完全数パフェ
ビルビルが完璧に整えてくれたのに、私はそれを横目に何かを始めてしまった。

6月28日はパフェの日、らしい。
パフェ(parfait)はフランス語で「完全」を意味する言葉だそうだ。1950年のこの日、日本のプロ野球史上初めて完全試合(パーフェクトゲーム)が達成された。それにちなんで、パフェの日になった。
おまけに、6と28は、完全数の最初の二つだという。
6=1+2+3。
28=1+2+4+7+14。
自分自身を除いた約数の合計が、自分自身と一致する数。それを完全数というらしい。
完全が、三重に重なる日。
ビルビルがそう恭しく説明してくれた。テーブルの上には、申し分のないパフェがすでにあった。きれいに層になっていて、いちごもブルーベリーも生クリームも、文句のつけようがない出来栄えだった。
普通の人なら、ここでスプーンを手に取るのだと思う。
私はそうしなかった。

完全数の構造を、パフェで再現できるんじゃないか。
そう思ってしまったが最後、もう止まらなかった。
メモ用紙を引き寄せて、書き始める。
1段目にチェリー1個。
2段目にイチゴ2個。
3段目にブルーベリー3個。
これで6が完成。
次は28だから——
ホイップ1絞り。
アイス2スクープ。
コーンフレーク4枚。
グラノーラ7粒。
そして一番下に、14個入るものを敷く。
14。
14個敷けるもの。
しばらく考えて、私は冷蔵庫を開けた。

枝豆があった。
ちょうど14粒、数えながら敷いた。
完璧だった。完璧に完全数だった。
できあがった「完全数パフェ」は、もはやパフェの形をしていなかったが、それは些細な問題だ。形ではなく、構造が完全なのだから。
ビルビルは横で、何も言わなかった。
ただ、真顔になっていた。
何も言わないというのが、いちばん雄弁だということを、私は今日学んだ。

ひと口、口に運んでみた。
枝豆と、グラノーラと、アイスが、口の中で混ざる。
甘いものと、しょっぱいものと、冷たいものと。
全部が、それぞれの方向を向いていた。
うん。
思ったより、おいしくない。
数式の上では、これ以上ないくらい完全なのに。
ビルビルが目を伏せて、小さく言った。
「……『完全』という言葉、深うございますね」
本当に、深い。
*漫画は新宇佐美式六号で描きました。
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