紙ふぶきを肩にかけて、それから列に並んだ
六月三十日、夏越の祓に行ってきた。
正月から半年、知らず知らずのうちに溜め込んだ罪や穢れを祓う日らしい。

最初に渡されたのは、和紙に包まれた人形(ひとがた)だった。開けると、紙吹雪のような細かい紙片が一緒に入っている。これを自分の肩のあたりに、左、右、左とかけて厄を祓うのだという。肩に紙片が落ちる感触は、思っていたよりずっと軽い。雪というより、消しゴムのかすに近い。
それから人形にも、罪や穢れを託す。息を吹きかけて、体をひと撫でしたあと、もう一度和紙に包んで神職さんに返す。自分の形をした紙を手放す瞬間は、なんとなく分身を提出しているような気分になる。
ここで集まった人形は、参拝者全員の分をまとめて、その場でお祓いされる。神職さんが祝詞を上げる間、自分の人形がどれだったか、もう見分けがつかない。
人形を返し、神職さんによる人形のお祓いを終えたところで、ようやく列ができていた。3列に並んで、順番に茅の輪をくぐる。最初から並んでいたわけではなく、ここで初めて行列になる。すごい列だね、と誰かが言うのが聞こえた。

茅の輪は、想像していたより大きかった。直径は私の身長より高いくらいで、緑の草が縄でぎっちり編み込まれている。
くぐり方には作法があるらしく、木の看板に図解が出ていた。八の字を描くように、左、右、また左、と三回くぐる。看板にはこう書いてあった。
水無月の夏越の祓へする人は千歳の命延ぶというなり
歌を唱えながらくぐると、夏の災厄を免れるという。声に出して読むのは少し照れる。小声で唱えながら、列の流れに合わせて八の字を描いた。一周目はまだ歌詞を覚えていなくて、二周目でようやく口が回るようになった。
くぐり終えると、宮司さんの話があった。由来や作法の説明が続いたあと、最後にこう言われた。家族のためにも、もう一度くぐって帰ってください。
自分の分は、紙にも輪にも、もう済ませた。これは、家族の分らしい。

話が終わると、夏越だんごを渡された。白、黄、緑の三色。袋の中で並んでいるのを見ると、信号機みたいだ。それを手に持ったまま、もう一度茅の輪をくぐった。一周目より、心なしか歩幅が大きかった気がする。
家に帰って、だんごを一個ずつ食べた。味の違いはそれほどない。たぶん色で意味が違うのだろうけれど、確かめないまま食べ終えた。
これでひとまず、半年分の厄は、紙の分も、輪の分も、自分の分も家族の分も、落ちたことになっている。

*漫画は宇佐美式六号で描きました。
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