第二章 涙は心が頑張った証ニャ
太った三毛猫シェフの心が軽くなる言葉
第二章 涙は心が頑張った証ニャ

雨上がりの朝。
太った三毛猫シェフは、お店の前に小さな植木鉢を並べながら空を見上げていた。
昨日の雨をたっぷり吸った花たちは、どこか嬉しそうに咲いている。
「涙も雨と似ているニャ。」
シェフはそうつぶやいた。
その日の午後、一人の常連さんが店を訪れた。
いつもは明るく笑っている犬の青年だった。
「こんにちは!」
そう言いながら入ってきたものの、今日はどこか元気がない。
シェフはいつものように、温かいスープをそっと差し出した。
「今日は少し疲れた顔をしてるニャ。」
青年は苦笑いを浮かべた。
「実は昨日、ひとりで泣いちゃったんです。」
「大人なのに、情けないですよね。」
シェフは静かに首を横に振った。
「どうして情けないと思うニャ?」
青年は少し考えてから答えた。
「大人は泣かないものだと思っていました。」
「泣くのは弱い人だけだって。」
シェフはカップを磨く手を止めて、ゆっくり話し始めた。
「人はね、悲しい時だけ涙を流すわけじゃないニャ。」
「悔しかった時。」
「頑張り続けて疲れた時。」
「誰にも本音を言えなかった時。」
「本当は助けてほしかった時。」
そんなたくさんの気持ちが重なって、涙になるニャ。
青年は黙って聞いていた。
「木だって強い風に耐え続けたあとには、枝を少し休ませるニャ。」
「畑だって、雨が降るから作物が育つニャ。」
「人の心も同じニャ。」
「涙は、心が壊れないように自分を守っているのかもしれないニャ。」
青年の目が少し潤んだ。
「じゃあ、昨日の涙も無駄じゃなかったんですね。」
シェフは優しく笑った。
「もちろんニャ。」
「昨日の涙は、昨日まで頑張ってきたあなたからの手紙ニャ。」
「『もう少し休もう。』『少し自分を大切にしよう。』って、心が伝えてくれた言葉なんだニャ。」
青年はカップを両手で包みながら、小さく息をついた。
「ずっと、涙を隠すことばかり考えていました。」
「でも今日、その涙にも意味があるって思えました。」
シェフは窓の外の花を見つめながら、静かに言った。
「花は雨を嫌わないニャ。」
「雨があるから、またきれいに咲けることを知っているからニャ。」
「人もきっと同じニャ。」
「涙を流した人ほど、いつか誰かの痛みに気づけるようになるニャ。」
その言葉に、青年は初めて心から笑った。
その笑顔は昨日までとは少し違う、どこかやさしく、あたたかい笑顔だった。

「シェフ……。」
犬の青年は、カップを見つめたまま静かに話し始めた。
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