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こどくのち#16 【#創作大賞2026 #ホラー小説部門】

#創作大賞2026 #ホラー小説部門


講義が始まる前の講堂の片隅で
静かに雑誌を読んでいた直人。

「あ、月刊モーじゃん。
 君、オカルト好きなの?」

突然話しかけてきた元気なやつ。
横目で見て無言で頷く直人。

「俺も好きなんだ!
 おれ悠真、宜しくな!
 チュパカブラとかスカイフィッシュとか
 UMAが大好きでさぁ」

「俺はもっと霊的な物だったり、
 秘密組織とかが好きなんだよね」

「わかる、カンカンダラとかアツいな!」
「サイコー」
猫背でサムズアップする直人を見て
快活に笑う悠真。
つられて直人も笑っていた。

大学に入るまで友達ができた事が
無かった直人にとって、
悠真は初めて出来た友達だった。

その後悠真の誘いで入ったアウトドア愛好会は、
何人たりとも断らない開けたグループだった。

全員一見は、陽キャでスクールカースト
トップの様な雰囲気だったが、
何の偏見もなく付き合ってくれる
良い奴らだった。

直人がオカルトが好きだと言ったら
皆が興味津々で色々と聞いて来てくれたし、
直人おススメの心霊スポットにも
全員で行ってくれた。

それまで友人なんていらないと思っていた直人は、
悠真達と出会えて友人が出来た事で、
人と関わる事の素晴らしさに
気付く事が出来たのだった。

そしてこの三年間は、
直人の人生において最高の時間となり、
この幸せがいつまでも続けばいいと思った。

そして、この友人達は命に変えても
護りたいと強く感じたのだった。

これからも一生付き合っていきたい最高の仲間達。
そのうちの二人が、今無残な姿となって、
直人と悠真の前に立ちはだかった。


「くそ、最悪だな」
悠真の顔には悔しさが滲み出ていた。
「あぁ、最悪だよ」
直人も土龍の顔をじっと見つめた。

「いよいよ2人になっちまった」
絶望に対して感覚が麻痺したのか、
まるで下校途中の河川敷での会話の様な
軽い口調で話す悠真。

「最後で本当に一人しか駄目だったら、、、
 いや、やめとこう。
 こうなりゃやるしか無い。
 必ず二人で脱出しようぜ」

悠真の言動に、一瞬迷いを見つけた。
もしかして、自分を囮にして逃げようと
してるのでは?
と疑問が浮かんだ直人だったが、
悠真を少しでも疑う自分自身に腹が立った。

「あぁ、必ず二人で」
直人は自分を鼓舞した。

「俺が刀で土龍を抑えるから、
 直人は入り口を探してくれ」
直人が頷くと、悠真は土龍へと踊り掛かる。

まるで漫画の主人公の様に土龍を刀で翻弄し、
バッサバッサと斬り倒す、とはいかず、
あっさりと吹き飛ばされた悠真。

「悠真!!ぐっ!」
心配して目を離した直人も横っ腹に一撃を喰らい
悠真の元へと吹き飛ばされる。

刀はあるがどうしたらいいのか。
目の前の、おぞましく恐怖を駆り立てる存在に、
抑えこめるイメージが全く湧かない。

重なり倒れた二人に、
健太と美咲の顔が近づいて来る。

二人の顔は、口端が千切れるほどに口を開けた。
健太の頭が悠真に食らいつこうとした時、
急に視界から消えた。

健太を探す様に美咲が横を向くと、
棒の様なものが凄い勢いで
美咲の頭を叩き割った。

痛みを感じているのか、
のたうつような動きをする土龍。

何が起きたんだ?
棒が出て来た方を見た悠真。
「沙右衛門さん!?」

そこには、お札を貼った木の棒を持った
沙右衛門が仁王立ちしていた。

「言ったじゃろ?
 わしの仕事はそなたらを逃がす者じゃて」
二人に向かって気持ちの悪いウインクを放つ。

悠真は沙右衛門を少しでも疑った事を後悔した。
この人はずっと寄り添ってくれていた。
この人がいたからここまで来れた。

そんな感謝の念が胸に溢れたのも束の間。
沙右衛門は脚に絡みついた尻尾に持ち上げられた。
「沙右衛門さん!」

叫んだ悠真の目の前の地面に
叩き付けられて動かなくなった沙右衛門。

悠真は怒りに震え、土龍を斬りつけた!
首の途中にあたる頭を傷付けられた土龍は、
よろよろと後ずさると、大木の横に片膝をついた。
効いている!?

「あっ!?あれは!」
土龍の横、大木の木の根の間に、
ぽっかりと穴が開いていた。
その中に深淵が広がっている事で確信して走る。

そして二人で入ろうとしたその時、
土龍が悠真の服を噛んで投げ飛ばした。

「悠真!!このくそ野郎がっ!」
直人は沙右衛門の持っていた木の棒で
土龍を叩いて穴から遠ざける。

悠真は痛む身体に鞭打って立ち上がる。
そして直人に駆け寄ろうとした
悠真に向かって叫ぶ直人。
「来るなっ!!行け!!」

「何言ってるんだ!お前も来い!」
悠真は心の底から叫んだ。

「いいから行け!悠真!
 俺をここまで連れて来てくれてありがとう!
 お前のおかげで最高に楽しかった!
 元気でな!!
 おりゃーっ!!」

土龍を押し込んでいく直人はとても勇ましかった。
「早く行けっ!悠真!時間が無いっ!
沙紀を助けてやれ!」
叫んだ直人の首に健太の頭が噛み付いた。

「くそっ!絶対に生きて追ってこいよ!?」
直人は振り向かず拳を突き上げた。
悠真は穴へと走る。。
あと少し。

視界の隅から美咲の頭が飛び出て来た。
悠真の方に向き直り、
口を大きく開いて襲い掛かる。
悠真は走りながら刀を構える。

刹那、美咲の頭は反対側から出て来た
沙右衛門に殴り飛ばされた。
「行くんじゃ!悠真!」

助けられてばっかりだ。
2人の気持ちに目頭が熱くなって、
拭いながら走る。

悠真はそのまま走り抜いて穴へと滑り込んだ。
「ありがとう!直人!沙右衛門さんっ!」
悠真は穴の中を走った。

成人男性が余裕で通れる程の高さがあり、
入ってすぐ下り坂になっていたそこは、
地面奥深くへと降りていった。

「はぁっ、はぁっ、はあっ」
やがて下り切った先は、
崖の下の河原だった。

川に沿って橋があった場所に急ぐ悠真。
「沙紀ーっ!!」
叫びながら走る。

やがて目の前に現れた、
ぐしゃぐしゃになった橋の残骸。
川を跨ぐように横たわっている。

そしてその傍、対岸にうつ伏せの人。
死体だと直感したのは、
頭から真っ赤な花が咲いた様に血と脳漿が
飛び散っていたからだった。

「そ、そんな、、」
死体が着ていたのは、沙紀が着ていた服だった。
あぁ、顔は原型をとどめていないのだろうな。

悠真はそれ以上近づく事が出来なかった。
信じたくなかった。
このまま脱出出来たとして、
何の為に生きて行くんだ?
諦めが悠真の心を侵蝕していく。

「行けっ、悠真!!」
直人の声が頭中に響き渡った。

自分は生かされたんだ。
諦めるわけにはいかない!
悠真は口をきっと結び出口を目指した。
その眼からはとめどなく涙が溢れていた。


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