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人生で一番うれしかったこと、それは子どもが生まれたこと、ではない。

人生で一番うれしかったことはなんですか?

そう聞かれてパッと思い浮かんだのはふたりのわが子たち。何について書こうかな、と思いながら子どもたちのアルバムを見ているうちに、これだ!と思う出来事があった。

子どもが生まれる5年以上も前のことだ。

仕事に生きると思ったのに、仕事が死ぬほどつまらない

世界をまたにかけるビジネスマンになる。

小学生のころにプロフィール帳にそう書いていたわたしは、社会人になって1年目、仕事がつまらなすぎて絶望していた。それなりにまじめに勉強して、それなりに悩んで院まで進んで、いろいろな会社を天秤にかけて「ここだ!」と思って入った会社では、一日中A3の図面を見比べながら、間違い探しをしていた。毎日500枚くらい。

こんなはずじゃない。

このために勉強してきたわけじゃないし、こんな仕事をして年を取りたくない。会社ではまじめに仕事をしながら、内心ではこの世の全てを恨む社会人1年目ができあがった。

上司は頭が悪い。この会社は終わってる。新卒の一括採用という制度も終わってる。若い人に機会を与えない日本社会はもうダメだ。

心の中で文句を言って、ふてくされながら。それでも、このまま文句を言っているだけではだめだと思って助けを求めた。

喝を入れられた気がした

連絡したのは大学時代の恩師。

すぐに返事が来て、先生の出張のタイミングで東京駅のカフェで話すことになった。開口一番、先生は笑って言った。

「アメリカでドクター(博士号)を取りなさい」

当時のわたしは『海外で仕事をしたいけど、若いうちは研究職で海外にいけるポジションがない。つまんない仕事で海外に行きたくはないから、もう海外は諦めて、研究の道に戻りたい』と先生に泣きついたのだ。

アメリカでドクター。

何百万円、場合によっては何千万円もかかり、入学してから博士号取得まで最短でも5年。入るのも卒業も難しいし、お金も時間もかかる。そんな選択肢。自分の希望が叶わないことを周りのせいにして、ぐちぐちと文句を言っていた自分に喝を入れられた気がした。

文句言ってないで、できるように挑戦せよ。

なにも成し遂げていない、なんなら大学時代は不真面目でろくに研究もしていなかった自分に、そんなことを言うなんてと感動した。そんな挑戦に向けて背中を押してくれる、何にも成し遂げていない自分でもできると信じてくれる。それがこれほどの力になるのだと、言葉の力を嚙み締めた。

当時、「もっとおもしろい仕事がしたい」「海外に行きたい」というわたしの希望に対して返ってくるのは、若いうちは仕方ないという声や、まだ早いという声ばかりだった。あなたならできる、という言葉を初めてもらった。

難しい道でも、あなたならできると提示してもらうこと、それにどれほど奮起するかを25歳にもなって、はじめて知った。

その後のうれしいことは、全部この喝のおかげ

結局アメリカには行かなかった。

TOEFLやGMATといった、入試のお勉強だけして、怖気づいたのだ。今になって思えば、留学専門の塾などに行ってサポートしてもらうなり、さっさとアメリカに行ってキャンパス見学なりして気持ちを高めればよかったのに、と思う。毎日会社に行く中で気持ちが少しずつしぼんだのだろう。

それでも、その言葉をきっかけに出会った本があり、その本をきっかけに著者に会いに行き、そしてその出会いをきっかけにボランティアをはじめた。

めぐりめぐって、先生の言葉が今のわたしのおもしろい仕事を形作った。

仕事がおもしろいと思って、子どもを持つ気になった。希望していた部署異動を果たして、1年半たったころだと思う。

夫に「子ども、いてもいいかも」と言った。

わが子のいる愛しい日々は

アルバムをめくりながら目にした、うれしいことは全部、先生の「アメリカでドクターを取りなさい」の言葉があったから。

どこがお子かもわからないエコー写真を夫に見せて、ここが目でここが鼻で、これが足で、なんて話したこと。
ふだんは神頼みなんてしないのに、安産祈願の絵馬を買ったこと。夫にわたしと子どもの無事を願って書いてもらったこと。
ぼこぼこと怪獣がいるかのようにはげしく動く、妊娠中のお腹をとった動画。
痛みで吐きながら、麻酔が効かないことを恨みながら陣痛と戦い、ようやく産まれたわが子の産声を聞いてホッとして気が抜けたこと。
助産師さんに取ってもらった、産みたてほやほやでぐったりした私と、薄目で微笑んでいるわが子。

それからわが子のいる愛おしい毎日。

ぜーんぶ全部、あのときの先生の言葉があったから。

ありがとう。

厳しくも優しいあのときの言葉が、ふてくされるわたしに喝を入れ、自分を信じて行動する勇気をくれた。

あのときの自分と同じように、現状に満足してないけど行動できない、実績もない、そんな人こそ信じたい。わたしに「アメリカでドクターとりなさい」と声をかける先生のように、わたしも誰かに「あなたはできるよ」と声をかける存在になりたい。

わたしのうれしかったこと。

「アメリカでドクター取りなさい」と言われたこと。


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▼新卒の仕事を振り返って思うこと

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メラミン|1歳3歳の母 こんなところまでお読みいただきありがとうございます! なにか心が動きましたら、チップでお知らせいただけるととってもうれしいです。