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POMR連載④:多疾患併存がプロブレムリストを破壊する:構造的限界と再構築への道


導入

多疾患併存は現代医療の「標準」である。Saliveの3,100万人のMedicare分析では65〜74歳の62%、85歳以上の81.5%が2疾患以上を併存する [1]。Weedが1968年に設計した「一問題・一SOAP」の線形構造は、臨床現場の複雑性に追いつけなくなっている。 プロブレムリストの完全性(completeness)は平均60〜80%にとどまり [2]、プロブレムの追加と実質的な整理(解決+削除)の比率は約4:1——リストは膨張する一方で、整理はほとんどされない [3]。第③部で論じたプロブレムリスト作成の教育的価値は、多疾患併存患者においてこそ最も発揮されるべきであるが、同時に最も困難に直面する。本稿では、多疾患併存がプロブレムリストに突きつける構造的課題を3つの軸——記載の崩壊、情報過負荷、記録負担——で分析し、英国・オランダ・北欧を中心とした先進国の取り組みを検討する。日本固有の課題については第⑤部で論じる。

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多疾患併存は「例外」ではなく「標準」になった

多疾患併存の疫学を決定的に転換させたのは、Barnettらが2012年にLancetに発表した大規模横断研究である [4]。スコットランドの314医療機関に登録された175万人のデータを40疾患について分析した結果、全患者の23.2%が多疾患併存であり、65歳以上では過半数がこれに該当した。特筆すべきは、多疾患併存者の絶対数は65歳未満の方が65歳以上を上回っていたこと、そして最貧困地域では発症が10〜15年早期化していたことである。この研究の結論——「我々の知見は、医療・研究・教育の大部分が依拠する単一疾患フレームワークに異議を唱える」——は、その後の多疾患併存研究の出発点となった。

米国のデータはさらに深刻な状況を示す。Saliveによる3,100万人のMedicare受給者分析 [1] では、65歳以上の67%が2疾患以上を有し、65〜74歳で62%、75〜84歳で75.7%、85歳以上では81.5%と年齢とともに増加した。2023年のeClinicalMedicineに掲載されたChowdhuryらのグローバルメタ分析(126研究、54カ国、1,540万人)[5] は、60歳以上における多疾患併存の統合有病率を51.0%(95%CI 44.1-58.0%)、全年齢での統合有病率を37.2%と報告している。

POMRが設計された1960年代、急性期入院の主要対象は単一の急性疾患であり、プロブレムリストの想定規模は現在よりはるかに小さかった。現在の高齢入院患者では15〜20件に達することも珍しくない。この量的変化は、POMRの構造に質的な破綻をもたらしている。日本においても、Aokiらの2018年のNDBデータ分析では、75歳以上の患者における多疾患併存率が高く、ポリファーマシー(6剤以上)との強い関連が報告されており [6]、本稿で論じる国際的課題は日本の臨床現場にも直接的に該当する。

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