「靴下ペアを探すの楽しいね」―娘の一言が教えてくれたUX設計の原点
靴下をたたむ時間に、ふと生まれた「気付き」
休日の午後、洗濯物をたたんでいたときのことです。
私の隣で、8歳の娘がちょこんと座り、靴下をひとつずつ手に取っていました。私は無意識のうちに「早く片付けてしまいたい」と思いながら、作業を進めていました。
すると娘が、嬉しそうにこう言ったのです。
「パパ、靴下ペアを探すの楽しいね!」
一瞬、手が止まりました。私にとって“面倒なタスク”だったはずの時間が、娘にとっては“遊びの時間”だったのです。この小さな言葉が、私の中のUX(ユーザー体験)に対する考え方を揺さぶりました。
UX設計の原点は、「楽しさ」を見つけることにある
UXの世界では、「課題解決」や「効率化」といった言葉がよく使われます。しかし娘の一言をきっかけに、本当にユーザーが求めているのは“楽しさ”ではないかと感じました。
どんなに便利なサービスでも、使っていて退屈だったり、心が動かなければ、長く愛されることはありません。
人が“使いたくなる”瞬間には、かならず小さな喜びがある。
その原点を、私はあの日の靴下たたみで思い出しました。
「めんどくさい作業」だった家事が、視点を変えたら学びに変わった
思い返せば、私自身もUX設計の現場で“効率化”ばかりを追っていました。
ユーザーインタビューでも「時短」「簡単」「自動化」といったキーワードを重視し、「楽しさ」や「感情の揺れ」はどこか後回しにしていたのです。
けれど娘は、何の先入観もなく、“同じタスク”を“遊び”として楽しんでいた。つまり、体験の価値は作業の内容ではなく、そこにどんな意味を見出すかで変わる。UX設計においても、これは本質的な視点です。
UXで忘れがちな“前提の落とし穴”
私たちは設計者として、“ユーザーの効率”を第一に考えがちです。でもその前提の裏には、「効率化=満足度向上」という思い込みが潜んでいます。
実際、いくつかのプロジェクトで、「早く終わるけどつまらない」体験はリピートされにくいことを痛感しました。
逆に、少し手間でも「楽しい」「気持ちいい」と感じられる体験は、自然と使われ続けます。
つまりUXは、“効率”ではなく“感情”を設計するもの。その視点を取り戻すことが、娘の一言から得た最大の気付きでした。
楽しさをデザインに取り入れる3ステップ
では、どうすれば「楽しさ」をUXに組み込めるのか。私は自分なりに、次の3ステップを意識するようにしています。
Step1:ユーザーの“感情の起点”を観察する
タスクを行う前後の表情や言葉を観察し、どんな瞬間にポジティブな反応があるかを探す。
Step2:タスクに“遊び心”を埋め込む
ゲーム性、発見、達成など、“楽しさ”の要素を小さく仕込む。
たとえば、ちょっとしたアニメーションや、完了時のフィードバックなど。
Step3:小さな成功体験を設計する
「できた」「気持ちいい」と感じる瞬間を、意図的に設計する。
UXのゴールは“終わらせる”ではなく、“もう一度やりたい”と思ってもらうことです。
プロジェクトで実践して見えた成果
あるプロダクト開発で、この3ステップを取り入れてみました。もともとは「業務ツールだからシンプルでいい」と言われていたものを、少しだけ“遊び心”を加えたUIに変更しました。
たとえば、入力完了時にキャラクターが「おつかれさま!」と声をかけてくれる。そんな小さな演出でも、ユーザーの反応は明確に変わりました。
「作業感が減った」「ちょっと楽しい」という声が増え、最終的には利用継続率が約20%向上。“効率”だけでなく“感情”をデザインすることの重要性を、改めて実感しました。
「楽しい」はUXのはじまり
娘の「靴下ペアを探すの楽しいね」という言葉は、今でも私のUX設計の指針になっています。
あの何気ない時間が教えてくれたのは、「楽しさは、与えるものではなく、気付くもの」ということ。
UX設計も同じで、ユーザーが自ら“楽しさ”を見つけられる余白を作ることが大切です。その瞬間こそが、最良の体験のはじまりだと思います。
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