下北沢ギターロックの現在地 ─ CDJ25/26 4日目で観た、25年分の物語
2025年12月30日、COUNTDOWN JAPAN 25/26 4日目はインディーズ時代に「下北沢」を主な拠点として活動していたBUMP OF CHICKENとASIAN KUNG-FU GENERATIONという、邦楽ロックシーンを象徴する2バンドをメインアクトに迎えた特別な一日だった。
そこには、過去25年の間、邦楽シーンにおいて下北沢ギターロックが途切れることなく継承と更新を重ね、いまこの場所で巡り会えたという、胸を熱くする物語にあふれていた。
リーガルリリー/KANA-BOON ─ 継承が空気として混ざり合う場所
この日のMOON STAGEは、リーガルリリーがトップバッターを務めた。フェスという現場ではメインアクトのグッズを身に着けたリスナーが多く見られるのは自然な光景だが、それを差し引いても、リーガルリリーを目当てに集まったフロアには、バンプとアジカンのグッズを身に着けたリスナーの姿が目立っていた。
リーガルリリーは、アジカン結成20周年を記念したトリビュートアルバムへの参加や、ラジオでバンプの楽曲をカバーするなど、2000年代以降の下北沢ギターロックからの影響を感じさせるバンドだ。その関係性が、「知識」としてではなく、「空気」としてフロアに共有されていたことが、強く印象に残った。
リーガルリリーの音楽に惹かれて集まったリスナーと、アジカンやバンプを通過してきたリスナーが、世代を問わず同じ空間に自然と混ざり合っている。その光景は、下北沢ギターロックの系譜が現在進行形で機能し続けていることを、確かに示していた。
続いてGALAXY STAGEに出演したKANA-BOONのステージでは、Vo./Gt.の谷口鮪がMCで、バンプとアジカンが同じ日に出演することに触れ、感慨深い思いを語っていた。
KANA-BOONは、アジカン以降のギターロックの精神性を受け継ぎながら、2010年代以降、音楽フェスが多様化し、メインストリームへと広がっていく過程の渦中にいたバンドだ。
その谷口が、敬意を込めて語った言葉は、この日のラインナップが偶然ではなく、長い時間をかけて形成されてきた歴史の延長線上にあることを、印象づけていた。
リーガルリリーとKANA-BOONのステージは、この日のラインナップが継承と更新によって形成された一本の流れになることを明確にしていた。
kurayamisaka/羊文学 ─ オルタナティブが共有された場所
MOON STAGEに出演したkurayamisakaは、USオルタナティブ/シューゲイザー直系の轟音ギターロックを正面から鳴らし、この日のラインナップの中でも異質な質感を放っていた。同時刻、他ステージでは[Alexandros]やTOMOOといった強力なアクトが出演していたにもかかわらず、フロアには多くのリスナーが集まり、とりわけ若いリスナーが、彼らの轟音に構えることなく、それぞれの感覚で音に身を委ねて楽しんでいる姿がとても感動的だった。
kurayamisakaのフロアにあった熱気は、下北沢ギターロックに加え、スーパーカー以降の国内オルタナティブ/シューゲイザーの文脈が、いまの若い世代にフィットした形で鳴り響いていることをはっきりと示していた。その背景で大きな功績を残してきた存在として、GALAXY STAGEに出演した羊文学の存在を挙げずにはいられない。
羊文学は、下北沢ギターロック以降の系譜を引き受けながら、USオルタナティブやシューゲイザーなどからの影響を日本語のポップソングとして成立させ、メインストリームへと進出していく過程においても、そのオルタナティブ性を手放すことなく活動を続けてきたバンドである。
彼女たちの成功は、「尖った音楽が売れた」という単純な話ではなく、ファズによる激しく歪んだギターサウンドなど、メインストリームではなかなか共有されてこなかったアンダーグラウンドな要素を、テレビ番組やフェスといった最大公約数の場へと持ち込むことを可能にした点に大きな意義がある。
そうした積み重ねによって構築された土壌の延長線上に、kurayamisakaの存在がある。COUNTDOWN JAPANというメインストリームのフェスにおいても支持を集め、いまの若いリスナーを熱狂させている光景は、その事実を物語っていた。
kurayamisakaと羊文学のステージは、下北沢ギターロックの系譜を引き継ぎながら、より影響源に近いオルタナティブ性を内包したまま、この日の幕張メッセという巨大な空間でリスナーを魅了していた。それは、過去25年間にわたる「更新」が、確かに実を結んでいることを示す光景だった。
ASIAN KUNG-FU GENERATION/BUMP OF CHICKEN ─ 物語が巡り会った場所
この日、ASIAN KUNG-FU GENERATIONとBUMP OF CHICKENが同じ日、同じステージに出演するという事実は、それ自体がひとつの物語だった。
EARTH STAGEに出演したアジカンのステージでは、「リライト」「ソラニン」「遥か彼方」といった代表曲はもちろん、「Re:Re:」のようなアルバム収録曲においても大きな合唱が巻き起こっていた。
近年では『ぼっち・ざ・ろっく!』への起用などを通じて再び若い世代の注目を集めている楽曲もあり、この日も当時をリアルタイムで通過してきたリスナーと、若い世代の声が混ざり合って大きなうねりを生んでいた。
後藤正文はMCの中で、同じくこの日ラインナップされていたACIDMANやストレイテナー、そしてバンプについて言及し、同じ時代を駆け抜けてきた「戦友」であることを言葉にしていた。90年代後半から2000年代初頭にかけて下北沢を主な拠点としたバンドが、切磋琢磨しながら形成してきた邦楽シーンがいまにつながっていることを、あらためて思い起こさせる瞬間だった。
アジカンの終演後もほとんどのリスナーはその場から離れることなく、EARTH STAGEのトリとして出演するBUMP OF CHICKENの登場を待ち焦がれていた。誰もが紡がれてきた歴史と物語の合流地点として、この2バンドが肩を並べて出演することの特別性を噛み締めているようだった。
いよいよ始まったバンプのステージは、アジカンが残した熱量そのままに1曲目の「アカシア」からどの曲でも自然と歌声が広がっていた。とりわけ「ギルド」でフロアに響いた歌声(わたしの周辺ではみんな歌っていた!)は、アジカン「Re:Re:」同様に、25年という時間を共に生きてきたアーティストとリスナーの特別な関係性を象徴するようだった。
アジカンとバンプ、どちらも大合唱となったライブだったが、あの空間を共有して、一緒に歌ってくれたすべての方に心から感謝を述べたいほど、感慨深い素晴らしい時間だった。
COUNTDOWN JAPAN 25/26 4日目で目にした光景は、過去25年の邦楽シーンにおいて、下北沢ギターロックが、途切れることなく継承され、更新され続けてきたことの答え合わせのようだった。
バンプがバンプであり続けたからこそ、アジカンがアジカンであり続けたからこそ、同世代と後続のアーティストたちが同じ時代で合流して、巨大な空間の中で、多くの人の心と声をひとつにした。
その事実を祝福するような本当に美しい一日だった。
追記)
アジカンの後藤正文が12/31に更新したnote「ドサクサ日記 年末編 12/29-31 2025」で、この日の出来事について触れている。
やはり、下北沢ギターロックの25年分の物語は、影響を受けた後続のアーティストも含め、12/30幕張メッセにつながっていた。
ここが物語の現在地。そして、2026年以降も物語は続いていく。
30日。
CDJに出るために幕張へ。その前にボイトレ。身体は今年一年の忙しさがギッシギシに錆びている感じがするが、息だけは吸えるように整えて会場に向かった。ライブはとても楽しかった。いつもはそそくさと帰るが、この日はストレイテナーやACIDMANやkurayamisakaにも会えたし、サンボの近藤君とも機材のこと話し込んだ。バンプを見た後は、彼らに声をかけて、アーティストエリアで一緒にご飯を食べた。大木君は同窓会みたいだと言っていた。みんなそれぞれの場所で、それぞれに鳴らしてきた。バンプとは20年ぶりくらいに会った気がするけれど、初めて会ったフジロックのことをいまだに覚えていてくれて、嬉しかった。天体観測は当時、大変に勇気づけられた。日本語のロックに未来はあるのだと強烈に思った。俺たちはまだ何者でもなく、下北沢と横浜を行き来して、必死にもがいている最中だった。あまりにも良かったので、その年のフジロックのホワイトステージ、eastern youthの演奏が終わった後で彼らを発見して、その興奮を伝えたように記憶している。みんな元気そうで良かった。そのあとは鮪とマーシーと山ちゃんとアチとで忘年会。ドンペリニヨンと寿司、BGMは女子十二楽坊風の何か。
https://note.com/gotch_akg/n/n7dba3dbac7c2
