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返品オーケー

芝刈り機を買って、返した。
正しくは、買って、使って、返した。
ロサンゼルスの美大生だった頃の話。

フィルム学科だったから、課題は決まって短編ムービー。ストーリーを考えている間は想像力を羽ばたかせて楽しい。いざ、撮影の段取りを考える段になると、悩ましい。

頭の中の絵をどうやって、現実にしよう?
どんなに短いストーリーでも当然、大道具小道具、衣装は自分持ち。ハリウッドのブロックバスターじゃあるまいし、
どうやって、費用を捻出しよう?
場面設定を欲張れば欲張るほど、作りたい絵を妥協したくなければ、頭を抱えることになる。

そんな時、先輩アートディレクターから奥の手アドバイスが聞こえてきた。
それが「返品テクニック」。授業では絶対に教えてもらえない、映像制作の裏技。

なんでも買って、使って、元通りにして、
返品すればいいんだよ。

えっ!
使った後でも返品できるんですか?

そう、ここはアメリカ。
大きな店の店員は1日中、山のような返品作業に追われてる。いちいち、中身を確かめたりする手間なんかかけやしない。
レシートさえ揃っていれば、問題なし。

えええ!?
信じ難い話だったが、そう言われて観察してみれば、ホームセンターなど大規模店舗の返品カウンターでは、その通りだった。右から左に、はいっ、次!と返品の山をさばく店員さん達。

現に彼は私の小さなムービーのため芝刈り機
(背景の芝を綺麗に揃えるために必要だった)を買って、使って、返品した。
日本人の私には真似のできない堂々とした態度で。

大丈夫だった?と恐る恐る、私。
へーき、へーき、一応、ついた芝は取っておいたよと、彼。
あ、ありがとう。

そんなことで驚いてるのって笑った彼、
友人のウェディングに着ていくタキシードもその手を使うんだって。買った時のタグさえちゃんと見えないように隠して着ればいいんだ、
常識だよって。

わわわ!
そうだったんだ、、

生きるための知恵とは言え、必要に迫られての悪事。あの時のドキドキは忘れられない。

後日、このいかにもアメリカ的体験を日本人の知人に打ち明けた時、「嫌だわ、そんなやり方、軽蔑しちゃう。私なら絶対やらない。」と吐き捨てるように言われた。

うう〜ん、そうだけど、、
「そうだね」って言えなかったのは、
何故だろう。

人のこと言えないのは、共犯だから?
それとも私自身、
新品ピカピカとはほど遠いから? 
色んなところから返品されて戻ってきた身だから?

これまで私を返品してくださった皆さま、
ありがとう。
ちゃんと戻してくれたから、
部品、ちゃんと揃ってる(と思う)。
あの時の芝刈り機じゃあないけれど、
まだまだちゃんと使えますよって
(言えるかなぁ)。

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