私の前世探求記【第五話】
前回のあらすじ:
Q太郎は怪我の後遺症の痛みに苦しんでいたが、痛む箇所には生まれつきのアザがあった。
ヒプノセラピーを受けた結果、前世でアレシュが受けた傷跡が、今世でアザとなって残っていることが判明したのだ。
【2022年2月】
Q太郎は17歳の頃から日記を書いている。趣味といっても良い。
しかし右手の怪我をして以来、握力の低下により思うようにペンを持つことができず、限られた握力を「フス戦争の研究」に使うと、日記を書くための余力がなくなってしまうのだった。
腕をある程度使うと、握力がなくなりペンも箸も持てなくなってしまうのである。
日記が趣味のQ太郎にとって、楽しみの半分を失った気持ちであった。
そんなときのために、Q太郎はチェコから本を取り寄せた。
全編チェコ語で書いてある歴史書だ。
右手の握力がないときは、その本を広げてひたすら読む。
そして、知っている名前や年号、地名などを見つけては印をつける。
この読書方法は、のちにQ太郎のチェコ語翻訳の力を大いに成長させることとなる。
また、この頃から「本の出版」を意識するようになる。
【2022年7月】
右腕の痛みに効く、という「波動セラピー」なるものがあるとの情報が入る。
怪しさ満載だったが、騙されてもいいやと思って治療を受けてみる。
波動とは超音波のようで、機械を使って身体に超音波を流し、破損箇所の血流を良くしたりするようだ。
痛みの箇所がじんわり温かくなり、いくぶんか楽になった。
高額な料金を請求されたりもしなかったので、月1回〜2回のペースで通ってみることにした。
波動オペレーターはLさんという人だ。
【2022年8月】
驚くことがあった。
Lさんは「視える人」であった。
Q太郎の前世についても視えているらしく、前世の
家名である「リーズンブルク」について、Q太郎が説明する前に
「巨人の城、って意味でしょ?」
と言い当てる。
リーズ(Ries)ブルグ(Burg)は巨人の城という意味なのだ。しかも、現代のチェコ語より古い呼び方なので、よっぽどチェコの歴史に詳しくなければ「リーズンブルク」が巨人の城だということを看破することはできない。
「右腕切られてるね、前世で。その犯人、視えるよ」
Lさん、いや、L先生はさらにとんでもないことを言い始めたのだ。
右腕の切られた箇所、切った刃物の形状、切った犯人の風貌などを、次々と語り出すL先生。
Q太郎はまだ何も言っていないのに、全てヒプノセラピーで見たビジョンと一致していたのだ。
特に驚いたのが、アレシュが襲撃を受けた時に暴漢が持っていた武器の形状と怪我の様子だ。
長い柄の先にナタのような刃物がついており、切れ味があまり良くなかったので、切るというより「えぐる」ような傷を負ったのだ、と。

アレシュの襲撃は、実行犯と黒幕がいるとのこと。
その両名ともアレシュの知り合いであった。
実行犯の名前は分からないが、風貌は40過ぎのおっさん。雇われた?
襲撃する対象の人物を知らされていなかったようで、「とにかくこの建物から出てくる奴を切れ」と指示されていたようだ。
指示した人物の名は「ヤン・ロキツァナ」。
まさか。
ロキツァナといえば、Q太郎がとても心惹かれ、彼をモデルにした小説を書こうとさえ思った程の人物だ。
小説のために考えた「フィクション」としての彼の設定が、あとで調べたら史実と一致していたり、ヒプノセラピーではアレシュの死を看取ったりしたような人物である。
その彼が、アレシュ襲撃の黒幕だなんて?
L先生が言うには、以下の経緯があるらしい。
ロキツァナには妹がいた。(史実である)
アレシュは彼女と仲良くしていたが、その仲を嫉妬する者があった。
嫉妬する者をK子とする。
K子はゴロツキを雇い、ロキツァナの妹を襲わせる。
生命までは奪わないが、乱暴をした。
そして、K子は目撃者を装って「犯人はアレシュだ」と吹聴する。
それを知ったロキツァナは激昂し、アレシュ襲撃を画策した、という流れだ。
ロキツァナはアレシュの生命まで奪うつもりはなく、棍棒などでボコボコにする程度、という指示を出したつもりであった。
しかしアレシュを快く思わない人物が計画に参加し、暴漢に持たせる武器を刃物に替えた。
その結果、アレシュは右腕に深い傷を負うことになる。
襲撃犯は自分が襲ったターゲットがアレシュだと分かると狼狽し、追撃はしなかった。
というストーリーだそうだ。
にわかには信じ難い。
おそらく、歴史書から真相を見つけ出すことも難しいだろう。
ならばせめて、アレシュが右腕に怪我を負ったという記述、または右手が不自由だったということが記載されている資料を見つけたい。
L先生いわく。
「アカシックリーディングって知ってる?それができる人がいるから、紹介しようか?その人にいろいろ聞いてみると良いよ」
また不思議な単語が出て来た。
アカシックリーディング。アカシックレコードという、過去や未来の出来事が書いてある「本」が存在し、それを読むことができる人を「アカシックリーダー」という。
霊視やヒプノセラピーとはまた違う、前世探究のツールになり得るかもしれない。
Q太郎は、次はアカシックリーディングなるものに手を出すことにしたのだった。
