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SNSの使用に関する調査からわかること——日本と海外の違いを噛み砕く

はじめに:「病的使用6%」という数字を、どう受け止めればよいか

「10〜20代の約6%がSNSの病的使用の疑いがある」——そんな調査結果を目にしたことはありませんか。久里浜医療センター(依存症対策全国センター系)の全国調査を引用した報道で、この数字が広く紹介されています。けれど、この「6%」は、医学的に確定した依存症の割合なのでしょうか。日本だけが突出して高いのでしょうか。そして、海外のように年齢制限や「依存性デザイン」の規制を日本が進めにくいのは、なぜなのでしょうか。

本記事では、この三つの問いを、できるだけ噛み砕いて整理します。なお、「病的使用」は医学的な診断ではなく、9項目のスクリーニング尺度で疑いとされた割合である点は、数字を読むときの前提として押さえておくとよいでしょう。国際比較のときの注意点、そして日本が他国のような強い規制に進みにくい背景まで、一つのストーリーとしてつないでいきます。筆者のnote(mhamadajp)では、「全面禁止」か「何もしない」かじゃない——世界の実験から、日本の「ちょうどいい」を探す日本の「依存症的デザイン」規制——EUのTikTok調査から、ルールをどう設定するかを考える470万アカウントは消えた。それでも、若者たちは「何も変わっていない」と言う——世界初のSNS禁止、2ヶ月後の真実など、SNSと青少年保護のテーマを扱っています。教室や家庭で「この数字をどう伝えるか」を考えるときの参考になれば幸いです。


日本と海外を比べると、何が言えるか——数字の見方の注意点

欧州のデータ:問題のあるSNS利用は増えている

国際比較の代表例として、WHO欧州地域のHBSC(学校保健行動調査)があります。11〜15歳の子どもを対象に、欧州・中央アジア・カナダの44か国・地域で実施されている大規模調査です。

2021/2022年の報告では、「問題のあるSNS利用(problematic social media use)」が11%とされています。これは2017/2018年の7%から増加しており、欧州でも問題的利用は拡大していることが示されています(WHO/HBSC report on adolescent digital behaviours)。また、欧州29か国の11〜15歳を対象に、9項目尺度(SMDS)を使った別の研究では、国別で3.22%〜14.17%、平均7.38%という推計があります(Boer et al. 2020, J Adolesc Health)。下グラフは、その研究の実データを国別にまとめたものです。

※出典:Boer et al. (2020) "Adolescents' Intense and Problematic Social Media Use and Their Well-Being in 29 Countries", J Adolesc Health, 2017/2018 HBSC調査。元論文(PMC)

日本と欧州を、どう見比べるか

日本(今回の「10〜20代で6%」)と欧州(主に10〜17歳で7〜11%など)を並べると、「日本だけが突出して高い」とは言いにくいというのが、現時点での整理です。むしろ、日本の10代だけを切り出すと(記事では7%台という報告もあります)、欧州のレンジと同程度か、近い可能性があります。

ただし、ここには重要な注意点があります。比較する調査どうしで、年齢帯・尺度・カットオフが揃っていないと、数字は簡単にひっくり返ります。たとえば、日本は10〜20代をまとめ、欧州は10〜17歳に限定している場合、単純に「6%と11%を比べて日本は低い」とは言えません。国際比較をするときは、同じ尺度・同じ年齢帯で揃えたデータを参照することが大切です。


日本が、他国のような強い規制に進みにくい理由——「無関心」ではなく、政策の型が違う

海外では、オーストラリアのように16歳未満のSNS利用を原則禁止する国や、EUのように「依存性デザイン」を規制対象にする動きが広がっています。日本では、そうした強い規制はまだ進んでいません。それは「日本が無関心だから」というより、政策の土台や法体系の違いが大きいと考えられます。

理由①:日本はすでに「フィルタリング+啓発」を軸にした法体系を持っている

日本には、青少年のネット環境整備に関する法律があり、フィルタリングの提供・普及促進教育・啓発を国や自治体に求める枠組みがあります(総務省「青少年保護の取組状況等について」)。このため、政策の重心は「全面禁止」よりも、家庭・学校・事業者の役割分担で安全利用を促す方向に寄りやすいのです。筆者の「全面禁止」か「何もしない」かじゃない——世界の実験から、日本の「ちょうどいい」を探すでは、日本が選びうる「機能制限型」の道筋を整理しています。

理由②:年齢確認の実装が難しく、プライバシーと実効性のトレードオフが大きい

海外の強い規制でも、結局の難所は年齢認証(age assurance)です。オーストラリアの16歳未満制限でも、年齢確認の仕組みが論点となり、顔認証の誤差(±2〜3歳)やVPN・身分証の借用による抜け道が報じられています。日本でも同じ論点があり、厳格にやるほど本人確認が強くなり、個人情報や監視感への反発が出やすい構造です。一方で、マイナンバーカードを使った「年齢だけを証明する」仕組みの実証が進んでおり、日本独自の解決策が模索されています(前出・日本のSNS規制記事)。

理由③:日本は「依存性デザイン」そのものを規制する枠組みが、EUほど強くない

EUのデジタルサービス法(DSA)では、無限スクロールや自動再生といった「依存性デザイン」を体系的リスクとして評価・低減する義務を課し、TikTokに対して予備的認定まで出しています(欧州委員会「TikTokの依存性デザインがDSA違反の予備的認定」)。日本では、現状、EUほど包括的な「設計に対する横断規制」の道具立てが薄く、まずはガイドライン・啓発・個別対応になりやすいのです。筆者の日本の「依存症的デザイン」規制——EUのTikTok調査から、ルールをどう設定するかを考えるでは、日本で同様の規制を検討するときの法・ガイドライン・教育の三つのレイヤーを整理しています。

理由④:とはいえ、日本でも規制の是非の検討は始まっている

最近は、海外事例(オーストラリアなど)を踏まえて、SNS規制の是非や年齢確認の方法を議論する作業部会が立ち上がったという報道も出ています(こども家庭庁「子どものネット利用で作業部会」)。つまり、「日本は永遠に規制しない」というより、「どうやって実効性を持たせるか」で時間がかかっている段階と見るのが現実的です。


まとめ:数字を正しく読み、国際比較の注意点を知り、日本の文脈を理解する

SNSの使用に関する調査からわかることを、二つの軸で整理してきました。

第一に、国際比較は可能だが、年齢帯と尺度が違うと単純比較は危険です。欧州HBSCでは問題的利用が2018年7%から2022年11%へ増加しており、レンジとしては日本と近い可能性もあります。同じ尺度・同じ年齢で揃えたデータを見る習慣が、正しい理解につながります。

第二に、日本が強い規制に進みにくいのは、既存政策がフィルタリング+啓発寄りであること、年齢認証の実装が難しいこと、EUほど設計規制の枠がないことが主な理由です。ただし、規制の議論自体は始まっており、こども家庭庁の検討会などで、日本らしい「ちょうどいい」道筋が探られています。

学校や家庭で、SNSの調査結果を話題にするときは、「他国と比べるとどうか」「日本はなぜこうなっているか」の二つをセットで考えると、より深い対話ができると思います。本記事が、その一助になれば幸いです。


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作成日:2026年2月20日

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