今のは、こちらの花火ではない
花火は、光ってから音が届くまでに少し間があります。
その数秒のあいだ、あの花火はまだ誰にも聞かれていないんじゃないか。そう思ったので、マンガにしました。
八月一日、花火の日の話です。


八月一日は花火の日だそうです。
由来を調べると、いくつかの出来事が同じ日付に重なっていました。ひとつは、一九四八年に、戦時中禁止されていた花火が解禁されたこと。それから、一九五五年に東京の花火問屋で大きな爆発事故があったこと。同じ日にPLの花火大会が開かれること。祝いと事故が同じ日付に乗っているのが、なんだか花火らしいと思いました。
花火は、坂の上から見るのがいちばん好きです。
港の向こうで、ぽん、と光る。それからしばらく、なにも起きない時間があります。三秒か、四秒か。数えたことはないけれど、毎回「あれ、今のは音がないやつだったかな」と思うくらいには長い。そのあとで、腹のあたりに、どーん、と来る。耳ではなく腹に来るのが花火だと思っています。

あの、光ってから音が届くまでの数秒のことを、いつも少し考えます。
もう上がってしまったのに、まだ誰にも聞かれていない花火。届くのを待たされている音。空のあの高さから、ここまで降りてくる途中の、どこかにあるはずのもの。
今回のマンガは、それだけの話です。たまが得意げにその発見を語って、じゃあ次のも待ってみようと身構えて、目をつぶって、腹に力を入れて。
来ませんでした。
隣に座っている人は、空を見たまま杯を置いて、こちらの花火ではない、と言いました。
それがどこの花火なのかは、聞いていません。聞かないほうがいいような気がしたので。

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