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こどくのち#15 【#創作大賞2026 #ホラー小説部門】

#創作大賞2026 #ホラー小説部門


「ねぇ悠真、サークル活動の最後の思い出に
 どっか景色のいいところに行こうよ」
2人掛けのソファに寝転がり、
スマホゲームに夢中の悠真の顔を覗き込む沙紀。

「ん、いいね、どんな景色が見たい?」
悠真は手を止めて沙紀を見つめる。

「うーむ、そうだなぁ。
 あ、湖畔とか良いかも!
 1日目はバーベキューして、
 次の日の朝は静かな水面を眺めながら
 ヨガしたりとか?」

「良いね!
 みんなも好きそうじゃん」

「でしょ?流石私」
悠真は沙紀のしたり顔を両手で包むと、
優しく引き寄せて口付けた。

「それじゃあ今日の定例会で発案しますか」
沙紀はニコリと笑って頷いた。

「なんかさ、うちのサークルって
 本当の仲間って感じで居心地いいよね。
 何でだろ?」
言いながら沙紀は顎に指を添えて
眉間に皺を寄せた。

「そうだね、俺たちって結構
 サバイバルで危ない目に
 あったりして来たから、
 戦友って言ったら大袈裟かもしれないけど、
 小さな修羅場を一緒に潜った分、
 そこらのサークルの仲間よりは絆が強いかもね」

「家族みたいなもんか」
閃いた様に手を打つ沙紀。

「確かに、こんだけ会ってたら家族以上かも」
「よし!じゃあ家族会議に向かいますか!」
沙紀は高らかに拳を突き上げた。

――――――――――――

「これからの事は皆で良く考えて決めなさい」
そう言い残すと、少し散歩してくると
席を立つ沙右衛門。

「もし!もし二人以上で逃げ出したら
 どうなるんですか?」

悠真が投げかけた質問は、
返答次第では沙右衛門を、
国家を敵に回す危険性を孕んだ賭けだった。

しかし沙右衛門は微かに笑みを浮かべる。
「外に張られた結界に弾かれるんじゃ」
そう言って家を出ていった。

刀の重みだけが、やけに現実的だった。
鞘の冷たさが手に染み込む。
「……で、どうすんだよ」

自分が生き残る為には仲間ではいられない。
唯一の決定事項には救いが無かった。

「何も浮かばねーなら、取り敢えずばらけるわ」
「えっ!?」
健太の一言に美咲がバッと顔を上げる。

「誰かを犠牲にして1人助かるなんて無理だからよ。
 つってもこのまま考えても埒があかないから、
 何か他に抜け道がないか探してみるわ。
 そもそもあのおっさんが言ってる事が
 全部本当かも分からないしな」

確かに、健太の言う通り沙右衛門の話を全て
鵜呑みにして諦めるのもどうかと思う。

しかし沙右衛門の話以来、
どこか空気がギクシャクしてしまっているのを
感じていたのも事実だった為、
少し離れたい気持ちも分かるのだった。

「まてよ、1人じゃ危険すぎる」
悠真が止めようとするが、
ポケットからお札を取り出す健太。

「なに、こっちにはお札がある。
 それからさっき沙右衛門のおっさんが
 残りの二枚も追加で剥がしていいって 
 言ったから合計三枚になったんだ。
 これが無くなる前に戻るさ」

取り敢えずお前達はその刀が
あるから大丈夫だろ?
と言い振り返る健太。
「私も行く!!」
そう言って後を着いていく美咲。

「クソっ、どうすりゃいいんだよ」
助かる道はあるのに辿り着けないもどかしさに、
苛立ちだけが募っていった。

家を出た2人。
「取り敢えず崖沿いを探してみるか、、」
しばらく崖に沿って歩いてみるが、
それらしき道は見つからなかった。

歩き疲れて石に腰を下ろす二人。
「ほい、美咲ももってろよ」
そう言って健太はお札を2枚美咲に渡した。
「でも健太があと一枚に、、」

健太は美咲の頭を撫でながら優しく呟く。
「俺は大丈夫、絶対2人で一緒に出ような」

美咲は健太の胸に顔を埋めたまま激しく頷いた。
束の間の幸せが二人を包み込んだ瞬間だった。

しかしその空気を切り裂くかのように、
突然背後から金属が重なった様な音が響く。

ガシャッ、ガシャ、ガシャッ、ガシャ。
聞き慣れないその音に、
美咲と健太はバッと振り返る。

森の暗闇の中。
月の明かりが"それ"を照らし出した。

血濡れた色の甲冑。
朽ちた具足。
手には錆びた日本刀。
まさに戦国時代の鎧武者だった。

しかしここは怪異の牢獄。
それも普通であるわけが無かった。

「……は?」
健太の声が、掠れる。
それには頭が無かった。
そして首の位置、
そこから背骨のような物が突き出ていた。

黄ばんだ白が、まるで槍のように伸びている。
「……なんでもありかよ」
健太が、呟いた。
その瞬間。
“それ”が動いた。

ものすごい勢いで突っ込んで来た武者は
美咲目掛けて刀を振り下ろす!
が、間一髪で美咲が手に持ったお札が
燃えて動きが止まる。

その隙に健太が横から思いっきりタックルすると
武者は吹っ飛んだ。
しかし健太が持ったお札も燃えたのだった。
「逃げるぞ美咲!!」

二人は手を繋いで一心不乱に走った。
走れども走れども流れる景色は木々だった。
やがて森を抜け、開けた場所に出て来た。

目の前に広がった光景を見て健太は叫んだ。
「クソっ!!何でだよ!?
 こっちに来てねぇだろっ!!
 何でここに着くんだよ!馬鹿やろーがっ!!」

二人の目の前には二度と見たくなかった大木が、
聳え立っていた。

「はぁ、はぁ、はぁ」
膝に手を当て大木を見上げる健太。
ドスッ!!
鈍い音が自分の身体中に響いた。
「——っ!?」

健太が下を向くと、
胸から突き出たそれは、
真っ赤な血を纏い月明かりでキラリと光を放つ。

「あぁ、くそ、、なんだよ」
口から、血がこぼれる。
胸に突き立ったのは刀身だった。
「きゃーっ!!」美咲が叫ぶ。

最後のお札は、近くに落ちていた。
ズシャッと音を立て刀が、引き抜かれる。
健太は地面に膝をついた。

その背後には首の無い鎧武者が立ち、
まるで切腹した者と介錯人の構図となった。

「健太!!」叫ぶ美咲。
膝を着いて項垂れる健太。
刀を大きく振り返る鎧武者。
スローモーションで流れる時間。

こんなに非現実的な事が続くなら、
魔法も使えるかも?
時よ止まれ!!
美咲は現実逃避して心の中で叫んだ。

次の瞬間。
健太の首が飛んだ。

健太の身体は死んだ事を悟り
血を吹き出しながら力無く崩れ落ちた。
「キャーッ!キャーッ!」

泣き叫ぶ美咲の横で、
武者は興味なさげに
切り落とした健太の首を拾う。

そしてゆっくりと、
突き出た背骨に、突き刺した。

ズブリ、ズブリと気持ち悪い音を立て、
健太の首がそこに収まった。

鎧武者は美咲の方を振り返る。
健太の顔だ、しかし眼は光を失い、
口はだらしなく開いている。
眼、鼻、口から血が流れ出ていた。

もうどうでも良い、疲れた。
美咲の率直な感想だった。
腰が抜けて立てない。
目の前には刀を振りかぶった鎧武者。

その時広場に聞き覚えのある声が響いた。
カラカラカラカラ。
鎧武者と美咲は、同時に声の方を振り向いた。


美咲の叫び声を聞いて
広場の方に走った悠真と直人。
「まさか、何であっちに行ってんだよ健太!!」
広場に出ると案の定、そこには土龍がいた。

「あぁ、そんな、、」
先程会った時より絶望感が増した理由は、

片方の先端は健太の頭、
そしてもう片方の先端を担っていたのが、
美咲の頭だったからだった。


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