「認証を取ること」と「市場で売れること」は別の話
先日ある展示会へ行きました。
ハラール認証を取得した商品・サービスが数多く紹介されており、私がこれまで接点のなかった企業にも多数出会うことができました。
その中で、改めて強く感じたことがありました。
それは、「認証を取ること」と「市場で売れること」は、まったく別の話だということです。
今日のポイント(3つ)
ハラール認証は“市場への入口”であり、売上を保証するものではない
認証取得後に必要なのは、誰にどう届けるかというマーケティング視点
ハラールマークの表示方法は、規制だけでなく“信頼形成”の問題でもある
「認証があれば売れる」は危険な思い込み
ブースを順に巡りながら、気になる点が2つありました。
ひとつは、消費者を見定めないままPRしているということ。
もうひとつは、ハラールマークの表示方法です。
前者はどの業界でも起きがちなプロダクトアウトの問題ですが、ハラール市場には特有の落とし穴があると感じています。
「ハラール認証は巨大なムスリム市場へのパスポート」という期待だけが先行し、「認証さえ取れば」「これだけコストをかけたのだから」という発想になってしまっているケースが散見されました。
誰に、どのように届けるかといった、肝心の視点が後回しになっているのです。
認証機関は販売代理店ではない
背景にあると感じたのが認証機関への過度な期待です。
認証機関の役割はあくまで「ハラール基準を満たしているかを審査・認証すること」です。マーケットへのアクセス方法や販路開拓、ターゲット設定といったビジネス上のマーケティングについては、提供できるアドバイスが限定的であることは当然です。
にもかかわらず、認証取得後の販売や集客まで認証機関が後押ししてくれると期待しているように見受けられた出展者が少なくありませんでした。
認証はスタート地点に立つための条件であって、残念ながらそれ自体がビジネスの成果を保証するものではありません。
シール貼付は「規制」だけでなく「信頼」の問題
後者は、規制とマーケティングの両面からリスクとして捉えていただきたい点です。
複数の出展者が、ハラール認証マークをシールでパッケージに貼付していました。理由を聞くと、「日本人向けの既存パッケージと共用しているため」とのことでした。
まず規制面から確認しておきます。
海外の主要な輸出先において、ハラールロゴはパッケージへの直接印刷が原則とされています。
たとえばマレーシア(JAKIM)のハラール認証手続きマニュアルでは、ラベルは「目立つように、明確に、消えない形で印刷されること」が求められています。
インドネシア(BPJPH)でも、ラベルは「容易に剥がせない・改ざんできないこと」が条件とされており、条件を満たさないシールは規定違反となりえます。
シールが一概に禁止されているわけではありませんが、要件を満たすかどうかは慎重に確認が必要です。
しかしここで強調したいのは、規制以前のマーケティング上の問題です。
ムスリム消費者にとって、認証は非常に重要な判断基準です。その認証マークがシールで貼られていたとしたら、「なぜ印刷されていないのか」「本当に正規の認証品なのか」という疑念を、ほんの一瞬でも抱かせてしまうかもしれません。
規制上の問題がないとしても、消費者に違和感を与える機会は極力排除すべきです。信頼は積み上げるのに時間がかかり、失うのは一瞬です。ハラール市場においてはなおさらです。
シールを貼付している背景に「パッケージの共用」という現実的なコスト上の事情があることは理解できます。ただ、それは対象市場を本気で見据えた判断かどうかを、改めて問い直す必要があるかもしれません。
今回の展示会を通じて、ハラールに関する業界の現状と課題を改めて認識しました。「認証を取ること」と「市場で売れること」は別の話であり、その間を埋めるのがマーケティングとしての専門知識です。
弊社はオウンドメディアの運営と国内外のコンサルティングを通じて、こうした実務上の課題を継続的に把握しています。今後もその知見を現場で活かしてまいります。
