見出し画像

50年の窓 第19章

第19章 スペースX

サムは、Ω研究会全体会議の決定を受けて、WG 15の責任者としてHQ部門のスタッフを呼び、スペースXのイーロン・マスクとの会議を設定するように指示した。
サムはカレンも呼びたかったが、WG01の議論が特に重要な課題でもあり、ケントと2人でマスクと打ち合わせることにした。

2037年9月20日
スペースXとの打ち合わせはワシントンのCIAの会議室を借りて行われた。
当然、マスクは、Ωプロジェクトの事は大統領の8月1日の非常事態宣言を聞いていたが、火星移住チームには感染者を入れないようにする、それ以上の認識は持っていなかった。移住者にDウイルスの感染可能性があることで、これまでの努力の全てが無為に終わるとは、微塵も思ってはいなかった。というより、関心がなかった。

ケントが、一部始終を説明し、
サムが、「火星移住を人類の新たな未知の可能性へのスタート」と位置付けているのであれば、
1、移住者から、Dウイルス感染者を完全排除すべきである。Ωプロジェクトとしては、火星移住計画に齟齬の無いように協力を惜しまない。
2、現時点での世界の感染状態は大都市では非常に進んでおり80%を超えている可能性があるので、移住者の選択には最新の注意が必要である。
3、現時点で感染状態確認手段の公開と、現在Ωプロジェクト研究会議WG05で開発中のより確かな方法もいずれ提供できること。
4、また、Ωプロジェクトが万一、50年以内に適切な解を見出せなければ、火星への移住者が、その後全人類の歴史を背負うことになる。
ことを伝えた。

マスクは、これら情報に感謝し、今後の相互支援協力に合意した。
2037年8月1日に「Ωプロジェクト」が設立されたが、その約5年5ヶ月前2032年2月、既にスペースXは有人の調査のための火星着陸を済ませており、人類が想定した移住すべき場所の調査を開始し、その計画を既に明らかにしていた。

2038年1月に最初の、実験的移住者を選考する段階に来ていた。
500名が募集され、既に人選され訓練はほぼ終えていた。2038年1月から順次火星に送られる予定である。
スペースXは「Ωプロジェクト」の説明を理解し、移住者選考基準の筆頭に、直ちに「Dウイルスに感染していない」と言う条件を設定するとともに、既に人選された500名について、500名の相互間も含め完全な隔離を進めることをその場で決断した。火星への新たな人類の移住計画には金額では測れ無い膨大な優秀な技術者の時間と、同様に膨大な資金投資がかかっており、新天地での感染という軽率なつまずきが許される状況で無いことは明らかである。潜在する感染者に気づかないことはあってはならない。実験的移住者を感染させる訳にはいかない。それゆえ感染者判定の更に確かな方法が必須の要素であった。

Ωプロジェクの視点で見れば、万一、地球全人類の亜種化を避ける方法がなければ、火星移住計画は、地球の全人類がディストピアとなる運命の中で、全く予期していなかった、健全な好奇心、探究心を備えた健康な人類のタイムリーな救済手段であった。WG07の1つの解でもあった。
スペースXでの移住予定候補者の条件は。
・移住計画が必要とするいずれかの分野での博士または修士課程修了者。
・健康であり、体力が人並み以上の男女。
・Dウイルスに感染していない。
・好奇心に満ち、学ぶことが好きな青年男女。
・課題適応能力が高くどのような課題も躊躇なく取り組める。
・倫理的でありフェアネスを重視する。
など、

ケントは、ひととき、Dウイルスの話を忘れて、マスクの話に吸い込まれてゆく自分を強く感じていた。
Ωプロジェクトが提供する新たな、完全な感染チェック方法で、何名かの欠員が出れば、再度移住者の募集がある。この言葉が、ケントは耳から離れなかった。

<次記事等へのリンク>
第20章 つかの間の出会い
目次

#創作大賞2026
#エンタメ原作部門
#マンガ原作
#好奇心
#オントロジー
#長編小説
#SF小説


いいなと思ったら応援しよう!