第5回_内部監査とは、企業価値を高める経営機能である。
思想を、実務へ。
第1回から第4回まで、この連載では「企業価値」を軸に、ガバナンスやサステナビリティについて考えてきました。
ガバナンスは、企業価値を創り、挑戦を支えるためにある。
ガバナンスは、挑戦に確信を与える。
企業価値とは、経済価値と社会価値を持続的に高める力である。
サステナビリティとは、企業価値を持続的に高める経営そのものである。
ここまでは、「思想編」でした。
しかし、読者の皆さんはこう感じたかもしれません。
「では、実務では何をすれば企業価値は高まるのだろう。」
ここからは、その問いに向き合う第二部です。
企業価値という視点から、内部監査、リスクマネジメント、人的資本、取締役会、IPOなど、一つひとつの実務を再定義していきます。
その第一歩として、今回は「内部監査」を取り上げます。
内部監査は、「チェック機能」なのでしょうか。
内部監査と聞くと、どのようなイメージを持つでしょうか。
ルールを守れているかを確認する。
不正を見つける。
指摘事項を出す。
もちろん、それらは内部監査の大切な役割です。
しかし、それだけでしょうか。
私は、成長企業の内部監査に携わる中で、少し違う景色を見てきました。
経営者が本当に知りたいのは、
「このルールは守られているか。」
だけではありません。
「この挑戦は、企業価値につながるだろうか。」
「このリスクは、未来の成長を止めないだろうか。」
「今、見落としている経営課題はないだろうか。」
そんな問いに向き合うことこそ、内部監査に期待される役割ではないでしょうか。
内部監査は、挑戦を止めるためにあるのではない。
私は第2回で、
「ガバナンスは、挑戦に確信を与える。」
と書きました。
内部監査も同じです。
内部監査は、挑戦を止める仕組みではありません。
挑戦を続けられる経営を支える仕組みです。
成長企業では、挑戦のスピードが速くなります。
事業も、組織も、人も、日々変化します。
だからこそ、内部監査に求められるのは、過去を指摘することだけではありません。
未来の企業価値を毀損するリスクを早く捉え、経営の意思決定を支えること。
それが、これからの内部監査に求められる役割だと考えています。
「企業価値監査」という視点
私は、これからの内部監査は、単なる「コンプライアンス監査」や「業務監査」にとどまらず、企業価値という視点を持つ必要があると考えています。
もちろん、「企業価値監査」という制度上の監査があるわけではありません。
ここで私が伝えたいのは、企業価値を高めるという目的から内部監査を捉え直す視点です。
企業価値を毀損するリスクは何か。
企業価値を高めるために、経営へどのような示唆を提供できるか。
この問いを持つことで、内部監査は「守りの機能」から、「挑戦を支える経営機能」へと進化できるのではないでしょうか。
企業価値から実務を再定義する。
この連載の第二部では、制度や役割を解説することを目的にはしません。
企業価値という視点から、実務の意味を問い直すこと。
それがテーマです。
内部監査。
リスクマネジメント。
人的資本。
取締役会。
IPO。
どれも独立したテーマではありません。
すべては、企業価値を持続的に高めるための経営機能です。
私は、その共通点を実務を通じて考えていきたいと思います。
最後に、一つ問いを残します。
皆さんの会社における内部監査は、「ルールを確認する機能」でしょうか。
それとも、
「企業価値を高める経営機能」でしょうか。
私は、その違いが、企業の未来を大きく左右すると考えています。
