ムツゴロウを連れて帰る旅
旅の軌跡を刻む小さな欠片
私は九州に住んでいる。
旅先で、ひとつだけ
気づけば集め続けているものがある。
ムツゴロウの箸置きだ。
けれど、ムツゴロウが特別好きなわけではない。
箸置きのコレクターでもない。
きっかけは、佐賀の
武雄温泉駅のお土産売り場だった。
焼き物の県らしく、器がずらりと並ぶなかで、
目に留まったのは小さな箸置き。
電車でも持ち帰りやすいサイズ。
大皿なら買わなかったし、
キャラクター化されたものも手に取らなかった。
それが「陶器」で、暮らしの中で使う器の世界に属する焼き物だった。しかも手描きで、少しゆがんだ顔をしていたのがよかった。
そして、いかにも佐賀らしい郷土感もあった。
人の手の跡が残る、郷土らしいその一匹を持ち帰った。

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次に佐賀を訪れたとき、
そこにも、別の窯のムツゴロウがいた。
「あ、ここにもいる。」
それが、無性にうれしかった。
一度きりの偶然だと思っていたものが、土地の中にちゃんと息づいているとわかったから。
ささやかだけど、佐賀の風土を映した文化のようにみえた。
旅が、消えていくものではなく、積み重なっていくものに変わった気がした。
三つ目、四つ目と出会ううちに、
それは「かわいい土産」から、
旅の記録へと意味を変えていった。





温かな手仕事に出会える場所。
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棚に並べているだけでも、じゅうぶん愛おしい。

けれど、子どもはときどきそこから選び、
食卓でちゃんと箸置きとして使っている。
今日はどれにするかと、
並べ替えたり、眺めたり。
私にとっては記録でも、子どもにとっては、
楽しい道具なのかもしれない。

お店のお盆の上にも、ちゃんと箸置きがあった。
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そして、あえて調べない。
どこにいるのか、どれだけいるのかも。
佐賀に限らず、
ムツゴロウに限らず。
その土地らしいものに出会えたら、それでいい。
もしそれが、またムツゴロウだったなら、
なおうれしい。

偶然、目に入るからこそいい。
まだ出会っていない何かに、
次の旅で会えるかもしれない。
余白ごと、楽しみにしている。
🧵「なぜか惹かれるもの」には、自分のまなざしが現れている。
