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「またAIでしょ?」と妻に一蹴された日、プロのデザイナーだった私が思い出した「絵画は死んだ」という言葉

こんにちは、芽芽斗 守(めめと・まもる)です。

今この文章を書いているのは6月2日の夜ですが、昨日からニュースが騒がしいですよね。台風6号が私の住む街にも近づいてきているみたいです。

みなさんのお住まいは大丈夫そうですか。

この台風の名前はチャンミー。
韓国が提案した名前で「ばら」を意味するそうです。

妻にそう教わったとき、私はこう聞き返してしまいました。

「えっ、チャッピー?(笑)」

チャッピーはご存じ、ChatGPTのあだ名です。
どうやら私は頭の中までAIに侵されているみたいです😅

名前だけ聞けば、かわいい台風だったねと笑って終われそうなのですが。
今のところニュースを見るかぎり、そんなに優しい子ではなさそうです。

チワワがバイキングで料理を選んでいる

チャッピーでひとつ思い出したことがあります。

最近のChatGPTの画像生成、ChatGPT Images 2.0がとにかくすごいんです。GoogleのNano Banana Proで作っていたnoteのヘッダー画像も、いつのまにかこちらに乗り換えていました。

そしてこれが家族との会話で役に立ちます(笑)。

この夏、愛犬(メスのチワワ)を連れて家族旅行を計画しています。

「夕食はバイキングのあるところにする?」
「でも犬は中に入れないよね。部屋でお留守番かな?」

そんな話になりました。そこで私はそっとスマホを差し出します。

真剣に料理を選んでいるチワワ(AIで生成)

どうやら彼女は行く気のようだよ

そう言ってひと笑い誘います。

「部屋はオーシャンビューとマウンテンビュー、どっちがいい?」
そうなれば、すかさずまた一枚。

オーシャンビューと聞いて、満面の笑み(AIで生成)

どうやら彼女はオーシャンビューがいいみたい

場の空気がふわっと明るくなります。
とくに息子が大喜びです。

ねえどうやって作るの、と話も広がっていきます。

会話に詰まったときなど、ぜひご家庭でお試しください(笑)。

「またAIでしょ?」と妻に一蹴された

ただ、あまりに受けが良かったもので少しやりすぎたようです。

最近この手のものを見せると、妻に面白くなさそうにこう言われるようになりました。

「はいはい、またAIでしょ?」

見事な一蹴です(笑)。
昔からウケたものは擦ると良くないと言いますが、その通りですね。

ただ私は少しばかりひねくれているので、こう考え込んでしまいました。

作品の評価は結果に宿るのか。
それとも過程に宿るのか。

おもしろいものはAIでもそうでなくてもおもしろいはずです。
できあがったものに過程はくっついていません。

お皿に盛りつけられた料理にレシピは映らないのと同じです。

ではAIで作ったとわかった瞬間、その料理は急にまずくなるのでしょうか。 人が作ったとわかれば、やっぱり美味しいねと言ってもらえるのでしょうか。

坂口博信さんが「すごいじゃん」と言った日

先月こんなことがありました。

あるゲームファンが生成AIで作った2分ほどの映像をSNSに投稿したんです。
題材は『ファイナルファンタジー6』。

1994年にスーパーファミコンで発売された、いまも世界中にファンのいる日本のRPGです。

当時はドット絵で描かれていた世界が、映像の中では現代の3Dグラフィックで動き出します。

登場人物が街を歩き、巨大な列車を投げ飛ばす。

まるで本物の最新リメイクが発表されたかのような出来でした。

「こういうのを本当に作ってください」というメーカーへの願いを込めた、ファンメイドの映像です。

これを見たのがファイナルファンタジーの生みの親、坂口博信さんでした。 ご自身のSNSでこう反応します。

なにコレ!? すごいじゃん

正直でまっすぐな一言だと私は思いました。
ところが、ここで賛否が分かれます。

生みの親が無許可のAI二次創作を手放しで認めるのか。
著作権はどうなるんだ。

そんな声が上がったんです。

同じ会社で『サガ』という別の人気シリーズを生んだ河津秋敏さんは、やわらかくこう釘を刺しました。

「いや、坂口さん、一行目で止めといてくれないと」

冗談まじりですが、立場のある人が手放しで褒めることの危うさを見事に言い当てています。

そのあと坂口さんはこんなふうに説明しています。

そのまま完成形になるわけじゃない。ただ、その先に面白いものが待っていそうな気がした。可能性を直感的に感じただけなんだ、と。

私はこのやりとりがとても象徴的だと思いました。

映像そのものは最初から最後まで何も変わっていません。
すごいと感じた人がいて、AIじゃないかと身構えた人がいて、その先に可能性を見た人がいた。ぜんぶ同じ一本の映像に対しての話です。

振れ方が真逆になることもあります。

少し前には、アニメ「本好きの下剋上 領主の養女」のオープニング映像の一部に生成AIが使われていたとわかり、制作会社が差し替えと謝罪に追い込まれました。

ファンが作った映像に生みの親が「すごいじゃん」と笑う。
プロが世に出した映像は見つかって謝罪することになる。

同じ技術なのに向く先がまるで逆です。

受け取る人の立場ひとつで、同じものが称賛にも反発にもなる。お皿の上の同じ料理が、レシピを知った瞬間に味まで変わってしまうみたいです。

「今日を限りに、絵画は死んだ」

AIのことを考えていると、思い出す話があります。
写真が生まれたときのことです。

1839年、フランスで銀板写真という技術が公開されました。
目の前の景色がそのまま写し取れてしまう。

当時の人にとっては、まさに魔法だったはずです。

その衝撃を前に、人気画家だったポール・ドラローシュがこう言ったと伝えられています。

今日を限りに、絵画は死んだ

ポール・ドラローシュ

実際、肖像画や細かな複製を仕事にしていた画家たちはたくさん職を失いました。正確に写すという一点だけでは、もう機械にかなわなかったからです。

でも絵画は死にませんでした。

写真には写せないものは何か。
目に映る景色そのものではなく、心に映ったものを描けないか。

その問いの先に、モネやルノワールたちの印象派もありました。

機械に「写すこと」を明け渡したからこそ、人にしか描けないものがかえってはっきりと見えてきた。

私はこの話が昔から好きでした。

神は細部に宿る

私は今、AIを活用して様々なWebサービスを開発しています。

でも、もともとはAIを使わないものづくりの最前線に長くいました。

最初の職種はデザイナーです。
プロとして自分の手でデザインを起こし、コードも書いていました。

そこからプランナー、PMへと職種は移っていきました。

AIでプロダクトまで作れる時代が来るなんて、想像もしていませんでした。
私はちょうど、ものづくりの時代の境目を生きてきたのかもしれません。

その経験は消えてなくなったわけではありません。むしろ強みとして、作るものの中にちゃんと出てくれていると思っています。

プロトタイプなら8割まではAIで作れます。
問題は残りの2割です。

神は細部に宿る、という言葉があります。
最後のその細部にだけは、まだ人の手と目がいる。

AIとの開発を重ねて、改めてそう感じました。

坂口さんが言った「その先に面白いものがありそう」という感覚は、私にはこの残り2割の部分と重なって見えました。

先日、SNSであるサービスを見かけました。
AIで作った8割のプロトタイプを受け取って、プロが残りの2割を仕上げる。

「動くだけ」のものを「ちゃんと出せる」ものに変える仕事です。
うまいところを突いているなと思いました。

もっとも、流れはとても速い。
来年にはその2割すらいらなくなっているかもしれません。

ポジショントークのように声を大きくして、「もうAIだけでいいじゃないか」と言う人もいるでしょう。

それでも、人の仕事は終わらない。
そう私は思うんです。

仮に人の判断が必要な領域が1割を切ったとしても、企業がものを世に出す最後の一歩には、人の目を通したというエビデンスがきっといります。

写真が来ても画家は消えませんでした。カメラに「写すこと」を明け渡しても、その分「描くこと」を見つめ直したからです。

自分が培った経験を信じながら、AIという名の台風も遠ざけない。
その両方を持っている人が、これから強いのだと思います。

AIという台風のなかで

アニメーションが2Dから3Dになったときもそうでした。
テレビがインターネットになったときも同じでした。

新しいものが来るたびに、私たちは同じ線引きの議論をくり返しています。

テレビのタレントとYouTuberはどう違うのか。
そんな話をいまだに飽きずにやっているくらいですから(笑)。

きっと今のことも、いつか「そういう時代もあったよね」と振り返られるはずです。

私たちは今、AIという大きな台風に飲み込まれているのか。
それとも、まだ台風の目のなかにいるのか。

どちらにしても、私のやることはあまり変わりません。

おもしろいものをおもしろいと素直に言えること。
そして家族と、できるだけ平和に過ごすこと。

それだけはどんな台風が来ても手放したくないなと思っています。

最後に

台風6号、チャンミー。

その名前のとおり、できればかわいい顔のままそっと通り過ぎてほしいものです。

どうかみなさんも、お住まいの地域で大きな被害がありませんように。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

もし少しでも刺さるものがあれば、スキやフォローをしてもらえると次を書く励みになります。

【6月24日追記】
AIフェスティバル×noteの投稿コンテスト「#AIで遊ぼう」に合わせて、同じテーマで続編を執筆しました。ぜひ併せてお読みください。