ポケットメモ#31 桜エビが止まらない
◾️今日のポケットメモ
桜エビ 当たり 大量
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「いただきまーす。」
お皿には、新鮮な桜エビの刺身とギスの塩焼き。
「美味しそうだね。」
友人と顔を見合わせ、思わずにっこりする。
ここは海辺の小さな定食屋さん。
漁師の店、と看板が出ていた。
***
地元の人なら当たり前の鮮度でも、海なし県で育った私たちには感動モノだ。
「桜エビのお刺身、食べたことある?」
「ない、ない!
乾燥してない桜エビなんて、考えたこともなかったよ。」
お料理を運んでくれた奥さんが、ニコニコと笑っている。
「ギスって知ってる?」
初めて聞いた。
もちろん、食べるも初めてだ。
「今朝採ったばかりだよ。シンプルな塩焼きが一番だよ」
お皿に乗った魚は、小ぶりだけれど身がふっくらとして美味しそう。
話もせずに、箸を動かす。
ギスに集中!
美味しい。
…ふと。
友人の手が止まっていることに気づいた。
「ねえ。これ見て。」
友人は魚の乗った皿を、私の方に寄せてくる。
「このギスの腹。
桜エビがいっぱいあるんだけど。」
うわー、ほんとだ。
ギスと一緒に、火が通った桜エビ。
普段目にする、見慣れた桜エビ。
私たちの様子に気づいた奥さんがやってくる。
「あらー!」
パタパタパタ。
大急ぎで奥に戻った奥さん。
奥に消えたと思ったら。
カラン、カラン、カラーン。
手には大きな鐘。
「大当たりぃぃぃ」
え?
なにごと!?
「おめでとうございます。
今月になって、初めてギスから桜エビが出てきた方には、商品をプレゼントいたします!」
店の隅には『桜エビまつり』と書かれた手書きのポスターが貼ってあった。
豪華景品プレゼント、とも。
「桜エビ、一年分プレゼントいたします。
今、品物を持ってきますね。」
***
いつの間にか、店内には近所の方と思われる人がどんどん入ってくる。
机の上には、まだ食べ終わっていないギスと、大きな箱。
その箱に、桜エビがどんどん入れられる。
奥さんだけではなく、近所の人たちも、升で桜エビを入れにくる。
いや、いや、いや。
一年分の桜エビって、なんなの。
そもそも桜エビの消費単位ってなんなの?
あー、そんな入れないで。
溢れてる、溢れてる。
桜エビがうず高く積まれ、箱はとっくに見えなくなった。
机からも落ちそうだ。
「今年は大量だからねえ」
「どんどん持ってこーい」
「まだまだ、一年分には程遠いよぉ」
にこやかに笑う顔。
止まらない、人々の手。
積み上がる桜エビ。
嫌ぁ。もうやめてぇ。
***
あいたたた。
…ベッドからずり落ちた。
慌てて左右を見回す。
私の部屋だ。
ふと、枕元を見ると。
乾燥した、桜エビ。
散らばる、桜エビ。
その横に、小さな魚の骨。
…磯の匂いがする。
普通に見えて、ちょっと違う話。
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