対し、適切な薬物調整を提案する必要がある。
主要な評価ポイント:
浮腫の継続:
フロセミドは強力な利尿薬であるが、ナトリウムの再吸収抑制によって二次的にカリウム喪失が起こる可能性がある。
エプレレノンはカリウム保持性利尿薬であるが、効果が比較的穏やかであるため、フロセミドによるカリウム喪失を十分に補えない可能性がある。
低カリウム血症(3.0mEq/L):
フロセミドによる尿中カリウム排泄増加が主因と考えられる。
低カリウム血症は心電図異常や筋力低下のリスクを伴うため、補正が必要。
治療の方針:
カリウム補充が必要か?
→ 3.0mEq/Lは補充の適応になるが、根本的にカリウム喪失の原因(フロセミドの影響)を評価することが重要。利尿薬の調整が必要か?
→ フロセミドの増量ではなく、異なる利尿薬の追加を検討すべき。肺高血圧症に対する薬剤の適応は?
→ リオシグアト(sGC刺激薬)の追加は適応外と考えられる。
結論:
本症例では「トルバプタン(バソプレシンV2受容体拮抗薬)の追加」が最適な選択となる。
トルバプタンはナトリウムの排泄を促進しつつ、カリウム排泄には影響を与えにくいため、低カリウム血症の悪化を防ぎながら浮腫を改善できる。
各選択肢の論点および解法へのアプローチ方法
問 106-257(実務)
選択肢 1:トルバプタン錠の追加
論点:
トルバプタンはバソプレシンV2受容体拮抗薬であり、集合管での水再吸収を抑制することで水利尿を促進し、浮腫を改善する。
ナトリウム排泄は促進するが、カリウム排泄には影響が少ない。アプローチ方法:
本患者はフロセミドの使用により低カリウム血症を呈しているため、さらなるカリウム喪失を招く可能性のある利尿薬(フロセミドの増量など)は適切でない。
トルバプタンは水利尿を促進しつつカリウム喪失を防ぐため、最適な選択肢となる。
選択肢 2:エポプロステノール静注用の増量
論点:
エポプロステノールはプロスタノイドIP受容体を刺激し、血管拡張作用を示すが、利尿作用はない。アプローチ方法:
本患者の主訴は浮腫と低カリウム血症であり、エポプロステノールの増量は浮腫の改善に寄与しない。したがって不適切。
選択肢 3:フロセミド錠の増量
論点:
フロセミドはループ利尿薬であり、ヘンレ係蹄上行脚のNa+-K+-2Cl-共輸送系を阻害することで利尿作用を示す。しかし、カリウム排泄を促進するため低カリウム血症を悪化させる可能性がある。アプローチ方法:
現在の問題は「低カリウム血症と浮腫の継続」であり、フロセミドの増量はカリウム喪失を助長するため不適切。
選択肢 4:アスパラギン酸カリウム錠の追加
論点:
カリウム補充により低カリウム血症を是正できるが、根本的なカリウム喪失の原因を解決しないため、利尿薬の適切な調整が必要である。アプローチ方法:
低カリウム血症が軽度であり(3.0mEq/L)、根本原因であるフロセミドによるカリウム喪失を考慮すると、単なるカリウム補充よりも利尿薬の変更が優先される。よって不適切。
選択肢 5:リオシグアト錠の追加
論点:
リオシグアトは可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬であり、血管拡張作用を有するが、利尿作用やカリウム補正作用はない。アプローチ方法:
本患者の主訴は浮腫と低カリウム血症であり、リオシグアトの追加はこれらの症状の改善に直接寄与しないため不適切。
結論:
トルバプタン(選択肢 1)の追加が最適な対応であり、正答となる。
引用文献
Galie N, et al. "2015 ESC/ERS Guidelines for the diagnosis and treatment of pulmonary hypertension." Eur Heart J. 2016;37(1):67-119.
Zeltser D, et al. "Tolvaptan: A selective vasopressin V2-receptor antagonist for the treatment of hyponatremia." Expert Rev Cardiovasc Ther. 2007;5(5):651-660.
Gheorghiade M, et al. "Effects of tolvaptan, a vasopressin antagonist, in patients hospitalized with worsening heart failure: a randomized controlled trial." JAMA. 2007;297(12):1332-1343.
Whelton PK, et al. "Loop Diuretics and Their Clinical Use: A Comprehensive Review." Hypertension. 2018;72(6):1056-1063.
Konstam MA, et al. "Effects of oral tolvaptan in patients hospitalized for worsening heart failure: the EVEREST Outcome Trial." JAMA. 2007;297(12):1319-1331.
Kazama I. "Loop diuretics exacerbate hyponatremia in congestive heart failure by stimulating thirst: a new insight into the paradoxical effect of diuretics." Hypertens Res. 2015;38(1):29-34.
以上で、論点整理を終わります。
理解できたでしょうか?
大丈夫です。
完全攻略を目指せ!
はじめましょう。
薬剤師国家試験の薬学実践問題【複合問題】から肺高血圧症 / 薬理作用 / フロセミド / エプレレノン / タダラフィル / ボセンタン / エポプロステノール / トルバプタン / アスパラギン酸カリウム / リオシグアトを論点とした問題です。
なお、以下の解説は、著者(Yukiho Takizawa, PhD)がプロンプトを作成して、その対話に応答する形で GPT4o & Copilot 、Gemini 2、または Grok 2 が出力した文章であって、著者がすべての出力を校閲しています。
生成AIの製造元がはっきりと宣言しているように、生成AIは、その自然言語能力および取得している情報の現在の限界やプラットフォーム上のインターフェースのレイト制限などに起因して、間違った文章を作成してしまう場合があります。
疑問点に関しては、必要に応じて、ご自身でご確認をするようにしてください。
Here we go.
第106回薬剤師国家試験|薬学実践問題 /
問256-257
一般問題(薬学実践問題)
【薬理、薬剤/実務】
■複合問題|問 106-256-257
Q. 24歳女性。身長156cm、体重40kg。以前より労作性の息切れを自覚していた。出産後に血圧低下、呼吸状態の悪化を来し、スクリーニングの結果、肺高血圧症と診断を受け、以下の処方で治療を開始した。
(処方)
フロセミド錠|20mg|1回1錠(1日1錠)|
エプレレノン錠|50mg|1回1錠(1日1錠)|
タダラフィル錠|20mg|1回|2錠(1日2錠)|
1日1回 朝食後 7日分|
ボセンタン錠|62.5mg|1回|2錠(1日4錠)|
1日2回 朝夕食後 7日分|
点滴静注|
エポプロステノール静注用1.5mg
(1.5mg/バイアル 3本)4.5mg
生理食塩液|300mL
流速|3mL/hで持続投与
薬理
問 106-256|薬理
Q. 薬物の作用機序に関する以下の記述のうち、処方薬のいずれにも該当しないのはどれか。1つ選べ。
■選択肢
1. 血管平滑筋において、ホスホジエステラーゼⅤを阻害し、細胞内サイクリックGMP(cGMP)の分解を抑制して、血管を拡張させる。
2. 集合管において、アルドステロン受容体を遮断してNa+/K+交換系を抑制し、利尿効果を示す。
3. エンドセリンETA受容体を選択的に遮断し、エンドセリン-1による血管収縮を抑制する。
4. プロスタノイドIP受容体を刺激し、細胞内サイクリックAMP(cAMP)産生を促進させて血管拡張作用と血小板凝集抑制作用を示す。
5. ヘンレ係蹄上行脚において、Na+-K+-2Cl-共輸送系を阻害し、対向流増幅系を抑制する。
Here:
松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問 106-256-257【薬理、薬剤/実務】論点:肺高血圧症 / 薬理作用 / フロセミド / エプレレノン / タダラフィル / ボセンタン / エポプロステノール / トルバプタン / アスパラギン酸カリウム / リオシグアト|matsunoya
実務
問 106-257|実務
Q. 経過観察のため受診したところ、肺機能については改善を示しつつあるが、顔面や四肢のむくみなど未だ改善が見られない症状を認めた。さらに、生化学検査のうち血清カリウム値が4.1mEq/Lから3.0mEq/Lに低下していたことから、薬剤師が医師から処方について相談された。以下のうち、最も適切な提案内容はどれか。1つ選べ。
■選択肢
1. トルバプタン錠の追加
2. エポプロステノール静注用の増量
3. フロセミド錠の増量
4. アスパラギン酸カリウム錠の追加
5. リオシグアト錠の追加
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問 106-256-257【薬理、薬剤/実務】論点:肺高血圧症 / 薬理作用 / フロセミド / エプレレノン / タダラフィル / ボセンタン / エポプロステノール / トルバプタン / アスパラギン酸カリウム / リオシグアト|matsunoya
■■GPT4o
■問 106-256|薬理
■論点|
この問題の論点は、肺高血圧症治療薬の作用機序と選択的エンドセリン受容体遮断の有無を特定することです。
■解説1|
エンドセリンETA受容体を選択的に遮断し、エンドセリン-1による血管収縮を抑制する。(選択肢3) [誤り]
ボセンタンは、エンドセリン受容体拮抗薬(Endothelin Receptor Antagonist, ERA)であり、ETA受容体とETB受容体の両方を遮断する非選択的拮抗薬である。
エンドセリン-1(ET-1)は、主にETA受容体を介して血管収縮作用を示し、ETB受容体を介して血管拡張作用を示す。
アンブリセンタンやマシテンタンはETA受容体を選択的に遮断するが、ボセンタンは非選択的にETA/ETBを遮断するため、記述が誤り。
■解説2|
エンドセリン(ET-1)は血管収縮作用を持ち、肺高血圧症(PAH)の病態に関与。
ETA受容体:血管平滑筋に存在し、ET-1による強力な血管収縮を媒介。
ETB受容体:血管内皮細胞に存在し、一部の血管拡張作用(NOやプロスタサイクリンの産生促進)を媒介。
ボセンタンの特徴
ETA/ETBを非選択的に遮断 → ET-1による血管収縮を抑制しつつ、一部の血管拡張作用も阻害。
肝酵素上昇の副作用 → 肝毒性リスクがあるため定期的な肝機能モニタリングが必要。
■結論|
ボセンタンは「ETA受容体を選択的に遮断する」薬ではなく、「ETA/ETB受容体を非選択的に遮断する」ため、本記述は誤り。
よって、処方薬のいずれにも該当しない選択肢は「3」となる。
■補足|
血管平滑筋において、ホスホジエステラーゼⅤを阻害し、細胞内サイクリックGMP(cGMP)の分解を抑制して、血管を拡張させる。(選択肢1) [正しい]
タダラフィル(PDE5阻害薬)に該当。
PDE5阻害によりcGMPの分解を抑制 → 平滑筋弛緩 → 血管拡張。
集合管において、アルドステロン受容体を遮断してNa+/K+交換系を抑制し、利尿効果を示す。(選択肢2) [正しい]
エプレレノン(アルドステロン拮抗薬)に該当。
集合管でNa+再吸収を抑制し、K+保持作用を持つ → 高血圧や心不全の治療に使用。
プロスタノイドIP受容体を刺激し、細胞内サイクリックAMP(cAMP)産生を促進させて血管拡張作用と血小板凝集抑制作用を示す。(選択肢4) [正しい]
エポプロステノール(PGI2製剤)に該当。
IP受容体刺激によりcAMP上昇 → 平滑筋弛緩(血管拡張)+ 血小板凝集抑制作用。
ヘンレ係蹄上行脚において、Na+-K+-2Cl-共輸送系を阻害し、対向流増幅系を抑制する。(選択肢5) [正しい]
フロセミド(ループ利尿薬)に該当。
Na+-K+-2Cl-共輸送系阻害によりNa+再吸収を阻害し、利尿作用を発揮。
■問 106-257|実務
■論点|
この問題の論点は、肺高血圧症治療における利尿薬の適切な調整と低カリウム血症の管理です。
■解説1|
トルバプタン錠の追加(選択肢1) [正しい]
患者の症状
顔面や四肢のむくみ(浮腫) → 体液貯留の可能性。
血清カリウム低下(4.1 mEq/L → 3.0 mEq/L) → 低カリウム血症の進行。
既存処方:フロセミド(ループ利尿薬)+エプレレノン(カリウム保持性利尿薬)。
トルバプタン(バソプレシンV2受容体拮抗薬)の特徴
遠位尿細管・集合管での水再吸収を抑制(Na+排泄を抑えつつ水分のみ排泄)。
浮腫改善:ループ利尿薬と異なり、ナトリウム喪失を抑えつつ、利尿作用を発揮。
低カリウム血症リスクが少ない → カリウム喪失を抑えられるため、適切な選択肢となる。
■解説2|
肺高血圧症患者における利尿薬調整の重要性
適切な体液管理が必要:過剰な利尿は低血圧や電解質異常を引き起こす。
ループ利尿薬(フロセミド)はカリウム喪失を伴う → 低K+血症を悪化させる可能性。
トルバプタンはNa+排泄を抑えながら水分排泄を促すため、電解質バランスを維持しやすい。
■結論|
トルバプタンの追加は、浮腫の改善と低カリウム血症の悪化防止の両方に寄与するため、最も適切な選択肢。
■補足|
エポプロステノール静注用の増量(選択肢2) [誤り]
肺高血圧症の治療薬として使用されるが、むくみや低K+血症の改善には直接関与しない。
フロセミド錠の増量(選択肢3) [誤り]
既にループ利尿薬を使用しており、増量すると低K+血症が悪化するリスクが高い。
アスパラギン酸カリウム錠の追加(選択肢4) [誤り]
低K+血症の対症療法にはなるが、浮腫の改善には寄与しないため根本的な解決にはならない。
リオシグアト錠の追加(選択肢5) [誤り]
リオシグアト(可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬)は肺高血圧症の治療薬だが、浮腫や低K+血症への直接的な効果はない。
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第106回薬剤師国家試験|薬学実践問題 /
問256-257
一般問題(薬学実践問題)
【薬理、薬剤/実務】
■複合問題|問 106-256-257
Q. 24歳女性。身長156cm、体重40kg。以前より労作性の息切れを自覚していた。出産後に血圧低下、呼吸状態の悪化を来し、スクリーニングの結果、肺高血圧症と診断を受け、以下の処方で治療を開始した。
(処方)
フロセミド錠|20mg|1回1錠(1日1錠)|
エプレレノン錠|50mg|1回1錠(1日1錠)|
タダラフィル錠|20mg|1回|2錠(1日2錠)|
1日1回 朝食後 7日分|
ボセンタン錠|62.5mg|1回|2錠(1日4錠)|
1日2回 朝夕食後 7日分|
点滴静注|
エポプロステノール静注用1.5mg
(1.5mg/バイアル 3本)4.5mg
生理食塩液|300mL
流速|3mL/hで持続投与
薬理
問 106-256|薬理
Q. 薬物の作用機序に関する以下の記述のうち、処方薬のいずれにも該当しないのはどれか。1つ選べ。
■選択肢
1. 血管平滑筋において、ホスホジエステラーゼⅤを阻害し、細胞内サイクリックGMP(cGMP)の分解を抑制して、血管を拡張させる。
2. 集合管において、アルドステロン受容体を遮断してNa+/K+交換系を抑制し、利尿効果を示す。
3. エンドセリンETA受容体を選択的に遮断し、エンドセリン-1による血管収縮を抑制する。
4. プロスタノイドIP受容体を刺激し、細胞内サイクリックAMP(cAMP)産生を促進させて血管拡張作用と血小板凝集抑制作用を示す。
5. ヘンレ係蹄上行脚において、Na+-K+-2Cl-共輸送系を阻害し、対向流増幅系を抑制する。
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実務
問 106-257|実務
Q. 経過観察のため受診したところ、肺機能については改善を示しつつあるが、顔面や四肢のむくみなど未だ改善が見られない症状を認めた。さらに、生化学検査のうち血清カリウム値が4.1mEq/Lから3.0mEq/Lに低下していたことから、薬剤師が医師から処方について相談された。以下のうち、最も適切な提案内容はどれか。1つ選べ。
■選択肢
1. トルバプタン錠の追加
2. エポプロステノール静注用の増量
3. フロセミド錠の増量
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薬学実践問題 第106回薬剤師国家試験 全50問
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