024 おはようバイオレンス(後編)
熊本の皆様にお見舞い申し上げます。何度でも立ち上がる不屈の「肥後もっこす」な方々の一助となればと、先ほど微力ながら寄付させて頂きました。
さて、急に馬鹿馬鹿しい話に戻ります。
ある日、僕は担任から最前列中央、教卓の目の前の席に配置替えされた。
理由は寝てばかりいたからで、当時の僕は教科書を全部学校に置き、枕だけ持って通学してたのだ。
ある意味、ヌンチャクを持って来る奴よりも頭が悪い。
もちろん、枕と言っても本物の枕を小脇に抱えて校門を入って来るワケではなく、大きな巾着袋にバスタオルを幾つも詰めて、枕に見えないよう偽装してたのである。
ただ、寝てる事は偽装出来ないので、とうとう席替えさせられたのだ。
一生懸命働いて学費を出してくれてたお父さんお母さんすいませんでした。
さて、すぐに極太万年筆でブッ叩かれる英会話の日。基本、Mr.ケインが自分以外と会話してる時はヒマだ。
目の前を見ると例の馬鹿デカい鞄が置いてある。
ケインは教室の後ろで人間木魚を連打中。
よし、この隙に鞄に何が入ってるのか覗いてやろう。
そんな好奇心から堂々とチャックを開けて中を覗いてみたら、本が1冊とバンダナで包んだ弁当らしきタッパーが見えた。
だったらもっと小さい鞄でいいやろ!

そして、ははーん…これが例の日本人妻の愛妻弁当ってワケですか。
欧米の男性には日本の女性を妻にしたいという人が一定数居て、その理由として、
従順さ、慎み深さ、家庭的、世話好き、貞淑さ、奥ゆかしさ…
などがあると聞く。もちろんこんなのは向こうが勝手に抱いたイメージで、当然だけどそんなもん…
…人による。
さて、その貞淑な日本人妻とやらが、弁当にどのような料理と愛情を詰めて持たせているのかオレが採点してやろう。
何の躊躇もなくバンダナの結び目をほどくと、そこには…
甘食が4個と半分。底に粉がパラパラこぼれている…以上。

なんて悲しい弁当なんだ…
ビタミン・ミネラルほぼゼロ。愛情はむしろマイナス。最初から最後まで薄ら甘いだけで味の変化も一切無い、
「口の中の水分、全奪われ弁当」だ。
あと「半分」って何? 朝、半分だけ食べて来たのか?
まぁ考えてみたら本人が詰めて来たのかもだし、これが愛妻弁当とは限らない。
それでも当時は思った…
「わははは、ザマミロ。お前の日本人妻はハズレだ!」
しかし今にして思えば、誰からも慕われていないあの先生って、結構淋しい人だったのかも知れん。
ケインを嫌いじゃないもう1つの理由は、全員に対する距離感が完全に同じだった事で、えこひいきとか、女子には好感を持たれたいとかが一切無い。
意図的にそうあろうと努めてたのかは不明だが、あの笑わなさと無感情な碧い目は、異文化の地で異邦人として暮らす事の孤独や諦念を帯びていたような気がしなくも無いのだ。
僕も人の輪に溶け込むのは得意じゃない。
日中、1番楽しみなハズのランチタイムを苦行みたいな時間にしてたのも、キリスト的なストイックさの現れだったのだろうか?
だから40年経った今も、1番思い出すのは他ならぬあのムチャクチャな先生なのだ。
けど…何で甘食だったんだろう?
