医工産学連携の基礎:医工連携と臨床工学(講義)
本年4月より、京都橘大学にて臨床工学技士(CE)の養成に携わっています。
私はCEのライセンスホルダーでもなく、過去CE養成校での教務経験もないのですが、治療系医療機器の研究開発・産学連携に携わってきた経験から、本学臨床工学科の掲げる「情報につよい臨床工学技士」「機器開発ができる臨床工学技士」「病院管理者をめざす臨床工学技士」の養成に資するための医工連携教育を担当しています。
早速1回生の春学期に「医工連携と臨床工学」という科目を開講しました。
この科目では、臨床工学技士とし て医療機器の開発にも携わるために必要な、医工連携による研究から製品実現・普及に至るまでのプロセスと前提となる基本知識を解説しました。
医学・医療と工学・工業の連携による新たな医療技術の創出サイクルである医工連携とは何か、医療機器開発に必要なニーズ探索、アイデア創出、技術実現に必要な手法と知識等について、初学者への入門編として紹介する講義です。
教科書のない新たな領域の科目をフルスクラッチで作り準備するのはなかなか大変です。せっかく作ったので、どんな科目で何を大学1年生相手に解説したか、ざっと概要を(GPTで)インフォグラフィック的にまとめてみましたので紹介します。
(元のスライドは表紙・目次・前回の振り返り・課題含めて全900枚超です)
第1回:医工連携とは?
CEがどう関わるかという点を含めた入口の解説です。

第2回:医療機器とは?
一般の機器と医療機器との違い、特にリスクの観点から解説しました。

第3回:ルールの話(1):薬機法とは?
医療機器を規制する法律について。まずは機器と業それぞれに許認可があることを解説しました。あとは身近な部分で標榜と広告の規制について。

第4回:ヘルスケア機器とは?
健康に関わる機器だけど医療機器とは違う。そんなヘルスケア機器の事例と昨今のバイタルデータ・ライフログの活用状況について解説しました。

第5回:デザイン思考と「共感」とは?
ここからいよいよ開発の話です。ニーズドリブンの医療機器開発に親和性の高いデザイン思考について紹介しました。また、機器開発における「共感」とは何か、共感がなぜ重要かについて解説しました。

第6回:アンメットメディカルニーズとニーズ探索・臨床工学技士のキャリアについて
第6回は神戸市立医療センター中央市民病院の吉田哲也先生にご出講いただき、医療機器開発のスタートとなるニーズ(要望)の位置付け、その探索方法、整理と評価について解説いただきました。
第7回:医工連携研究:手術支援ロボット
ここからは医工連携研究・開発の実例について。第7回・第8回は私の研究分野かつCEが現場で実際に運用・管理に携わる手術支援ロボット・ナビゲーションについて紹介しました。
ここではda Vinciに代表されるリーダーフォロワー型(マスタスレーブ型)ロボットの歴史と応用、工業用ロボットとの違い、安全と清潔などについて解説しました。

第8回:医工連携研究:手術ナビゲーションとナビゲーションロボット
こちらは位置決め・誘導に用いられるナビゲーションシステムと、ナビゲーション情報を用いた自動位置決め・刺入・切削等を行うロボットシステムについて紹介しました。

第9回:医工連携研究:現場起点の医療製品開発
第9回は臨床工学技士会の医工連携アワード受賞製品・応募製品を題材に、CEが現場から医療機器開発に関わることの意義と特徴(CEの視点)について解説しました。また、私が携わった医療用ウェアラブルチェアarchelisと教育・研究用模擬臓器VTTの開発過程の事例を元に、共感とリーンスタートアップ的思考に基づく製品開発の実際についても紹介しました。

第10回:ルールの話(2):特許と医療保険
薬機法と同じく、医療機器開発と事業化において避けては通れない特許と医療保険の話です。発明をSNSで発信したら駄目よ、とか。

第11回:医療機器産業の動向:市場・製品動向
医療機器産業がどれくらい大きな産業なのか、成長産業なのか、世界の中で日本はどういう状況か、などについて解説しました。ポイントは輸入超過と治療機器の弱さ。

第12回:医療機器産業の動向:デジタル医療
現在の医療機器産業において重要なデジタル医療技術、特にSaMD・DTx、医療AI、医療DXを中心に開発しました。デジタル化とデジタルトランスフォーメーションは何が違うか?

第13・14回 グループワーク・総まとめ
最後は学生さんにこれまでの講義を踏まえ、特にニーズステートメントとデジタル技術に重点を置いた独自提案の課題に取り組んでもらい、その成果をグループごとに発表してもらいました。
CEのための医療機器とキャリアの未来像
本講義では現場を知るCEのキャリア未来像として、現場の視点から医療機器とその開発を考えるための一連のプロセスを概説しました。
大学に入ったばかりの1回生には少し小難しいお話だったかもしれませんが、医療機器開発に興味を持つ若者の育成に向けて、今後も講義設計を更新していきたいと思います。

※ 医工連携・産学連携に関するコラムを以下のマガジンにまとめています。ぜひご覧ください。
