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【ショートストーリー】心臓が一個じゃ足りない。-His side-


――このまま“幼なじみ”のフリ、いつまで続けんねん。



本当は、

あいつのこと、ずっと見てた。
目ぇ合うた瞬間に、心の中まで丸わかり。
小さい頃からずっとそう。
口には出せへんけど、表情に全部出る。
緊張してる時なんか、眉毛ちょっと垂れるねん。
本人、気づいてへんけどな。

ほんまは、前からちょっとずつ思ってた。
けど、それを恋やって気づくの、だいぶ後やった。

「なんで他のやつとおったらモヤモヤすんねやろ」って。

まあ、そんな自分に気づいた時点で、もう遅かったんやろな。
だから、こっちから動くしかなかった。
あいつがビビってんのもわかってたし。
このまま幼なじみのフリして、
お互い目そらして、好きって言わんまんま終わるとか、そんなん嫌やったから。



幼なじみとしてやなくて、
"両思い"として、手、握ったとき――

驚いたようにちょっと力入れて、でも引かへん。
目線、泳いで、頬がふわって赤なって。
そんなん見たら、あかんて。
可愛すぎて、理性が一瞬消えた。

あいつ、じーっと繋いだ両手、見てた。ピクリとも動かんと。
しばらくしてから、目線がゆっくり上がってった。指、手首、腕、肩……って、
まるで何か確かめるみたいに。
昔と変わったとこ、探してたんかもしれん。
「女の子みたいやな」って言われてた頃の華奢で色白な俺と、今の俺と。

そんで、肩まで見たあたりで、
これは目ぇ合わせるチャンス――ってタイミングで、俺は動いた。

ぐっと顔、近づけて、
すぐそこにあるあいつの視線を捉えるように覗き込んだ。


「……お。やっと目ぇ合うたな。」


その瞬間、あいつ、「うぁあぁぁぁ……ミラレタァァァ!!!」って顔して、反射的に手ぇ動かそうとした。

多分、顔、隠そうとしたんやと思う。
けど俺、手ぇ離さんかった。

――見たい。
今の顔、ぜーーーったい、見たい。

ちょっとニヤけてもうたかもしれん。
面白がってたんやなくて、
可愛すぎて。この一瞬がもったいなくて。
そしたら、あいつ、動いた。

でも――想定外やった。
スッ…てうつむいてきたと思ったら、
…どぅぅぅぅん!!て。俺の胸に、まさかの頭突き。大げさちゃうで?ほんまにそんな音したもんな。

「……うっ…」

一瞬、声出てもうたわ。
地味に、まあまあ痛い。
でもな、それ以上に、
その瞬間のあいつの無言の焦り方が、おもろすぎて。
固まったまま、顔も上げられへんようになって、
じっと俺の胸に頭のてっぺんくっつけてる。

……それ、もう「もたれた」やなくて「ぶつかってきた」やん。当たり屋やん。俺、このあと何か要求されるん?

笑いたかったけど、
あいつ、たぶん今、自分が世界で一番恥ずかしい女やと思てるやろから、
ぐっとこらえた。……無理やりやけどな。

そっと、頭にアゴのせた。
ほんまは笑い転げたいくらいやけど、
その姿があんまりにも可愛くて、
ふざける気失せたわ。


「耳、真っ赤やな。」って
ちょんって触ってみたら、ビクッて跳ねよって。

…あぁ、たぶん今、顔真っ赤で眉毛も垂れてるやろな。


この顔、きっと俺しか知らん。

……いや、今は後頭部しか見えへんけどな。


imagined with : ばくれん吟醸超辛口+20
photo by : どんむさん


**Her side**

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