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うつ病のことを、やさしく知るために


このごろ、朝起きるのがつらい。 好きだったことが、なんだか色あせて見える。 笑っているはずなのに、心のどこかが静かに泣いている。

この記事は、こんな方に向けて書きました。
· 自分はうつ病なのかな、と感じている方
· ご家族や大切な人がうつ病と診断された方
· 職場や暮らしのなかで、誰かを支えている方
· うつ病のことを、正しく、あたたかく知りたい方

ご自分に近いところから、読んでいただいてかまいません。
うつ病は、日本ではおよそ15人に1人が、人生のどこかで経験するといわれています。決して、特別なことではないのです。
 






うつは「氣の持ちよう」ではなく、体と脳のできごと

「氣の持ちようだよ」「みんなつらいんだから」
そんな言葉に、何度も傷ついてきた方もいらっしゃるかもしれません。
けれど、うつ病はれっきとした「状態」です。脳のなかではたらく神経伝達物質セロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンといったもののバランスがゆらぐことで、氣分や考え方、体の調子にまで、はばひろく影響が出てきます。
これは、骨折や高血圧と同じように、体のなかで起きているできごとです。
意志や根性で、どうにかするものではありません。
 

こころより先に、体が教えてくれることがあります

うつ病の症状は、こころと体の両方にあらわれます。
こころにあらわれること
· ほぼ毎日つづく、強い気分の落ちこみ
· 以前は楽しめたことに、興味や喜びがわかない
· 強い罪悪感や自己否定(「自分はダメだ」「迷惑をかけている」)
· 集中力・記憶力・判断力が落ちる
· 消えてしまいたい、という考えが頭をよぎる
体にあらわれること
· 眠れない、あるいは眠っても疲れがとれない
· 食欲がわかない、または逆に止まらない
· 原因のわからない、強いだるさや疲れ
· 頭やお腹、肩のあたりが重い
· 朝がいちばんつらく、夕方すこし楽になる(日内変動)
こうした体のサインは、「もう少し休ませてほしい」という、あなた自身からのメッセージです。
氣力でねじ伏せようとせず、まずはその声に、そっと耳をすませてあげてくださいね。

「元氣そうに見える」うつもあります

うつ病の方は、「しんどい」と口に出せないことが、とても多いのです。笑顔で日常をこなしながら、内側では深く苦しんでいる、そのような「微笑みうつ」と呼ばれる状態も、めずらしくありません。「普段どおり働いているから大丈夫」と、外側だけで判断しないことが大切です。
また、男性の場合は、うつが表に出にくい傾向があります。「弱音を吐いてはいけない」というプレッシャーから、落ちこみが、怒りっぽさやお酒の量、働きすぎとしてあらわれ、気づかれないまま深まってしまうこともあります。
 

「なまけ」と「うつ」は、まるで違うもの

なまけているときは、本当はやりたい氣もちが、心のどこかに残っています。
でも、うつのときは、その「やりたい」という火種そのものが、小さくなってしまう。これは、意志の力でどうにかできるものではありません。
だからこそ、「動けない自分」を叱る必要は、まったくないのです。
動けないことは、サボりではなく、回復のためにエネルギーを守ろうとしている、あなたの体のはたらきでもあります。
 

なぜ、うつ病になるのでしょう

うつ病に「なりやすい人」がいる、というより、誰でも、条件が重なればなり得るものです。
きっかけになりやすいのは、長く続く働きすぎや慢性的なストレス、大きな喪失(死別・離婚・失業など)、人間関係のつらさやハラスメント、出産後のホルモンの変化(産後うつ)、病氣やけがなど。
背景には、遺伝的な素因や、完璧主義・責任感の強さ・人への氣づかいの深さ、そして「ひとりで抱えてしまう」孤立といったものが、そっと関わっていることもあります。
「自分が弱いからなった」のではなく、環境と脳と心が複雑に絡みあった結果なのです。
むしろ、真面目にがんばってきた人ほど、なりやすいともいえます。
 

治療と回復のこと

うつ病は、適切な治療によって、回復していける状態です。ただし、骨折と同じで、よくなるには時間がかかります。
お薬について
SSRI(セロトニンのはたらきを助けるお薬)やSNRIなどが使われます。効果を感じるまでに2〜4週間ほどかかることが多く、自己判断でやめてしまうのは危険です。
「一度飲んだらやめられないのでは」と心配される方も多いのですが、回復に合わせて、医師と相談しながら少しずつ減らしていくのが一般的です。
不安なことは、遠慮なく主治医に聞いてくださいね。
また、心理療法も併用されるのも良いと思います。
暮らしのなかでできること
規則正しい睡眠、無理のない範囲での日光浴やお散歩、そして「人とのつながりを完全には断たない」こと。これらが、回復の土台をそっと支えてくれます。
回復は、まっすぐな一本道ではありません。波を描きながら、少しずつ上がっていくイメージです。
うつ病は、再発しやすい病氣でもあります。
症状が落ち着いたからと、自己判断でお薬をやめてしまうと、ぶり返すことが多いのです。治療の終わり方は、どうか主治医と一緒に決めてくださいね。
 

いま、あなたにできるやさしいこと

完璧に立ち直ろうとしなくても大丈夫です。
ほんの小さな「自分への許可」から始めてみませんか。
· 一日のうち、ひとつだけ「ほっとする瞬間」を見つける
· 「助けて」と言うことを、自分にゆるす
· 今日は、できなかったことを数えない
そして、つらさが二週間以上続いているようなら、どうか専門の窓口に相談してくださいね。
「これくらいで行っていいのかな」と思う必要はありません。早めの相談が、回復を早めてくれます。だれかに頼ることは、弱さではなく、自分を大切にする力です。
すでに病院に通っている方、お薬を飲んでいる方も、どうか焦らないでくださいね。
通うこと、飲みつづけること、それ自体が、もう充分に「がんばっている」ことです。
よくなっている実感がまだなくても、回復は波を描きながら進んでいきます。今日のあなたは、ちゃんと、その途中にいます。
 

大切な人を支えている、あなたへ

誰かのそばで支える立場にいる方へ。よかれと思った言葉が、ときに相手を傷つけてしまうことがあります。
たとえば「頑張れ」は、もう限界までがんばっている人を、さらに追いつめてしまいます。「氣の持ちようだよ」は病氣そのものを否定する響きを持ち、「もっとつらい人もいる」は苦しみを比べられたように感じさせます。「早く治してね」も、治したい本人にとっては大きなプレッシャーになります。
かわりに、こんな寄り添い方があります。
· 「そばにいるよ」「何かあれば言ってね」…ただ、いてくれるだけでいい
· 「今日はどう?」…短く、プレッシャーのない声かけで
· 解決しようとしない…アドバイスよりも、「聴くこと」が力になります
· 本人のペースを尊重する…「もっとできるはず」と焦らせない
そして、受診をためらっている方には、「一緒に行こうか?」と声をかけてあげてください。ひとりでは病院に行けない方は、本当に多いのです。
受診できたこと自体を、どうか褒めてあげてくださいね。
支える人自身も、心がすり減ってしまうことがあります。あなたがつぶれてしまうと、支えられている人も苦しくなります。
どうか、あなた自身のケアも忘れずに。専門家や家族会の力を借りることも、立派な選択です。
 

もし「死にたい」と言われたら

これは、支える人がもっとも怖れる場面かもしれません。
まずは、落ち着いて、聴いてください。
「死にたい」という言葉を口にできたのは、それだけあなたを信頼している証でもあります。
· 「そんなこと言わないで」とは言わない(話を閉じてしまいます)
· 「死にたいくらい、つらいんだね」と、まず受け止める
· 「今、安全でいられそう?」とたずねる
· 今すぐ危ないと感じたら、ひとりにしない
· 必要なら、一緒に相談窓口へ連絡する
ひとりで抱えこまず、医療機関や相談窓口につなぐことを、いちばんに考えてくださいね。

相談できる窓口

· こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(お住まいの地域の公的な相談機関につながります)
· よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
· #いのちSOS :0120-061-338
· そのほかの窓口は、厚生労働省「まもろうよ こころ」(https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/)にまとめられています
※受付時間は窓口や地域によって変わります。最新の情報は、各窓口や上記サイトでご確認くださいね。
 

さいごに

あなたがいま、まだここまで読んでくださっていること。
それだけで、心のどこかに「よくなりたい」という小さな灯が、ともっている証です。
その灯を、 あなたのペースで、ゆっくりで、いいので大切に守ってあげてください。
うつ病を正しく知ることは、いつか、誰かを助ける力になります。
そして、いつかの自分を助けることにも、なるかもしれません。
「正しく知る」「ジャッジしない」「一緒にいる」。

つらい日々のなかで、ほんの少しでも氣もちがゆるみますように。
そっと、あなたのそばから願っています。

この記事は一般的な情報であり、診断や治療にかわるものではありません。
つらさが続くときは、どうかひとりで抱えこまず、医療機関や相談窓口を頼ってくださいね。



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