【3分で読める恋物語】もしもし天国-His Side-🌙
#片想い文芸部 参加②📕✒️
──もう一度、あいつの声が聞きたくて。
「あいつ、またか……」
なんか、いっつもこうやって、うっかり充電忘れんねん。
通知多すぎて見るのめんどいとか、
起きたら電源落ちてたとか、そんなんばっか。
──それが、なんかもう、愛しかった。
……なあ、今回もそうちゃうん?
電源切れてるだけで、また、なんかの拍子に起きて、
「ごめんごめん、切れてた〜」って、
いつもの調子で言うんちゃうん?
……ちゃう、ってわかってるやん。
俺、ちゃんとあの日、お別れしたやろ。
眠るようにして、いってもうたやん。
もう、二度と会えへん、って──。
でも、もしも。
もう一回だけでも、話せたら。
たった一言でも、声、聞けたら。
……それだけのつもりやった。
かけたんや。
……でも、ほんまに繋がるなんて、思ってなかった。
そしたら。
「……もしもし?」
…って、繋がった。
「お前、なんで電源切っとんねん!」
……反射的に言うてもうてた。
びっくりして、アホみたいに。
夢やんな?
じゃないとおかしい。
でも…
なんでもええ。
あいつの声、ちゃんと、返ってきた。
「……ごめんごめん。うっかりしてた」
…ほんまに?ほんまにあいつの声や…。
嬉しくて喉の奥、ずっと震えてる。
「…まぁ、今日も、多分そうやろなと思ったわ。」
口では強がったけど、
ずっと願ってた。
繋がるはずないって思いながらも──
心のどっかで、ずっと、待ってた。
「なんかさ、急に声、聞きたくなって。」
「なにそれ。嬉しいこと言ってくれるじゃん。」
──その声に、胸の奥が、じんとした。
「俺さ、元気ないときって、ついお前の写真見返してまうねん」
……それ、ほんまにほんまやねん。
恋人でもないのに、アホみたいに写真ある。
どの顔も、大事で。
笑ってるのも、拗ねてるのも。
見てると、ふっと力が抜けるんや。
けど。つい、照れ臭くなって、
「……って言っても、変顔ばっかやけどな」
…言うてた。
「それ消してって言ったじゃん!」
むくれながら笑う声。
ああ、もう……ずるいって。
その声ひとつで、
全部、ほどけてまう。
それからは、なんてことない話。
"いつも"みたいに、くだらん話。
でも、それが一番、しあわせやった。
でもな、違うんよ。
そう。
あいつ、もう、いるわけないんよ。
──なぁ、そっちは、どうなん?
──寂しない?どっかの暗がりで、ひとりで怖がってへん?
──向こうの世界って、どんなとこ?
ほんまは、そういうの聞きたかった。
不安になってるなら、紛らわしてやりたかった。
なのに、なんか、よう言えへんかった。
でも、あいつが泣いてるの、わかった。
声の奥で、かすかに鼻をすする音。
「……なあ、今、お前、変な顔してない?」
俺、わざと明るく言うた。
「今さ、絶対、変な顔してるやろ」
そしたら、「なにそれ」って、ちょっとだけ、笑った気がした。
「…うん。その顔の方が、ええよ。笑ってる顔が、一番」
ほんまに、そう思ってた。
泣いてる顔も、怒ってる顔も、全部好きやけど、やっぱり、あいつの笑顔が…太陽みたいに笑ってる顔が一番。
「なーにキョロキョロしとんねん。」
きっと、スマホを耳にあてながら、まわり見まわしてんやろなって思ったら、愛しいわ。
待ち合わせの時みたいやん。
「ま、変な顔も好きやけどな」
ぽつりと言うたその言葉に、
あいつ、どんな顔したんやろ。
「なあ。俺、お前が友達でよかったわ。
…一番の……めちゃくちゃ大事な人」
──ほんまはな、ほんまは…もっとちゃんと言いたいこと、あった。
好きやった。大好きやった。
今も、これからも、ずっと。
…けど、それは言わんことにした。
あいつは、あいつのままでおってほしかったから。
ちょっと間をあけて、「じゃあな」って、
深呼吸した。
「……またね。」
「おう。」
ぷつん、て音。
通話が、終わった。
画面には、寝ぐせ頭の俺。
寝ぼけてたんかな、俺。
でも、あいつの声、はっきり残ってた。
なんやろな。
なんか、少しだけ救われた気がした。
もう、大丈夫やな?
あいつが、
笑ってくれたから。
…ふと、空を見上げたら──
夜の隙間で、
月が笑っていた。
imagined with : 紀土 純米吟醸
カラクチキッド
photo by : tamaga_waさん
**Her side**
こちらに参加させていただきました✨
