こどくのち#17【#創作大賞2026 #ホラー小説部門】
【桜ヶ丘中学校殺傷事件・捜査報告書抜粋】
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■事件発生日
平成○年○月○日
■発生場所
滋賀県○○市立桜ヶ丘中学校
■被疑者
貞松 弘 (43)
貞松 琴美(41)
貞松 弘一(14)
■概要
上記三名は共謀の上、刃物及びボウガン等を用いて桜ヶ丘中学校へ侵入。校内にいた生徒及び教職員を次々と襲撃し、生徒10名、教職員5名を
死亡させた。
犯行後、三名は校舎二階特別棟廊下にて呆然と
座り込んでいるところを、突入した県警特殊部隊員によって身柄を確保された。
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【家宅捜索状況】
被疑者宅ダイニングテーブル上には、
複数の凶器が整然と並べられていたことが
確認された。
押収物は以下の通り。
・鉈 1本
・包丁 1本
・果物ナイフ 2本
・斧 4本
・大ハンマー 4本
テーブル配置状況から、事前に計画的準備が
行われていた可能性が高い。
また、近隣住民証言によれば、事件前夜、
宅内から笑い声が聞こえていたという。
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【供述記録】
逮捕直後、被疑者・貞松弘は興奮状態と
放心状態を断続的に繰り返していた。
取り調べ時、被疑者は終始意味不明瞭な発言を
続けていたが、その中で複数回、
以下の人物の名を口にしている。
「カッピョウ」
被疑者供述抜粋:
「彼が、カッピョウが言ったんだ。
家族四人が幸せに暮らすには、
こうするしかないって」
「カッピョウは間違えない。
だから、みんな救われたんだ」
なお、“四人家族”との発言については、
貞松家は弘、琴美、弘一の三人家族であり、
確認されていないもう一名の存在を
示唆している可能性がある。
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【備考】
被疑者一家に精神疾患歴は確認されていない。
また、現場となった桜ヶ丘中学校周辺では、
過去にも複数件の不可解な失踪・精神錯乱事案が
発生しているが、
本件との関連性は不明。
現在、該当資料は閲覧制限対象となっている。
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鬱蒼とした森の奥。
そこは人々の生活の匂いは届かず、
手付かずの野生が息づいていた。
しかしそのまた奥からは
今まさに命の取り合いをする、
激しい息遣いが聞こえて来る。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ。
宗則(ムネノリ)大丈夫か?」
土御門宗則は振り向かずに親指を立てた。
「あーかったるいわ。
こいつクソやな。
やっぱ山ノ怪捕獲任務なんか
参加するんや無かったわ」
2人の前に立つまっ白な存在。
「世間的にはクネクネって言うらしいぞ、
そう呼んだらちょっと弱く感じるかも
しれないな」
「冗談言うとる場合ちゃうで、兄さん。
このままやと全滅してまうで」
まさに惨劇。
2人の周りには、狩衣に身を包んだ陰陽師
5人が横たわっていた。
白目を剥いて痙攣する者、刀傷がある者。
口から血を流している者。
「さっきので感覚は掴んだ。
次は必ず決めるわ」
「へいへい流石、
沙右衛門兄さん頼りにしてまっせ」
「よし、無駄口は終わってからだ!
おそらく次が最後のチャンスだ。
気合い入れていくぞ」
宗則は頷くと次の瞬間、
小刀で足元の木の人形を刺した。
そして顔の前で中指と人差し指を揃えて立て、
祝詞を唱える。
「いいぞっ!」
動きを封じられたクネクネは窮屈そうに身を捩る。
すかさず沙右衛門が手にした刀で切り付ける。
しかしクネクネは体を捩り躱す。
それを見越して返す刀で一閃振り抜いた!
一太刀を浴びたクネクネは、体制を崩すと
祝詞に合わせて次第に動きを激しくさせ
やがて煙となり木の人形に吸い込まれて行った。
「やっ、やったぁ〜っ。
山ノ怪を封じてやったで〜」
2人はその場で大の字に寝転んだ。
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「良くやった。
沙右衛門、宗則。
お前達2人だけでも生きて帰って来てくれて
本当に良かった」
広い座敷の部屋で、土御門家9代目当主である
土御門実朝(サネトモ)は
2人の肩に手を乗せて微笑んだ。
「ありがとう御座います。
その"山ノ怪"はこちらに封じております」
沙右衛門はしめ縄で縛った桶を差し出した。
「おぉ、これがかの有名な山ノ怪か。
とんでもない邪気を放ってるな」
実朝は桶を持ち上げると、じっくり観察した。
「はい、本当に危ういところでした。
ところで父さん、それはやはり
あの砦へ封じられるのですか?」
沙右衛門の言葉に、実朝は
不思議そうな表情を作る。
「あぁ、もちろん、これほどのものなら
あの地に封じるのが最良だろうからな」
実朝は細い息を吐いた。
「そして、我々 八咫烏 が
管理していかねばなるまい」
すると沙右衛門が居住まいを正す。
「お言葉ですが父さん。
山ノ怪はあの地には封じない方が
良いかと思います」
その言葉に、隣に座っていた宗則も
驚いたように見つめる。
「なに、どうしてだ?」
「最近、墓守を担当している浅井から
あの地に封じた怪異達が、
減っていると連絡があり調査しました」
「逃げたと言うのか?」
「いえ、ご存知の通りあの地の結界は強力ですし、
間違いなく現役で効いてます」
なお分からないと実朝の顔に書いてある。
「そうでは無く、互いに喰らいあっていたのです」
二人の顔には驚愕が張り付いていた。
「そして、生き残った怪異は間違い無く、
あの地に封じられた時より
力を増しているとの事、、、」
「力を増すだと?それは本当か?」
「墓守が感じた事だけですので、
絶対とは言えません。
ただ、あいつには霊力を推し量る力がある。
本当にそうなら、
あの地をこのまま牢獄に使用し続けるのは
危険を伴うかも知れません」
沙右衛門は力強い眼で実朝を見つめた。
「確かに、お前が言う通りだとしたら、
このレベルの物怪を封じるのは
リスクがあるか、、」
実朝は眉間に皺を寄せた。
「しかし、逆にこのもはや神と崇められる程の
存在を封じる事ができる場所が
他に無い事も事実。
それこそ下手な場所へ置いたら、
とんでもない事になるからな。
やはりあの結界の中に置くしかない、、、」
広間を後にした2人は屋敷の廊下を歩く。
「さっきの話、ホンマやったら確かにヤバイな」
宗則は頭の後ろで手を組んだ。
「ああ、もう限界が来ているのかも知れないな」
その試みは自体は順調であった。
土御門家の伝説的な陰陽師、
土御門茂晴が約400年前に作った結界。
それは、外から入れ易く、
中からの流出を一切許さなかった。
その力を利用して現在に至るまで、
放置すれば、人々にとって災いとなる物怪達を
次々に捕らえ、送り込んでいった。
「あの土地には、
数世紀という膨大な時間をかけて、
膨大な数の怪異、霊、妖怪などを突っ込んだ。
そいつらが互いに殺し合い、
喰い、取り込む事で、
その中で力のあるものが
生き残り、その力を増していった」
「よー考えてみたら。
それはもはや、蠱毒、やないか。。」
宗則が気付いたように目を見開く。
「ああ、そういう事だ。
だから組織はあんな名前を付けたんだよ。
そのまますぎるやろ?
"蠱毒の地:こどくのち"
なんてな」
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