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こどくのち#13 【#創作大賞2026 #ホラー小説部門】

#創作大賞2026 #ホラー小説部門


川を渡ってからは早かった。
少し歩き、崖が出てくると、
土御門の話通り崖に沿って出来た坂道を下る。

崖の中腹に来た時、
壁に埋め込まれた造りの祠が現れた。
吊り橋の近くにあった祠と同じ作りのようで、
屋根が軒のように出ており、
格子型の木の扉が嵌め込まれている。

「これだな」
格子型の扉の奥を覗くと、
中には一振りの日本刀が祀られていた。

真っ黒な鞘に、同じく黒い柄が収まり、
得体の知れない動物の角の様な物で出来た台座に
鎮座するそれは、禍々しい雰囲気を纏っている。

「さっさと回収して戻ろうぜ」
健太の一言で決心のついた悠真は刀に手を伸ばす。

鞘を掴み、台座から持ち上げた瞬間。
ブワッと祠の奥から風が吹いた感覚を覚えた。

慌てて隣に立つ健太を見るが、
ポカンとした顔を見て
自分の勘違いかと思い直す。

そして再び坂を登り、
森に出た途端4人は驚愕した。
「!?!?」
森の中、木々の間を埋め尽くす様にして、
大勢の人々が立っていたのだ。

それらは老若男女を問わず、
皆一様に生気のない青白い顔をして、
ふらふらと揺れている。

「くそっ!今度はなんなんだよ!?
 てかいったい何人いるんだよ!」

後ずさる4人だったが、
それに合わせるようにその集団が
俯いたまま、すーっと滑るように
近づいて来た事で、
この世の者ではない事を確信する。

4人は完全に取り囲まれていて、
崖の方にジリジリと追い詰められる。

「そうだ、刀だ!御守りになるって
 ミカドさんが言ってたろ!?
 うおーっ、行けーっ!!」
悠真は刀を抜くと、
振り回しながら集団に突っ込んで行った。

悠真の読みは当たり、
刀に触れた人はその瞬間
風に掻き消された煙の様に消えた。

しかしすれ違い様に見たその表情は
何故かどこか優しく、
悲哀に満ちたものに感じたのだった。

そしてそのまま4人は、元来た道を引き返し、
集落へと戻って行った。


――――――――――――


ドンドンドンドンッ!
土御門の家の扉をノックする悠真。
「ごめんくださいっ!ミカドさん、戻りました!」

ガラガラと戸が開いて中から土御門が
ひょっこり飛び出して来る。

「おー、良く生きて帰って来てくれたのぉ。
 心配しとったぞ、ささ、入れ入れ」

家に上げてもらうと、急に安心感につつまれた。
部屋の隅に寝かせてもらっていた翔は、
変わらず寝たきりでぶつぶつ呟いていた。

「無事で良かったのぉ!
 ひとまずこちらへ座って少し休みなさい」

土御門の優しさに促されて床に座る一同。
今までの事を思うとこの部屋が
まるで聖域のように思えた。

悠真達はこの家を出てからの
一部始終を土御門に話した。

「何と!?無我夢中で逃げたのち広場へ出て
 土龍(ドリュウ)に会うたのに、
 見事生きて帰って来たのか!?
 そなたら、、、よう頑張ったのぉ」

"よく頑張ったな"
その一言が悠真の気を少し楽にしてくれた。
人は他人に自分の苦労を認めてもらうと、
こんなに報われるのかと感じたのだった。

「ミカドさんがくれたお札のお陰です。
 ありがとうございました」
悠真が頭を下げると土御門は嬉しそうに頷いた。

「あの!あの恐ろしい化け物は
 土龍というのですか?」
直人が興味津々に食いついた。

「あぁ、あれはこの牢獄で産まれた怪異でな。
 この地で戦で殺された魂の集合体なんじゃ。
 言い伝えによると、我らが先祖が
 あの龍を祓いに行ったが、
 力が強すぎた為諦めてこの地に封印した。
 それがこの地の始まりなんだそうじゃ。
 土地神と変わらん、いわば最強の怪異じゃな」

悠真は土御門の前に刀を差し出す。
「ところでミカドさん、
 この刀を持って来たんですが。
 これで良かったですか?」

土御門は、顎に手を添え
悠真の握った刀をシゲシゲと見つめる。
「うむ、これじゃ、間違い無い。
 これこそが我々土御門家が使う封魔の刀じゃ」
土御門はニッコリと優しい笑みを浮かべる。

「おっ、そうじゃそうじゃ」
と思い出したように家の奥に引っ込むと、
暖かいお茶を淹れて戻り、全員に配っていった。

「美味しい、、」
美咲が久しぶりに口を開いたかと思い見ると、
涙が頬を伝っていた。

無理もない、20歳そこそこの若い女の子が、
連続して死の危機に晒されてるんだ。
恐怖に発狂してもおかしくない状況だろう。

そう考えると、無性に沙紀が心配になった。
「ミカドさん!
 この刀があれば崖の下に行けるんですよね!?
 どうやってこれで行くんですか?
 教えて下さい、お願いします!」

焦る気持ちが悠真を突き動かしていた。
「うむ、そうじゃったの!
 えっと、、、
 そう言えば、まだお主らの
 名前を聞いとらんかったの?」

今か?と言いたくなったが、
確かに会話がしにくいと思い直し答える。

「悠真です」
「直人です」
「美咲です」
「健太っす。
 土御門さんも呼びにくいから、
 下の名前で呼んでいいすか?」

「うむ、いいとも。
 わしは土御門沙右衛門(ショウエモン)と申す」
 そう言ってニカっと笑った。

「下も長いのかよ」
健太は面倒くさそうに呟いたのだった。


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