ボイスメモリーいつの日かきっと私は涙する
このテープをきくとき
ぜ〜ったいこのことを守ってね
1人できくこと
というカセットテープが見つかった。

実家の部屋の片付けをしていた時だ。
おお。
なんだこれは。
字の幼さから、多分小学生の頃に違いない。
何が収録されているんだろう。
全く覚えていない。
『1人できくこと』って、、、
なんか、怖いな。
小学生の私は何か秘密を抱えていたんだろうか。
歌歌ってるとか?
ピアノ弾いてるとか?
これはもう聞くしかない。
家に居た父にテープレコーダーを借りた。
しかし、子どもたちも一緒に来ていたのでなかなか1人になれるチャンスがない。
どこか公園にでも連れ出してくれないかな・・・と思っていたら
「じぃーちゃんとサッカーでもするか!」
珍しく父がナイスなことを言ってくれた。
「行くぅーーーー!!」と次男。
問題は・・・・・兄貴の方だ。
「えぇ〜・・・どこでするのぉ・・・」
行きなはれ!サッカーしに行きなはれ!!!!
私は心で強く願った。
なんだかんだ条件をつけてなんとか行ってくれた。
心の中でガッツポーズをしながら、笑顔で見送る私。
さて
あのカセットテープを聞く時がきた。
ドキドキする。
ケースをパカッと開けてみる。
え、

『スーちゃん♡ミーちゃん』
と書いてある。
スーちゃん。
小学2年生の時に転校してきた女の子。同じクラスになり、とても仲良くなった。
何年生かの時に引越してしまったが、暫くの間文通をしていた。
たった1年間しか同じクラスじゃなかったのに、小学生の友だちといえばいつもスーちゃんを思い出す。
スーちゃんの記事→「いつか息子が大人になった時」
あのスーちゃん?
私はドキドキしながら再生ボタンを押す。
カセットが回り出す。
ジリジリジリ・・・
みぃちゃん、この間はお土産ありがとう。私は何にも渡せなくてごめんね。代わりにこのカセットを送るね。みぃちゃん、みぃちゃんは私の声忘れてない?私はみぃちゃんの声忘れてないよ。
スーちゃんだ、スーちゃんの声だ。
私の中で、遠い遠い声の記憶が微かによみがえる。目の奥の方にぼんやり浮かぶスーちゃんの姿。
これは、スーちゃんからのボイスレターだったんだ。
私は懐かしさで胸がいっぱいになりながらスーちゃんの声に耳を傾けた。
ピアノ習ったんだよ。とても優しい先生だよ。でも、みぃちゃんはかわいそうだね。
あんな先生で。みぃちゃんのピアノの先生見てみたいな。
はっきり言うなスーちゃん。
思い出した。私はピアノを習っていたが途中で先生が代わったんだ。前の先生は優しかったけど、新しい先生は、、、めっちゃ怖かった。きっとその愚痴をスーちゃんに言っていたんだな、私は。
そして、このボイスレターは話の内容からスーちゃんが引っ越した後だと思われる。
私は5年2組になったよ。小林先生って言うんだよ。優しいけど、口癖が「いいかげんにせんかっ!」だよ。でも、まぁ・・・優しいからいいけど。みぃちゃんの5年5組の先生はどんな先生?怖い?優しい?また聞かせてね。
5年生なんだ、私たち。ってことは、11歳くらいかな。
この後もスーちゃんの新しい学校での近況報告が続く。スーちゃんは5年生の時に引っ越したんだ、きっと。
じゃあ、話は短かったけどこれで終わりね。ごめんね、短くて。じゃあね、バイバーイ!
ううん。スーちゃん。結構な尺だったよ笑。
あ、そうだ。B面も聞いてね。
って、終わらないんかい!B面もあるんかい!
私はスーちゃんにツッコミを入れつつA面を早送りして、カセットをくるっとB面にひっくり返した。
この作業もなんだか懐かしい。
B面も短いけど聞いてね。今からピアノを弾くよ。間違えるけど笑わないでね。
スーちゃんが弾くピアノの音色が聞こえてくる。
その音の向こうの向こうで、11歳のスーちゃんが一生懸命ピアノを弾いてる。
時々間違えならがも一生懸命弾いている。
音と私との間に、何十年もの年月が流れているはずなのに、11歳のスーちゃんをものすごく近くに感じることできる。
途中で変になってごめんね。今のは「バイエル」だよ。みぃちゃんのピアノも聞きたいな。みぃちゃんも送ってね。
私は、送ったのだろうか。もう記憶にない。
話は変わるんだけど、手紙交換、月に2回にしない?月に1回だとあんまり順番が回ってこないし、だから、月に2回にしない?お手紙にその質問を書いておくから、もし、イヤだったら「イヤ」のところに丸してね。もし、いいよだったら「うん」のところに丸してね。なるべく・・・「うん」を願いたいんだけどな。でも、みぃちゃんが決めてね。
私は「うん」に丸をつけて送ったのかな。きっと、送ったよね。
この後もスーちゃんの近況報告が続く。
短いと言っておきながら、B面もなかなか長い。
おしゃべりなスーちゃんである。
みぃちゃん。冬休みはお泊まり会しようね。ドッジボールもしようね。バドミントンもしようね。ローラースケートもしようね。みぃちゃんはドッジボール強いもんね。
私はこの部分で涙が出た。
なぜだろう。
あっ!ちょっと話が短いんだけど、これで本当に最後だよ。最後って言ってもまたお手紙書くけどね。私の声、ちゃんと覚えておいてね。たまにはみぃちゃんもこーゆーの送ってね。これはみぃちゃんへのプレゼント。だから大切にしまっておいてね。また私の声が聞きたくなったらいつでも聞いてね。じゃあね、バイバーイ!
まさかのスーちゃんからのボイスレター。
私は約束通り大切にしまっておいたんだ。
何十年もの時を経てそれは再び私に届いた。
「声」
目を閉じ、その声から記憶を辿る。
そこには幼い頃の私たちが楽しそうに文通している。
覚えてる。
スーちゃん。今頃、どこで、何をしているのだろう。
スマホなんてなかった時代。
もう、探しようもない。
「声」から思い出す。
「声」から想像する。
とても愛おしく幸せな時間。
「声」が残るって、なんかいいな。
映像よりも、文章よりも、身近に感じる。
見えないからこそ、すぐそばにいるような、そんな気がしてくる。
耳からの情報だけで想像するから、なんてゆうか・・・
ぎゅぎゅっと濃縮される。
このぎゅぎゅっが、たまらない。
っああ!!うまく伝えられない。
びっくりするほどいい表現が思いつかない。
伝わる?伝わるかな、このぎゅぎゅっで。
もし、「こういうことでしょ?」ってわかる方がいらっしゃいましたらコメント欄で是非教えてください!笑
写真や動画、そしてnoteにたくさんたくさん「今」を残している。
忘れたくないから。
「声」も残したい。
私は子供たちの「声」を残していこう、そう思った。
試しに、次男の歌を録音してみた。
地球をテーマにした壮大な愛の歌です。
どうぞ!
名曲誕生。
歌もいいけど、「会話」を録っておきたい。
次男があまりにも可愛いので、私はインタビューしてみた。
すると、まさかの返事が返ってきた。
実にポジティブ。
ああ、もっと早くから「声」を残しておくんだった。
2歳とか3歳とか面白いことたくさん言ってたのになぁ。
私は思いつく。
過去の動画から声だけを拾ってみよう。
長男が2歳の時。
今でもこの時のことはよく覚えている。
就寝前の出来事。
どうしたって不可能な場所にどうしてもプラレールを置きたいと叫んでいる2歳の長男と、1秒でも早く寝てほしいと願う母の1コマ。
今思うと、この時から既に長男のこだわりの強さは始まっていたんだ。
そうだ。
2人の遊ぶ声も残しておこう。
長男が5歳、次男が3歳の時。
頭にはおもちゃを入れていたBOXをかぶり、手には遊ぶ用に降格した調理器具のお玉やトング、お腹にはお鍋の蓋などをガムテープで貼り付け、戦闘モード全開の闘いごっこがとても可愛かった。
このボイスメモリー。
完全に自己満でしかない。
目の前の彼らは、ずいぶん成長した。
長男が8歳で、次男はもうすぐ6歳だ。
でも声を聞いていると、すぐそばにあの頃の幼い息子たちがいる気がする。
いつの日か再び届くこのボイスメモリー。
きっと私は泣くだろう。
懐かしくて愛おしくて泣くだろう。
この時の彼らに会いたくて、もう一度会いたくて、泣くだろう。
同時に目の前の成長した彼らを見て、成長したなぁって嬉しく思うだろう。
泣いたり笑ったり忙しい。
「声」って、いい。
「声」を残しておくことって、いい。
私たちには、思い出す力がる。想像する力がある。それって、ものすごく幸せなことだ。
そんな気持ちにさせてくれてありがとう。
私は、11歳のスーちゃんにそっと語りかけた。
