見出し画像

その配慮、本当に相手のためになっていますか

前回の記事では
本人のいない場所で人の事情を話していいのか、ということを書いた。

個人情報や人事・労務に関する研修を受けて、まず引っかかったのはそこだった。

人の事情を勝手に話さない。
必要以上に広げない。
本人が話していないことを、周りで勝手に判断しない。

これは、職場で働くうえでかなり大事なことだと思う。

ただ、研修を聞いていて、もう一つ気になったことがある。

それは「配慮」という言葉の難しさだ。

職場では「配慮しましょう」という言葉がよく出る。

体調が悪い人に配慮する。
家庭の事情がある人に配慮する。
妊娠初期の人に配慮する。
年配の人に配慮する。
新人に配慮する。

言葉としては正しい。

たぶん、反対する人はあまりいない。

ただ、現場で考えると、この「配慮」は意外と難しい。

良かれと思ってやったことが、本人からすると少し違うことがある。

「大変そうだから外しておいたよ」
「無理だと思って声をかけなかった」
「本人に言うと気にするから、こちらで調整しておいた」

一見、優しい。

でも、本当に本人のためになっているかは分からない。

優しさのつもりで、決めつけていることがある

現場では、人の状態を見ながら仕事を回すことがある。

今日は少し顔色が悪い。
最近、疲れていそうに見える。
この作業は重いから厳しいかもしれない。
今は細かい仕事を振らない方がよさそうだ。

そう考えること自体は悪くない。

むしろ、何も見ていない職場よりはいい。

ただ、そこから先が難しい。

本人に確認しないまま、周りだけで決めてしまうことがある。

「今日はあの人を外しておこう」
「この件は伝えない方がいいだろう」
「たぶん無理だから、別の人に回そう」

これが続くと、相手を気遣っているようで、実は相手の選択肢を減らしている。

本人は、やれるかもしれない。
少し調整すればできるかもしれない。
むしろ、普段通りに扱ってほしいと思っているかもしれない。

でも周りが先に決めてしまう。

「本人のため」と言いながら、本人がいない

配慮の難しさはここにあると思う。

本人のために考えている。
負担を減らそうとしている。
困らないようにしたい。

そう言いながら、その話し合いの場に本人がいないことがある。

たとえば、体調面で少し制限がある人がいる。

会社として無理をさせてはいけない。
安全上、止めるべき作業もある。
周囲への説明が必要な場面もある。

それは分かる。

ただ、本人に何も確認せずに、周りだけで仕事を外していくと、受け取り方が変わる。

自分はもう任せてもらえないのか。
できない人だと思われているのか。
周りにどこまで話が伝わっているのか。

そう感じることもあると思う。

現場では、仕事から外すことがそのまま負担軽減になるとは限らない。

本人にとっては、役割を失うことに見える場合もある。

ここを雑に扱うと、配慮ではなく隔離のようになる。

言葉は強いが、現場ではこういうことが起きる。

「気を使っている」はずなのに、本人だけが少し遠くに置かれてしまう。

周りが安心したいだけの配慮になっていないか

配慮という言葉は便利だ。

「配慮しました」と言えば、何となく正しいことをしたように見える。

でも、少し意地悪な見方をすると、その中には周りが安心したいだけのものもある。

あとで何かあったら困る。
声をかけて嫌な顔をされたら困る。
どう接していいか分からない。
だから、少し距離を置く。

これも、配慮の顔をして出てくる。

たとえば、しばらく休んでいた人が職場に戻ってきた時。

本人は、できるだけ普通に戻りたいと思っているかもしれない。
でも周りが妙に静かになる。

重い仕事は振らない。
残業の話もしない。
冗談も言わない。
少し大変そうな仕事は、最初から別の人に回す。

悪気はない。

ただ、あまりに腫れ物に触るような空気になると、本人はかえって居づらくなる。

「気を使ってくれている」のは分かる。
でも、気を使われすぎると、自分だけ別枠に置かれたように感じる。

職場の優しさは、量が多ければ良いわけではない。

配慮は、本人に確認して初めて形になる

何でも本人任せにすればいい、という話ではない。

明らかに危ない作業は止めるべきだ。
会社として守らなければいけない線もある。
周囲の安全や業務への影響も考えなければいけない。

ただ、その時でも、本人を置き去りにしないことはできる。

「この作業は少し負担が大きいかもしれないけれど、どうですか」
「必要なら調整します」
「周りに伝える範囲は、仕事に必要なところだけにします」
「できることと避けた方がいいことを、一度整理しましょう」

勝手に外されるのと、相談したうえで調整されるのでは全然違う。

現場では、早く決めた方が楽なことが多い。

本人に聞くと、少し時間がかかる。
言葉も選ぶ。
どこまで聞いていいのか迷う。

だから、周りだけで先に段取りしたくなる。

でも、その手間を省いた時に、相手の気持ちが置いていかれる。

配慮は、相手の代わりに全部決めることではない。

相手が働きやすいように、選べる余地を残すことだと思う。

現場の配慮は、目立たない方がいい

本当に良い配慮は、たぶんあまり目立たない。

大きな声で「配慮しています」と言わない。
周囲に細かい事情を説明しすぎない。
本人が特別扱いされているように見せない。

でも、必要なところはちゃんと整える。

重い作業は無理に入れない。
長時間になりそうな仕事は先に相談する。
本人ができる仕事は残す。
できないことだけを静かに外す。
状況が変わったら、また見直す。

それくらいがちょうどいいのかもしれない。

現場では、配慮が大きく見えすぎると、本人も周囲も構えてしまう。

「あの人には気を使わないといけない」
「あの人にはこれは頼めない」
「あの人だけ特別扱いされている」

こういう空気が出ると、せっかくの配慮が別の問題になる。

人を守るためのものが、人を分けるものになってしまう。

人を小さく見ないことも配慮だと思う

研修を受けて、個人情報を守ることだけでなく、人の事情への向き合い方も考えた。

人の事情は、雑に扱ってはいけない。

でも、過剰に囲い込んでもいけない。

大変そう。
無理そう。
かわいそう。
今はそっとしておこう。

こういう言葉は優しく見える。

ただ、その奥で相手を小さく見ていないかは気をつけたい。

その人は、事情を抱えている人である前に、働く人だ。

できることもある。
やりたいこともある。
任されたい仕事もある。
普通に接してほしい気持ちもある。

そこを見ずに、周りが勝手に守りすぎると、本人の力まで奪ってしまう。

配慮は、相手を弱い人として扱うためのものではない。

その人がその人らしく働けるように、少し条件を整えることだと思う。

決めつけない。
広げない。
本人抜きで進めすぎない。

この三つだけでも、現場の配慮はかなり変わる。

職場の優しさは、声の大きさでは決まらない。

必要なことを静かに確認すること。
本人の事情を余計に広げないこと。
できる仕事まで奪わないこと。
普通に働ける余白を残すこと。

そのあたりに、本当の配慮があるのかもしれない。


関連記事

仕事を渡すとは、相手がイメージできる形に翻訳すること
https://note.com/millennium_bird/n/n6dfadec471d1?magazine_key=m79915963f7ca

製造業向け|「考えろ」と言う前に、考えられる仕事の渡し方をしているか
https://note.com/millennium_bird/n/n0cb5e6f79d58


Kindle本のご案内

現場では、人への配慮も感覚だけでは難しい場面があります。
どこまで共有し、どこから先は本人に確認するのか。
何を避け、何を残すのか。
その線引きも、現場を守る判断のひとつです。

こうした「感覚で流しがちな仕事」を、記録・判断・仕組みとして整理する考え方については、こちらのKindle本にまとめています。

『判断できる工場をつくるための現場改善入門』



自己紹介

書いている人についてはこちらにまとめています。


いいなと思ったら応援しよう!