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こどくのち#3【#創作大賞2026 #ホラー小説部門】

#創作大賞2026 #ホラー小説部門


ー1ヶ月後ー

「うわっ、やばぁーっ!」
大学の駐車場に集まった7人は、
翔がレンタルしてきた
新型アルファードを覗き込み
歓喜の声を上げた。

「へへっ、だろっ?
 やっぱ最後だから、最高で快適な旅が
 したいと思ってさ、奮発したぜ。
 見ろよこのレザーシート、
 高級感やばいっしょ!?
 でさでさ、サンルーフもあるんだぜ!」
お調子者の翔は鼻高々で、
まるで自分の車のように説明を始める。

「もう良いから早く出ようぜ」
せっかちな健太が翔の尻を叩く。
「だな、では健太殿、運転宜しく頼むぞ」
「へーへー」健太が運転席に乗り込むと
 美咲が助手席に乗り込んだ。

「では近江の地へいざ出陣じゃ!」
翔の掛け声で7人の旅は始まった。
「でさー、みさこがさー」
美咲は運転中の健太の横顔に、
容赦無く近況をぶつけている。

健太は興味なさげにふーんと呟きながら、
まっすぐ前を向いて運転している。

「悠真、これ食べる?」
沙紀がポテトチップスの
袋の開け口を悠真に向ける。
「サンキュー」
悠真は数枚取って頬張る。

「ん、九州醤油味?めっちゃうまいなこれ」
「でしょう?私一番好きなの」
沙紀はご機嫌で自分の口に放り込む。

「良いねーっ!ミセスアンドミスターアップル!
 めっちゃテンション上がってきた」
ドライブにぴったりの疾走感のあるメロディに
甘い歌声で流行っているロックバンドの曲が流れ
優奈は身体を揺らしてノっている。

「ったく、真ん中で踊らんでくれよ」
最後部の三人掛けシートでは
翔、優奈、直人が並んで座っていたが、
中心に陣取るパリピのせいで
両サイドは肩身が狭いようだ。

「あんたも踊りなよ、ノリ悪りぃなぁー」
優奈に言われて陽キャの矜持に触れたのか、
「上等だよ」と言うと負けじと翔も踊り出す。
反対側の直人は、何事もない様に
派手な表紙の本を読み耽っている。

それは気の知れた仲間達や、
愛する人と過ごす尊く幸せな時間だった。

「ふー、あと一時間かぁ、やっぱ遠いなぁ」
信号待ちで健太は、
ハンドルに突っ伏し溜息を吐いた。
ふと見上げたルームミラーに
派手な色が映り込む

「直人、その派手な本は何だよ?」
直人はニヤリと片笑み表紙を見せる。
"近畿地方の最恐怪異"という文字が
おどろおどろしい書体で描いてある。

「お前好きだよなぁ、まったく。
 ちなみに最恐の怪異ってなんだよ?
 ゲゲゲの鬼太郎か?」

 美咲にもらったチョコレートを
 口に放り込みながら健太が聞く。

「ふふ、気になったかね健太君?」
キラリと光る目で眼鏡を押し上げる直人。

「そうだねぇ、一概には言えないだろうが、
 色んな漫画やアニメで大妖怪とされて
 ラスボスになったりするのでいえば
 "ぬらりひょん" とかだろうか?」

「あー、なんか聞いたことあるな。
 妖怪の名前だったのか。
 居酒屋か何かかと思ってたわ」
すっとんきょうな答えに、
やれやれと首を振る直人。

「そもそもの言い伝えでは、
 民家に勝手に上がり込んで家族と認識させて
 その家を乗っ取るという支配系の妖怪さ。
 その能力から支配者としてのイメージが
 あるのかも知れないね」
前を向いたままふーんと口を尖らせる健太。

「あと最近の都市伝説系ならカシマレイコや、
 クネクネも強いんじゃないかな。
 もはや土地神として崇められるレベルだね!
 それと昭和でいったらトイレの花子さんとか、、」

「よし、じゃあ俺ももっと鍛えて強くなって、
 崇められるようになるか!はっはっ!」
白熱して来た妖怪談義を、
強制的に遮断する様に大声を出す健太。
直人はすっと、また読書に戻る。


やがて東京を出発して約5時間、
予定ではそろそろ目的地のグランピング施設に
到着する時間となり、
皆の顔にも疲れの色が漂い始めた頃だった。

「ねぇー、沙紀本当にこっちで大丈夫なの?」
 気付いたら左右の木立と車の距離は、
 ギリギリまで迫っており、
 美咲は不安そうに窓の外を眺める。

「うん、多分、大丈夫だと思うんだけど、、、
 あ、次を左!」
 スマホの上で指を滑らせる沙紀。

「うわっ、マジ狭い、絶対やべえだろこの道。
 たく、沙紀が近道あるよなんて言わなけりゃ
 今頃着いてるんじゃねぇのー?
 翔、枝の小傷くらいは何も言われねーよな?」
健太が慎重にハンドルを切り、
道に攻め込んできている枝を避ける。
「あぁ、飛び石でのバンパー傷や、
 小枝の傷くらいは大丈夫だよ」

携帯ナビで近道を見つけた沙紀の
言う方に進んだ車は不穏な雰囲気の
山道に入り込んでいた。

「ごめん、ちょっとした道だと思ったんだけど、、」
いよいよ舗装も無くなり砂利道となって
車内にも焦りと不安が充満している。
今にも泣きそうな顔で必死で、
不安を紛らわす様にスマホをスクロールする沙紀。

「まぁ、良いじゃん。
 そのうち必ず脱出出来るし、
 これもいつかきっと、
 あん時はヤバかったよななんて笑い話になるさ」
これ以上沙紀が責められ無いように
フォローに入る悠真は、
運転席と助手席の間から
ひょっこり頭を出して笑う。

「うわ……圏外じゃん。
 もーさっきまで繋がってたのにー。
 圏外は私の生息圏外だっての」
最後部に座る優奈はスマホを何度も
タップした後、項垂れた。

「確かに悠真の言う通り、
 こういうのも旅の醍醐味だよ!
 そして圏外という絶海の、いや陸の孤島状態。
 ここは一つ、呪われた館でも出て来た日には、
 興味本位で近づいて、
 パニックホラーと化すのも一興か、くくっ」
オカルト好きの直人だけは嬉しそうにしている。

「いや、嫌な冗談言うなよな。
 山で迷うのは普通に危ないだろ……」
と健太が小さく呟いたその時。

「あ……あれ」
窓の外を見ていた美咲が、小さく声を漏らした。
つられて全員が窓の外を見る。
「ちょっ!なんだあれ?健太、止めてくれ」
興奮した直人が急に叫び、ブレーキを踏む健太。
未舗装の砂利道ではタイヤが砂利を噛む音が
やけに大きく響いた。

ドアを開け飛び出していった直人。
「うわっ!やばぁー!なにあれ?
 めっちゃそれっぽくない?
 バズりそー」

優奈が口に手を当てニヤニヤしながら車を降りる。
その後を、仕方ないといった調子で
着いていく5人。
すると、直人が足を止めた場所に集まった
7人の若者はその異様な雰囲気に息を呑んだ。


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