見出し画像

8/19 サマルカンド→バクー

前↓


アゼルバイジャン航空機はロシア軍の地対空ミサイル攻撃を免れ、2時間で無事にバクーに着陸した。朝5時。タシュケントぶりに「早朝に知らない街に放置される試練」に向き合わなければならず、多様は憂鬱な気持ちである。本来するはずのなかった徹夜であるためダメージが大きく、なんだか体調も悪い。
一旦出口付近に腰を落ち着け、さななと今後の動きを議論した(マサカリは移動日なのになぜか眠剤を飲んでしまいダウンしている)。多様は正直バクーにはそれほど興味がないため、市街地を軽く見た後今日中に次の町・シェキに移動してしまうという案を提案したが、さななが意外なプランを持ってくる。「ゴブスタン国立保護区」…先史時代の壁画や、泥火山で有名な世界遺産区域がバクー近郊にあるらしい。多様はノーマークだったが、面白そうだったので二つ返事でゴブスタン行きを了承し、さっそく移動を開始した。空港からはバスを乗り継いで2時間強ほどかかる見込みだ。

空港出口付近

シャトルバスに乗ってバクー市街地に着いた我々は、深く感動していた。穴のないアスファルトと歩道、アパルトマン風の住宅、遠くの高層ビル…街並みが完全にヨーロッパのそれである。

バクーの街並み

高層ビルなんて見たのは一体いつぶりだろうか。なんだか東京に帰ってきた気持ちにすらなってくる。中央アジアを戦い抜いた自分たちを労いながら、我々は朗らかな気持ちでバスを乗り換えてゴブスタンヘ走り出した。それから1時間後…。

ただいま

我々は再びガタガタの道と、クラクションを鳴らしまくる変なバスと、土と砂の中にいた。バナナから「国戻っちゃった…」と絶望の声が上がる。ああ…。
死んだ顔でまたしてもエアコンのないバスに収容された3名は、体に染み付いたあの揺れに揺られて、ゴブスタンまで残り1時間の道のりを走る。めげないぞ。

赤いおばさんは全員に喋りかけ、
全員に無視されていた

ゴブスタンでの観光は、トルファンと同じくタクシーをチャーターするのが基本らしい。バスを降りると、さっそく1人のオッサンが声をかけてきた。ちなみに、人でごった返していたトルファンとは異なり、このオッサンの他に運転手の気配はない。
オッサンは、1人2000円強で泥火山と壁画のある保護区を網羅してくれるという。事前の情報よりかなり安く拍子抜けした我々は、特に交渉などはせずオッサンのラーダに乗り込んだ。疲れているので、あの意地の張り合いをしなくていいというだけで心は羽のように軽い。今日は楽しめる気がしてきた。

道無き道を行く
車が壊れそうだ

最初に着いた泥火山は、泥の中からメタンガスが吹き出しているエリアらしい。オッサンはライターでメタンガスに火をつけたり(大丈夫なのか?)、マサカリを泥に落とそうとしたりとやりたい放題である。多様はこいつのことが大好きになってきたので、泥を売りつけたりさななから1000円札を巻き上げたりもしていたが、まあ良しとした。

こういうのがいくつもある

次いで、我々はゴブスタンが世界文化遺産たる所以である、先史時代の壁画が残る岩山へと向かった。ここは入場料がかかるが学割が効く。学生証を忘れたマサカリも「プリーズ」と「アマステューデント」だけでゴリ押し、全員晴れて100円で入場を果たした。

目を凝らすと牛が見えてきませんか?

岩山は複数のツアー客でごった返していた上、刻まれた絵も肉眼だとほぼ見えないものの方が多かった。しかし、奇岩の向こうに町とカスピ海を望む絶景は見事であったし、こんなに原始人が住んでいそうな見た目の岩山があり、そこに実際に原始人が住んでいたというのも面白かったので、多様はかなり楽しめた。

岩山とカスピ海

これでゴブスタンでの観光はおしまいだ。我々をバス停まで送り届けたオッサンは、別れ際に多様のタバコを箱ごと持って行ってしまったが、今回も許すことにした。こいつの、日本人だというのにブルース・リーの真似をずっとしている適当さや、泥火山以降もなんだかマサカリをかわいがっていた人懐こさには、やっぱり憎めないところがあった。もしウズベキスタンのハイエナ運転手だったとしたら、タバコや1000円札は意地でも渡さなかっただろう。
後はバスでホステルに向かうだけなのだが、ここで我々はちょっとした問題に直面していた。バスに乗るには現金がちょうど1マナト(約90円)だけ足りないのだ。キャッシングしようにもATMは往復1キロくらいと少し遠く、向かっているとバスを逃しそうである。さっきのオッサンに頼めばくれそうでもあったが、もうどこかに行ってしまっており、その辺にいた人にしたタバコとの引き換えの提案も断られてしまった。八方塞がりだ。
やむを得ず多様がATMに向かったが、バスは戻ってくるとまさに目の前で出発してしまった。しかも、クレジットカードの非接触決済も利用できたようである。それでは一体なんのための時間だったのか…。そもそも、さっき水を買わなければこんなことにはならなかったのに。この不運により、多様は楽しかったゴブスタン観光で出ていたアドレナリンが突然切れてしまい、寝不足による体調不良が一気に襲ってきた。なんだか熱が出そうな気配がする。

停留所には本当に何も無い

30分後、次のバスを捕まえてバクー市内に戻るも、1時間前までが嘘のように具合が悪くなっていた。何か飯を食った方が良いと思い、チェックイン後に近くのレストランに足を運んだが、思わぬフードファイトとなってしまいむしろ裏目に出る。以前、次は多様の番かと冗談半分で言っていたのが本当に巡ってくるとは…。
15時、満腹感で吐きそうになりながらホステルのベッドに横たわると、途端に寒気も襲ってきた。これは本格的にまずいと思い、とりあえず寝ることに集中する。そして、今から1時間前…23時過ぎに目を覚ますと、嘘のように不調は消えていた。
今も食べ過ぎでお腹は苦しいが、熱の気配など微塵もなくなってしまったので、こうして日記を書いている。やはり、久々の徹夜が堪えた上に、中央アジアを抜けたという気の緩みが覗いたのだろうか。いずれにせよ、大事をとってもう一度寝ることにします。皆さんも夏バテに気をつけてください。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集