コミュニケーションデザイナー不在の組織を支えるAI活用事例
こんにちは、IVRy(アイブリー)でプロダクトデザイナーをしているみっちー(@michiminstar)です。
今回は「IVRyデザイナーブログリレー」第6回目として、IVRyのデザイナーが現在取り組んでいる、コミュニケーションデザイン領域におけるAI活用事例についてご紹介します。
はじめに
IVRyには現在、専任のコミュニケーションデザイナーがいません。
そのため、プロダクトデザイナー4名がプロダクトのデザインに加えて、ブランディングの刷新、マーケティング・広報資料の作成、採用コミュニケーションといった多岐にわたるコミュニケーションデザイン業務を兼任しています (※一部業務委託パートナーの方とも協業しています)。
幅広い領域でデザイナーが価値を発揮できることは喜ばしい反面、以下のような課題にも直面しています:
プロダクトデザイナーが本来注力すべきプロダクトデザイン業務に十分な時間を割くことの難しさ
社内外のコミュニケーション全体において、ブランドイメージとプロダクトのメッセージングの一貫性を保つことの難しさ
潜在・既存顧客にプロダクトの価値を効果的に伝えるためのコミュニケーションデザインの設計・最適化
プロダクト上のUXライティングなどを通じた、IVRyのブランドを体現する言葉遣いやトーンの整備不足
こうした状況を打開し、コミュニケーションデザイン業務の効率化や質の向上を図るため、IVRyのデザイン組織ではAIツールを積極的に導入しています。
次のセクションからは、AIツールを使ってどのような工夫を凝らしているのか、具体的なポイントに絞ってご紹介していきます。後半では、こうしたAI活用を後押しする組織のあり方、特に大切にしている姿勢や仕組みづくりについてもお話しします。
本記事が、コミュニケーションデザインに携わる方々や、同様の課題を抱える組織のヒントになれば幸いです。
コミュニケーションデザインにおけるAI活用事例
1. アイデア出し・インサイト抽出での活用
最近では、プライベートでも仕事でも生成AIを使わない日はない、という方も多いかと思います。
私たちIVRyデザインチームも日常的にLLMを活用していますが、単なる情報の要約や壁打ちに留まらず、より複雑な思考プロセスにおける強力なパートナーとして活用しています。
特に、論点検討やアイデア発想の初期段階では、LLMを壁打ち相手にすることで、思考が整理され、アイデアの幅を広げる出発点となっています。
例えば、最近では全社合宿の企画において、LLMを活用してコンテンツ資料の構成案やクリエイティブを効率的に作成したり、合宿ワークで出た大量のアイデアや意見を構造的に整理・分析し、深いインサイトを抽出するといった試みを行いました。新しい機能の訴求メッセージや、ブログ記事の構成案検討においても、AIに多様な切り口や表現パターンを提案してもらい、議論の出発点としています。


全体像を素早く把握したうえで、テーマごとにインサイトをまとめていった。
自分ひとりでは考えが深まらない時でも、AIとの対話を通じてスムーズに新しい視点を得ることができ、アイデア発想が劇的にスピードアップしました。これにより、従来の枠にとらわれない多様な視点を取り入れながらコンセプトを検討できるようになりました。
全社合宿におけるコミュニケーションデザインについて、詳しくはIVRyのデザイナー石川(@ishikakko)さんがnoteにまとめています。よければぜひご覧ください👇
2. ビジュアルアウトプット作成の効率化
ビジュアルアウトプット作成におけるAI活用は、私たちのチームにとって比較的新しい領域でした。
以前から画像生成AIツールの存在は認識していましたが、業務レベルで本格的にワークフローへ組み込むまでには至っていませんでした。ツールへのアクセス性や、生成される画像の活用イメージが掴みきれていなかった、といった背景があったかもしれません。
しかし、2025年3月にChatGPTのImage Generation機能がリリースされ、使い慣れたChatGPTのインターフェース上で手軽に画像生成ができるようになったことで、状況は一変。テキストでの思考整理やアイデア出しから、そのまま同じツール内でビジュアルの方向性を試せるようになったことのインパクトは大きく、IVRyのデザイナーの間でビジュアルデザインプロセスにおけるAIの実務活用は一気に進みました。
具体的な事例としては、LPのfirstviewで用いているイラスト (一部) や、イベント集客用のアイキャッチ画像を制作する際、AIに複数の構図やテイストのラフ案を素早く生成させ、その中から最適なものを絞り込むことで、デザイン検討と制作にかかる工数を大幅に削減できています。
今では、生成AIを活用して短時間で複数のビジュアルアイデアを具現化し、その中から方向性を定めるという方法を当たり前のように取り入れています。
👇 実際にIVRyのデザイナーらが作成したクリエイティブを紹介
IVRyデザインブログリレー第3回目のOGP作成では、デザイナー@torimuzunoさんがプロダクトで登場するイラストのタッチに合わせて、デザイナーらの似顔絵を生成AIで作成。それぞれの顔の特徴がよく表現されており、個人的にとても気に入っているイラストです(その時の記事はこちら)。

それぞれの顔の特徴がよく表現されている。
イベント集客用のOGP作成においてもImage Generationは大活躍しています。アウトプットの作成は、主に以下のようなプロセスで進めています。
イベントの概要やキーワード、参考画像をLLMに入力し、初期案を生成。
初期案をもとにデザイン要素を絞り込み、要素ごとに再生成を繰り返しながら調整。
最終的なビジュアルをブラッシュアップして完成。
最初は意図通りにならないことも多く、試行錯誤は必要不可欠です。特に、フィードバックに対してアウトプットが期待通りに変化しなかったり、一度「良い」と思ったデザインが、再生成の際に再現できなかったりする点は、Image Generationを使っていて感じる難点です。細部のコントロールが難しかったり、特定のニュアンスやタッチを正確に表現するのに苦労したりといった、表現上の課題に直面することもあります。
それでも、上記のプロセスでLLMと協調しながら作業を進めることで、短時間でクリエイティブを作れるようになったので、その時間をコンセプト設計やアイデアの洗練といった、より付加価値の高いクリエイティブワークに充てることができています。
結果として、限られたデザイナーのリソースでも、生成AIを活用することで短時間で質の高いビジュアルアイデアを多数生み出し、スピーディにアウトプットを形にすることが可能になってきていると実感しています。


3. ブランドクリエイティブの試作・探索
ブランドとして一貫性があり、かつ質の高いクリエイティブを生み出すための試作・探索にもAIを活用しています。
これは私が個人的に実験している内容ですが、MidjourneyのMoodboard機能などを活用することで、既存のブランドアセットをベースに、イメージに合ったクリエイティブを一定の質と一貫性を担保しながら量産できるような試作や、IVRyが目指しているブランドイメージを具体的に可視化するための探索を進めています。

プランによっては生成されたアウトプットを編集できるらしいので今後こちらも試してみたい。
これにより、「IVRyらしいデザイン」や「次の事業フェーズに向けて目指すべきデザイン」といった抽象的な概念を、効率よく具体的なビジュアルとして探索・言語化する試みが可能になっています。
こうしたAIによるビジュアル探索は、視覚的な方向性を素早く試行錯誤する上で非常に有効です。しかし、これはあくまでも表層的な表現の話であり、ブランドのバックボーンとなる世界観や価値観、プロダクトに込められた思いを深く言語化し、それを組織全体や顧客に伝播させていくことは、人間のデザイナーの重要な役割だと考えています。
現在IVRyでは、保坂 (@h0sa) さんや石川さんが中心となって、こういったブランドの根幹を洗練させていくことに積極的に取り組んでいます。アップデートされていくブランドをいかに組織内外に浸透させ、広く受け入れられるものにしていくかが、今後のコミュニケーションデザインにおける挑戦の一つだと捉えています。
そのため、ブランドの世界観を構築し、言葉とビジュアルの両面からコミュニケーションをリードできるコミュニケーションデザイナーの存在が、今後より一層重要になると感じています。
個人の思いとしては、今後、こうしたAIによる試作・探索と、デザイナーの専門性を組み合わせることで、ブランドクリエイティブ開発をさらに進化させていきたいと考えています。

AI活用を後押しする組織のあり方
積極的な越境による、協奏・共創
AI活用を後押しする組織のあり方として、まず「領域にとらわれない積極的な越境」が挙げられます。
これは、私たちデザイナーがプロダクトデザインの領域を超えてコミュニケーションデザインに携わることだけでなく、ノンデザイナーがデザインやクリエイティブ作成に関わることも含んでいます。このような双方向の「越境」が可能な文化こそが、AIを最大限に活かし、組織全体の創造性や課題解決能力を高める上で重要だと考えます。
特にIVRyでは、ノンデザイナーがデザイン領域への「越境」する上で、非常にユニークかつ強みとなる土壌があります。現在250名近い組織規模において、Figma利用者は約180名近くに上ります。その約半数は単にデザインツールに触れるだけでなく、実際に情報整理や作図などを行っているメンバーです。
Figmaの扱いに慣れているメンバーが多いことに加え、生成AIによってデザインのハードルが更に下がったことで、専門的なデザインスキルがないメンバーの越境がどんどん後押しされてきているなと感じています。
ただ、正直なところ、このポテンシャルは十分に引き出せていないのが現状です。ノンデザイナーがデザイン領域へ越境するための仕組みづくりは、これから積極的に取り組んで行きたいテーマの一つです。
具体的には、デザインに関する基本的な知識やツールのより応用的な使い方を学べる機会の提供、ノンデザイナー向けの使いやすいデザインテンプレートの整備、AIツールを活用したクリエイティブ作成をサポートする体制など、少しずつ挑戦して行きたいです。
双方向の越境が当たり前になることで、デザイナーはより戦略的なデザイン課題に集中でき、ノンデザイナーは自身のアイデアをよりクリエイティブに表現できるようになる。このような組織全体での相乗効果を生み出すことが、AI時代のコミュニケーションデザインを推進する上で不可欠な要素だと考えています。
「まず試す」文化が育む変化への柔軟性
IVRyでは、Slack AIやNotion AI、Gemini AdvancedなどのAIツールが全社的に利用可能で、日常業務の中にすっかり定着しています。また一部のチームではChatGPT ProやCursor、Devinなども活用しています。
もちろん、活用にあたって、従業員が安全かつ適切にツールを利用できるよう、社内ガイドラインの整備も進められています。

全社導入と活用ガイドラインによって、スムーズにAI活用が浸透している。
最初はデザインリソース不足という必要性に駆られてAIツールの導入に至った側面もありましたが、こうした組織全体の柔軟な姿勢と、新しいAIツールや活用法をスピーディーに試せる土壌があることで、最近では「この領域にAI活用できないか?」とアイデアを考え、試すこと自体に楽しさも感じるようになってきました。
リソースの制約に縛られすぎず、業務効率化やクリエイティブの可能性拡大に向けた新しい挑戦を続けるうえで、柔軟に試行錯誤できる環境の大切さを様々な場面で実感しています。
この「まず試す」文化こそが、AI時代に組織が変化し続けられる原動力になっていると強く感じています。
おわりに
今回記事でお話したAIツール活用事例はほんの触りで、5/28に開催を予定しているイベントでは、さらに実践的なAI活用事例をお話しする予定です。
ぜひこちらもご参加いただけると嬉しいです!
引き続き、絶賛積極採用中!
IVRyでは現在、コミュニケーションデザインを牽引してくださる、一人目コミュニケーションデザイナーを絶賛募集中です!
AIをはじめ最新ツールを積極的に活用しながら、新しいコミュニケーションの形を創造し、「IVRyらしさ」をさらに引き上げてくれる仲間との出会いを楽しみにしています。
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