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問われるメンターの役割り

mikiokousaka

起業や新規事業を推進する人達のメンターを、長く続けていますが、私が行っているメンターとは違う形のメンターの方が一般的だ、と感じるので、どう違うのかを整理してみました。

3つのメンター像があると私は考えています。
・実務的なメンター
・精神的なメンター
・問答的なメンター
この中で、私自身は問答的なメンターだと思っています。
これらは一般的な分け方ではないですし、メンターに関わる人達が、メンター像を意識している事もないので、非常に個人的な分類です。
また、はっきり分かれたものではなく、比重が違うという程度の、曖昧な分類でもあります。

・実務的なメンターは「育成」を主に行います。
基本的な業務の助言から、具体的なスキルやノウハウの支援までを、よき理解者として行うメンターです。
最近では、社内メンター制度といった形で、業務評価に直接関わらない先輩社員が後輩社員を担当することで、相談のし易い環境を提供することが行われていますし、社外メンターであれば更に利害関係も無く、客観的な視点で助言をしてもらえることが期待できます。
一般的にメンターというと、これらのメンターを指すことが多いです。
メンターとは「キャリア」や「メンタル」について相談に乗ってもらえる人、という解釈が普通ですが、その中でも、何が足りてなくて何を獲得すべきかについての助言として、主に「キャリア」形成に必要な、専門的なスキルや特別なノウハウの身につけ方を支援するのが、実務的なメンターになります。

・精神的なメンターは「啓発」を主に行います。
スキルやノウハウを最大限に活かすために必要な「メンタル」の獲得支援をするのが、精神的なメンターです。
キャリア教育的な、役に立つ助言や、具体的なスキルやノウハウについても支援を行いますが、それらを更に活用することを求めている企業の代表や一流選手が選ぶメンターが、この精神的なメンターです。
自らの能力を、多くの他者の中で埋没させないようにすることや、他者と協調し、他者を活用して、発揮できるようにします。
ほとんどが一対一という関係性で成り立つメンターでありながら、数多くのリーダーや、有名人のメンターになっていることで、広く名前が知られている人もいるメンターです。

・問答的なメンターは「整理」を主に行います。
「メンタル」や「キャリア」を、直接的な対象にしないので、特殊なメンターの位置付けになります。
スキルやノウハウの獲得やそれを最大限に活かすことを求めている場面でも、それに対する手段や手法が足りていないのではなく、問題や課題を整理できていないことが原因で、やりたいことが実現しないことが、往々にしてあります。
原因が判らない、ということもありますが、原因を間違えている、こともあるので、気付きが生まれるようにすることが、問答的なメンターが行う支援です。
気付きに必要なことは、具体化しているモノやコトを、抽象化することです。
概念化(Conceptualization)して抽象化(Abstraction)するという、とても単純な手順なのですが、日常的に具体化されているものに関わっていると、意識的に取り組まない限り、概念として捉え直すことが難しいので、主観を離れて問い直すメンターの支援が、必要になる場面があるわけです。

3つのメンター像(1)実務的なメンター(2)精神的なメンター(3)問答的なメンターについて、改めて考えてみると、(1)の実務的なメンターは人材育成として「テクニカル」な部分を、(2)の精神的なメンターは能力開発として「ヒューマン」な部分を、(3)の問答的なメンターは抽象化力として「コンセプチュアル」な部分をそれぞれ担っていると言えそうです。
この「テクニカル」「ヒューマン」「コンセプチュアル」という分類が、それぞれのメンター像に当てはまるとした場合、アメリカの経営学者ロバート・カッツ(Robert Katz)氏が1974年に提唱した理論「カッツモデル(Katz's Three-Skill Approach)」で定義されている、組織に属する労働者の3階層に必要なスキルに合わせて、現場監督層が必要な「テクニカル」を実務的なメンター,幹部管理層が必要な「ヒューマン」を精神的なメンター,経営層が必要な「コンセプチュアル」を問答的なメンターが担う、という役割分担が成り立つかもしれません。
ピーター・ドラッカー(Peter Drucker)氏は、組織を構成する労働者を4階層にし、「テクニカル」「ヒューマン」「コンセプチュアル」のスキルに「マネジメント」を加えた、4つのスキルが重要だとしました。
現場監督層は実務的なメンターに「テクニカル」を、幹部管理層は精神的なメンターに「ヒューマン」に比重を置いてスキルを得るとすると、カッツモデルと同じですが、現場監督層の下位に、知識労働者層を位置付けて「マネジメント」が不用な層とし、経営層には他のスキルよりも重きを置いて「マネジメント」スキルが必要としているところがカッツモデルとの違いです。
経営層に対して精神的なメンターは、「ヒューマン」という人間関係のスキルに「マネジメント」という人間活用のスキルまでも、能力開発として担う必要があるとしている、ということだと考えられます。
ドラッカーモデルの大きな特徴は、4階層の組織労働者に対し、全て同じように「コンセプチュアル」スキルが重要だとしていることです。
そうなると問答的なメンター像は特殊なもの、ということではなくなり、実務的なメンターや精神的なメンターにも、問答的なメンター像の役割りが必要になってきそうです。

ところで、起業や新規事業を推進する人達は、個人に近い少人数で、業務管轄も明確ではない状態で事業を推進しているので、「テクニカル」「ヒューマン」「コンセプチュアル」の、どのスキルも、収益を最大化(経営)し、効率化(運営)して、事業を具体化(管理)するため(「マネジメント」のため)に必要としていると思います。
そのため、「メンタル」や「キャリア」について相談に乗ってもらえる人という狭義のメンター像よりも幅広く(1)実務的なメンターの専門的で特殊な育成(2)精神的なメンターの意識を改革する啓発、だけではなく(3)問答的なメンターの概念化による整理まで、同程度の比重で支援されることを求めていることになります。

メンターの公的な資格や、公的な教育機関等はなく、誰でもメンターを名乗ることができるので、さまざまなメンターがいて、期待することができる能力は、さまざまです。
一般社会の中で実績を残している、特定の分野に長けたスペシャリストが、それを活かしてメンターになることが多いのですが、起業や新規事業を推進する人をメンターする必要から、問題や課題の整理を必要とされ、結果として問答的なメンターにもなっていくと感じています。
今後、起業や新規事業を推進する、アントレプレナーシップに富んだ人が数多くなってくると、壁打ちと呼ばれるようなメンターはAIのエコーチェンバーの心地良さに代替えされて、いなくなり、問題や課題の整理が出来るメンターの必要性が高まって、問答的なメンターの役割も、徐々に認知されていくのではないかと思っています。

©️2026 Mikio Kousaka

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