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🌙【ちょっず埅っおお、台湟。】第䞀章 第四話① 花は舞い、人は挂う

前回のあらすじず、今回の話
台湟で働く悊子は、日本に圌氏がいながらも、台湟人のコりずドラむブデヌトに行くこずになった。
金山の廟でカモ肉を食べ、野柳の海岞公園で奇岩ず出䌚い、二人の距離は䞀気に近づいた。けれど、悊子の倢の䞭で忘れかけおいた䜕かが珟れる。二人はそのたた挂うように、ある廟に入っお行く。

野柳の駐車堎に戻り、二人は぀ないだ手をほどいた。

車のドアを悊子は思い切り閉めた。

ザッ

錓膜に空気の圧を感じた。

車内のダッシュボヌドは、䜕もかもを溶かしおしたいそうなほどに熱くゆらゆらず蜃気楌を攟っおいた。

カチッ、キュルル  ノォン

キヌが巊に回され、車は埮かに揺れた。
そしお間髪なく、゚アコンが最倧颚で向かっおきた。ただ生暖かい。汗が枇く間もなく、額から汗が染み出おくる。
コり君が車の窓を党開にした。

「車内は暑いね早く車を走らせよう。倖の颚の方が涌しいなぁ。
そうだ、悊ちゃん、䜕か歌聎く」

コりは話しながら車のシフトレバヌをカクカクず動かす。そしお、巊手を䌞ばし助手垭のヘッドレストを抱え、バックガラスを芗き蟌みながら、車をバックさせた。浮き䞊がる銖筋や肩の筋肉がシャツの䞊から透け、倧人の男性を感じさせる。車は䞀旊停たるず、次は前方ぞずゆっくりず進みだした。

「うん。台湟の流行曲倧䜓知っおいるよコり君䜕が奜きなの」

「そうだね。梁靜茹ずかにしおみる」

「ぞぇ男性なのに梁靜茹聎くんだ。」

「聎くよ。歌がドラマチックでいいよね。もちろん五月倩ずか䌍䜰ずかJAYも聎くけどね。」

「じゃ、梁靜茹にしよう」

「ダッシュボヌドにCD入っおるから入れおみお」

ただ少し暖かいダッシュボヌドの蓋を開けるず、CDがいく぀か入っおいた。
マレヌシア出身の恋愛゜ングの女王「梁靜茹」
CDをかけるず、枅涌感溢れる梁靜茹の歌声が車内に響く。

「梁靜茹のこのCDの䞭で、䜕の歌が奜きなの」

「えぇ、そうだな。いっぱい奜きだけど、『小手拉倧手』奜きだよ。」

「あ、それっお、ゞブリの『猫の恩返し』の歌だよね」

「そうだったっけゞブリは芋るけど、『猫の恩返し』はただ芋おないなぁ。少女の倏䌑みみたいな音楜が軜快でいいよね」


『小手拉倧手』小さな手が倧きな手を匕っ匵る。そんなタむトルは、さっきたでの自分たちの姿だった。今コりの倧きな手はハンドルに乗せられおいる。小さな悊子の手は、どこか心もずなく、目の前の膝の䞊に茉っおいる。その倧きな手を、今、手に取りたい、どこか二人でもっず遠くに行きたい、音楜を聎きながら、匷くそう思った。

「今から、海岞線をぐるっず回っおドラむブするよ。海が芋えるから爜やかだよね。この季節にぎったりだ。冬だったら、荒れ狂っおお芋ごたえは薄いけどさ」

「私、䞀床冬にこの北海岞をドラむブしたこずある。もう䜕幎も前だけど。確かに寒くお、散歩どころではなかったよ。」

「あ、そうなんだ。その時はどこに行ったの」

「犬の廟があったず思う。なんだか暗かった。」

「あぁ。それね。『十八王公』だよ。もう少し先だね。あそこはさ、粜がおいしいんだ。」

「粜・・・蚘憶にないなぁ。食べおないず思う。」

「食べに行くそれずも、そのたたずっず二人でドラむブする」

「うヌん。ずりあえず、今はただわかんないや。どっちも楜しそう。   そういえばさ、どうしお祀られおいるのが『挂流した犬ず17人の男達なんだろう』っお思ったんだ。海の神様ず蚀えば、台湟は『媜祖』の女神様でしょう野柳のお廟も媜祖様じゃないのかな」
「着県点が鋭いね。野柳のお廟は媜祖様じゃない。枅の時代に、無人の船が流れ着いお、その船に䞀䜓の神様が入っおたんだっお。それを海蟺の人が蚘念しおお堂を造ったらしい。お祭りも盛倧なんだよ。十八王公も挂流者たちだよ。」

「ぞぇ、そうなんだ北海岞の海は荒れるもんね。流れ着くものに神意を感じおしたうのは、わからなくはないなぁ。北海岞は、すこしさみしさがあるね。」

「そうかもしれないね。でも、岞壁ず海のコントラストは矎しい。倏は最高だ。」

———流れ着いた者、それでも、心は故郷にあるのだろうか。

悊子はふずそう思った。

♢

車はすでに野柳の枯町を抜けおいた。巊偎には、青々ず茂る緑の山がそびえ、右偎には青い海が岞壁に向けお癜波を届けおいる。刺すような日差しに差し蟌むように、コりは前方を芋据えアクセルを螏んでいる。

二人は時折目を合わせながら、どこたでも続く海岞線を芋おいた。
ドラむブの心地よい振動に合わせお、梁靜茹ののびやかなラブ゜ングが車内に響き、さわやかな海岞線にバニラ゚ッセンスを溶かしおいく。

「悊ちゃん、疲れおたら寝おもいいよ」

「運転しおもらっおるのに、そんなの悪いよ、日本だずマナヌ違反かも」

「え本圓に日本人はそんなこず気にするの僕の車ではそんな遠慮しなくおいいよ。リラックスしお過ごしおくれればいいんだから。僕は隣で運転できお楜しいよ」

癜波を芋ながら、悊子はそっず目を閉じた。
誰かが悊子の手の䞊に手を重ねおいる。
優しいたなざしに包たれた気がした。





森の䞭を歩いおいた。
空から、癜いものがくるくるず回りながら、もったりぜたりず萜ちおくる。
それは癜い小さなお花だった。
癜い小さな花は次々ず䞊から萜ちお、あっずいう間にあたりを真っ癜にしおいく。
螏みしめた癜い花は、透明に透き通り、腐葉土の茶色にベヌルをたずわせおいく。


しゃがみ蟌んで、䞀茪の小さな癜い花を手に取ろうずしたが、もう虫が぀いおいた。

埌ろからどんどんず人がやっおくる。こんなずころで立ち止たっおいおはいけない。でも、悊子は癜い矎しい花を拟いたかった。

ふず、埌ろから声がかかった。

「這就絊䜠。還沒螩的新鮮癜癜䞀朵桐花
これあげるよ。ただ螏たれおない。新鮮で真っ癜の桐花だよ。」

厚みのある倧きな指に小さな癜い花が぀たたれおいた。

「啊謝謝。桐花山路真是挂亮。
あ、ありがずう。桐花の山道は本圓にきれいね」

そう話した時に、悊子の腕に桐花がたた䞀茪萜ちおきた。

悊子はその桐花を指で぀たむず、目の前の男性に差し出した。

「這就絊䜠。還沒螩的新鮮癜癜䞀朵桐花
これあげるよ。ただ螏たれおない。新鮮で真っ癜の桐花だよ。」

そう蚀うず、その男性は笑った。

「ありがずう・・・君もしかしお、倖囜人」

「うん。そうよ。」

するず、埌ろから旗を持った女性がやっおきた。芳光局局長だ。

「あら、悊子さん、いい人ず知り合ったわね。圌ずっおも面倒芋がいいのよ。幎霢も近いし、いろいろ教えおもらいなさい。私たちもこの地域の芳光アドバむザヌずしお圌にはいろいろお䞖話になっおいるのよ。コり君、日本人の悊子さんをアテンドしおあげおね。」

そう蚀うず芳光局局長は、早歩きで先の方に歩いお行っおしたった。埌ろからはただ別の蚘者たちが远い䞊げおいく。

「君䞀人なの」

「線集長たちは先にいるわ。ゆっくり桐花を芳察したかったけど、みんなズンズン行っおしたうから」

「君の名前は」

「あ、悊子です。」

「悊子さん、リュックサック、僕が持っおあげたすよ。山道だからしんどいでしょう」

「え、倧䞈倫ですよ、自分で背負いたすから。」

「でも、先芋お」

悊子の先には、どこたでも䞊ぞず続く山道の階段があった。

「僕、山道慣れおるから。遠慮しないで。」

そう蚀うず、悊子のリュックサックを半ば奪うように持っおしたった。

身軜になった悊子は、足取り軜く階段を䞊り始めた。
ボタン雪のように舞い萜ちる桐花の林の䞭を、身軜な䜓でくるっず䞀回転したかった。䞊を芋䞊げるず、朚挏れ日から、ダむダモンドのように陜光が光る。そしお、いく぀もの癜い花がポトリポトリず萜ちおいくのが芋えた。

癜い花は次第に萜ちる数が増えおいく。ポトリポトリず萜ちる花は颚に揺れ、悊子の呚りは真っ癜な倧嵐になった。目を閉じお倧きく深呌吞するず、新鮮な青い空気が、スッず胞いっぱいに充満し、生きおいる土の䞭から、䜕かが芜吹くそんな期埅を感じた。

ゆっくりず目を開けるず、癜い倧吹雪は、薄ピンクに倉わっおいた。
现かく散り乱れるピンクの花嵐の䞭に、悊子は䞀人䜇んでいた。
もう䞀床深呌吞するず、そこには、春先の冷たく也いた空気ず、雚䞊がりのアスファルトの匂いが混じっおいるのを感じた。

「悊ちゃん、寒くない春の倧寒波だね」

そう蚀っお、振り向いお自分のパヌカヌを悊子にかけおくれたのは、日本の圌氏だった。癜い森は、赀いがんがりが明滅するアスファルトの桜䞊朚に倉わっおいた。懐かしい焌きそばの匂いがする。

「来幎も䞀緒に花芋をしようね」
ずやさしい笑顔で語り掛ける圌氏の暪顔に、悊子ははっずした。圌氏の肩に桜の花が䞀茪萜ちた。



ハッずしお目が芚めた。
目の前には、抜けるような青空ず青い海、そしお、海岞に迫りくる緑の山々だった。

「悊ちゃん、起きたね。」

コり君が優しく悊子を芋぀めた。䜓にはコり君のシャツがかかっおいた。シャツからコり君の匂いがかすかにたちのがる。

「ごめん。寝ちゃった。今どのあたりなの」

「もうすぐ十八王公だよ。おなかすいおないちょっず寄っおくか。」

時刻は16時前だった。

切り立぀海の厖の端に、燊爛ず煌めく廟が芋えた。車は巊折りィンカヌを出し、橋ぞの道に入っおいくず、橋の欄干に犬の圫像が鎮座しおいた。

ひらひらず数本の旗がはためく境内ぞ、車は埐行しお入っお行った。

車から降りた。
静かに、少し暗く鎮座する倧きなお堂を目にするず、悊子は無意識に䞀歩埌退りした。

———挂流者の廟。こんなずころに来おしたった。私はどこたでいくのだろうか。

コり君が少し先から振り向いた。
「えっちゃん、早くおいで」

悊子は、拳をギュッず握りしめおコりに向かっお歩いた。
倪陜が傟き、廟の圱が長く延びようずしおいた。

🌙

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