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【noteでBL】お題お借りしました②

期間中に甘えて、お題をお借りしています。

お題は
『雨の日の恋』『ルマンド』『ダンボール』


※少年→元保育士のBL。



「雨くん、うちの子にならないか」


クリスマスイブの晩の事だった。
小さなクリスマスケーキを前にして、石井が言う。

石井が仕事を休んで、養護施設の職員と何やら話しているのを帰宅した時に見かけていたが、その話をしていたのだろうか。

───何も今、そんな話をしなくても。

クリスマスケーキを前にして、少し浮き足立っていた気分が沈んでいく。
指よりも細く長いロウソクを握って、雨は俯いていた。

石井の表情は真剣だ。
眼鏡の奥からまっすぐに、強い視線を送ってくる。その光が雨には眩しく見えた。

「………それって…」

今すぐ答えを出したくは無い。
けれど石井が反応を待っている。
何か…言わなくては。

雨はゆっくりと、言葉を選んで言った。

「プロポーズ?」
「違います」


即答だった。



二人の再会は、生温い土砂降りの日だった。

雨は草陰に置かれた、ひしゃげた段ボールの中で、濡れるのも構わず丸くなって眠っていた。

​「君、何をしているの?」

​声をかけてきたのは、石井だった。

小豆色の傘を差し、当惑した顔で立っている。

​「……もしかして、雨くん?」

​名前を呼ばれて、雨はぱちりと目を開けた。

その声に、聞き覚えがあった。

​「先生……?」

​ゆっくりと雨が起き上がる。

顔を上げた頃には、頭上に影が差し、降り注ぐ雨粒から守られていた。

​「石井……先生?」

​たどたどしく呼ぶと、石井は嬉しそうに目を細めた。

「覚えていてくれたんだね」

​石井は、かつて雨が通っていた幼稚園の保育士だった。
雨が隅っこにいても、どこかに隠れていても一番に気が付いてくれる、大好きな先生だった。

年長になる前に園が閉鎖してしまい、それきり会うことはなかったはずの人。

​「僕のこと、覚えててくれたんだね!」

​雨は弾かれたように飛び出し、ずぶ濡れのまま石井の腰に抱きついた。


​翌日、施設へと帰されたはずの雨は、石井の自宅のドア前でうずくまっていた。

「どうしたの?」
と慌てて駆け寄る石井に、雨は眠そうに目をこすりながら「待ってた」とだけ返す。

​それからだ。雨が度々施設を抜け出し、石井の元へ通い詰めるようになったのは。

​施設側との話し合いの結果、今の雨にはここが必要なのだと判断されたのだろう。
「放課後のわずかな時間」という約束で、雨は石井の自宅で過ごすことを許されるようになった。

​回数を重ねるごとに信頼も深まっていき、施設側から外泊も許されるようになっていた。

クリスマスイブの夜。
雨が、外泊を許された日だった。


「………ケーキが食べたい」

雨は呟いた。
石井の眉が下がるが、ふ、と微笑んだ。

「そうだね。ごめん」

それ以上、石井は何も言わなかった。
冷蔵庫からシャンメリーを出して、2つのグラスに注ぎ入れる。

「お手伝いする人〜」

と、石井はいまだに雨を小さな坊や扱いをしてくる。雨はもう小学五年生になっていて、背も伸びた。

「はーい」

しかし、それに付き合ってやるのも雨の楽しみの一つだった。
こんな事をしているから、石井があんな事を言い出したのたろうか。と、ふと雨は思う。


気持ちは嬉しかったが、
石井に父親にはなってほしくなかった。


「………石井先生はさ、どんな人が好きなの?」

ロウソクに火を灯して、雨が訊く。
つるりとした肌の表面がほんのりと、染まっている。

「ふふふ」
と石井が笑うので「何さ」と言えば
「雨くんも、そういうものに興味を持つ年頃になったんだな、ってね」
などとニコニコしている。

「雨くんは居るの?好きな子」

逆に質問で返して、生クリームをナイフにつけながら、ケーキを2つに切り分けていく。

「先生かな」

と雨はケーキを眺めながら言った。

「あぁ、それでプロポーズだと思ったの?」

石井は全く、気にも止めていない。

「うん」
「あったらいいかもね。そういうプロポーズも」
「え」

これ、どうしよう。とナイフについた生クリームを持て余していたので、雨は指を伸ばして生クリームをすくい取ってやった。

「恋人に限定しなくてもいいのかもなって、思ったよ」

と石井は言った。
プロポーズなんか、色んな人に言えばいい。と言って笑う。

雨は、胸がギュッと握りしめられた気がした。一瞬、息がつまったがすぐに表情を和らげる。

誰にもとられたくないな。

「先生、あーんして」

小さな坊やのフリをして、生クリームのついた指を石井に向ける。

石井は嫌がる素振りも見せず、ぱくりと指を咥えた。それから目を丸くして、慌てて口を離すと目を子供のように輝かせた。

「このクリーム美味しい!」

早く食べよう!
いそいそと、石井は小皿にケーキを取り分けた。

狭いテーブルの上に、チキンレッグやクリスマスケーキ、シャンメリーの入ったグラスに、グミビーンズやポテコ、ルマンド。キャラメル等が乗った小皿などが並んでいる。

それらが、雨の目にはキラキラと色彩豊かに映った。

「僕も、先生と家族になりたい」

いただきます!と手を合わせた後、雨は言った。石井がハッ、として見る。

「無理、してない?」
「してない。ただ………」
「うん」
「もう少しだけ、待って」
「……わかった」

真剣な表情で、石井が頷く。

「気持ちは絶対、変わらないから」
「うん」
「渡辺 守にするから」
「うん。…うん……??」

石井の名前は、守という。
渡辺は、雨の名字だった。

「先生、知ってる?」
「何?」
「『渡辺』って、節分に豆まきしなくていいんだって」
「初めて聞いたよ」
「担任の先生が、授業で言ってた。鬼が寄って来ないんだって」
「そうなんだ」

ケーキに視線を戻してつつく。

「先生のこと、守ってあげるから渡辺にしよ」
「ううーん………、カッコいいけど……。考えておきます」
「ええー」



────愉しい時間はあっという間だ。

片付けをして風呂に入っていたら、もう20時だ。雨の就寝時間は21時と決められている。

明日の朝には登校して、施設に戻らなくてはいけない。

雨は、ぼんやりと時計を眺めながら、ルマンドを少しずつ噛みしめていた。



ルマンドをもっとメインに描写したかった…!

ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

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