見出し画像

16 訪問リハビリの日常【押してダメなら引いてみろ】

「訪問リハビリの日常」は、私の体験をもとにしたフィクションです。登場人物は架空の人物であり、実際の出来事とは異なります。

80代の男性、小西さん(仮名)の家に伺いました。
私は「こんにちは、リハビリに伺いました。」と挨拶をすると、
小西さんはいつも通り「また来たの、帰って。バイバイ。」と言い、「リハビリなんてやりたない。」と言います。訪問リハビリは毎回その会話から始まります。
小西さんはリハビリなんてやりたくないのです。
しかし、ずっと家におり、動くことが嫌い。家事は全て妻任せで、外出もしない。いつもテレビの番をしているので、どんどん動けなくなり、家の中でもよく転ぶようになり、妻や子どもから「リハビリはしなさい。」と言われ、仕方なく訪問リハビリを行っていると言うわけです。
私も小西さんの奥さんから「嫌だって言ったって、ちゃんとやらせたって。動けなくなると困るからね。」と言われ、「嫌だ。」と言う小西さんを何とか、「今日もリハビリやりますよ。」と促したり、「いつもは10回やっているけど、今日は5回でいいのでやりましょう。」など回数を減らしたり、本人が何とかやってくれる妥協点を探しながら行っていました。

 そんなことが続いたある日、私は少し違う対応をとってみました。
いつものように小西さんの家に行き、私は「こんにちは、リハビリに伺いました。」と挨拶をしました。小西さんはいつも通り「また来たの、帰って。バイバイ。」と言い、「リハビリなんてやりたない。」と言いました。そこで、私は、「リハビリやりたくないですか。」と少し寂しそうに言いしばらく黙っていました。その日は、本当にやりたくないと言われたら、奥さんやケアマネさんに連絡し、リハビリをお休みにしようかと考えていました。
 すると、小西さんが「まぁ、しょうがいない、やるか。」と言い、その日から、あまり文句を言わずに、リハビリを行うようになったのです。

きっと、本人も分かっていたのでしょう。
本当は自分にリハビリが必要なことに。どんどん動けなくなってきており、リハビリをやらなくてはいけないことに。

しかし、私が「リハビリをやりましょう。」と押し付けるような言い方をしていたがために、小西さんに「やらない。やりたくない。」などと言うことを言わせてしまっていたのだと思います。リハビリは本人の意欲がとても大切です。「やりたくない。」と言っているのに、「やらないと動けなくなりますよ。」などと脅すようなことを言ったり、「頑張りましょう。」と励ましたりしても、逆効果な人もいることに、もっと早く気付かないといけなかったのです。

その人がどんな人なのか、どう対応すべきなのかなど、しっかりと観察し、本人が「リハビリをやろう。」と思ってもらえるような接し方ができるよう、今後はしていかないといけないな、と反省する機会となりました。

本当にやりたくないなら、一回くらい休みになったって仕方がない。
リハビリをやらなくても死ぬわけではないし。
むしろ、本人がやらないと言う選択をすることを尊重することで、その後のリハビリが良好に進むなら、そっちの方が絶対良いよね。(もちろん、ずっとやらないと困ってしまいますが。)

あの日から、小西さんは「帰って。」とか「リハビリはやらん。」とは言わなくなりました。意欲的とは言えませんが、小西さんなりに頑張ってリハビリを行ってくれるようになりました。


いいなと思ったら応援しよう!

春野 さとみ【子育て×ワーママ×訪リハ】 よろしければサポートをお願いします!いただいたサポートはエンディングノート事業の活動費として使わせていただきます!